錬金術
化学的手段で卑金属から貴金属を精錬しようとする試み / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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錬金術(れんきんじゅつ、英: alchemy, hermetic art[1]、ラテン語: alchemia, alchimia、アラビア語: خيمياء)は、最も狭義には化学的手段を用いて卑金属から貴金属(特に金)を精錬しようとする試みのこと。広義では、金属に限らず様々な物質や人間の肉体や魂をも対象として、それらをより完全な存在に錬成する試みを指す。『日本大百科全書』によれば錬金術とは、古代~中世にわたって原始的な科学の試行錯誤を行った技術・哲学・宗教思想・実利追求などの固まりとされる[2][注釈 1]。
現代英語で「ヘルメースの術」(hermetic art)は、錬金術を指す[1]。中世ヨーロッパではヘルメース哲学が、錬金術や医学的伝統などと合わさり広まっていた[4]。
錬金術の起源は古代エジプトや古代ギリシアに求められる[5]。錬金術は、ヘレニズム文化の中心であった紀元前のエジプトのアレクサンドリアからイスラム世界に伝わり発展した。万物は四元素から構成されていると考えたアリストテレスら古代ギリシアの哲学者の物質観は、中世アラビアの錬金術に多大な影響をもたらした[6]。12世紀にはイスラム錬金術がラテン語訳されてヨーロッパで盛んに研究されるようになった。
錬金術の試行の過程で、硫酸・硝酸・塩酸など、現在の化学薬品の多くが発見されており[7]、実験道具が発明された。17世紀後半になると錬金術師でもあった化学者のロバート・ボイルが四元素説を否定[8]、アントワーヌ・ラヴォアジェが著書で33の元素や「質量保存の法則」を発表するに至った[9]。これらの成果は現在の化学に引き継がれている[10][11]。歴史学者フランシス・イェイツは16世紀の錬金術が17世紀の自然科学を生み出した、と指摘した。