イスラム美術
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イスラム美術(イスラムびじゅつ)もしくはイスラーム美術(イスラームびじゅつ)は、ヒジュラ(西暦622年)以降21世紀に至るまでの、スペイン、モロッコからインドまでにわたる「イスラーム教徒の君主が支配する地域で生み出された美術作品、もしくはイスラーム教徒のためにつくられた作品」を指す[注釈 2]。
域内での職人、商人、パトロン、そして作品の移動のために、イスラーム美術はある程度の様式的な一体性を見せる。イスラーム世界全域で共通の文字が用いられ、特にカリグラフィーが重用されることが一体感を強めている。装飾性に注意が払われ、幾何学的構造や装飾で全体を覆うことが重視されるといった共通の要素も際立っている[5][6]。しかし、形式や装飾には国や時代によって大きな多様性があり、そのためにしばしば単一の「イスラーム美術」よりも「イスラームの諸美術」として捉えられる[注釈 3][7]。
建築においては、モスクやマドラサのような特定の役割を持つ建物が非常に多様なフォルムで、しかしながらしばしば同一の基本構造に従って建設された。彫刻はほとんど存在しないが、金属、象牙、陶器などの工芸の完成度は高かった。聖俗双方の書物の中に見られるミニアチュールの存在も無視できない。
イスラームの美術は厳密に言えば宗教的なものではない----ここでの「イスラーム」という言葉は宗教ではなく、文明として捉えられる[注釈 4]。「キリスト教美術」や「仏教美術」のような概念とは異なり、「イスラーム美術」において直接に宗教美術が占める部分は比較的小さい[3]。また通念とは異なり、実際には人間、動物、さらにはムハンマドを表現したものも存在する。これらは基本的に宗教的な場所や聖典(モスク、マドラサ、クルアーン)において禁止されていた[10]。