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山下達郎のスタジオアルバム (1983) ウィキペディアから
オリジナル・アルバムとしては17か月ぶりとなる、アルファ・ムーン移籍第1弾アルバム。後にロング・ヒットとなる「クリスマス・イブ」が収録されていることでも知られている。
1983年2月 、山下は30歳を迎えた。当時の音楽業界の流れとして、30歳を過ぎてなおヒットを出し続ける事は容易ではなく、落ち目になるのが当然という時代で、将来的な展望やヴィジョンを模索することがもはや困難になった。ただ、前年秋に担当ディレクターだった小杉理宇造が独立して立ち上げたレコード会社への移籍第1弾であり、所属ミュージシャン兼役員という立場上、現実的に数字を出さねばならなかった。「RIDE ON TIME」[注釈 1]でブレイクし、『FOR YOU』[注釈 2]でリゾート・ミュージックという受け取られ方ながら、商業的には成功した。しかし結局はここがピークで今後「浮き沈みの激しい音楽業界でそう何年も続けて活動していける筈が無い」というのが山下自身、そしてスタッフの一致した見解だった。「あと何年できるのか、いや、あと何年持たせなければならないか?」というところで「会社として軌道に乗せるために、あと5〜7年」とのやり取りがスタッフとの間で交わされたという。この時点でライブの動員成績は良かったものの、あくまでメインストリームにはなり得ない。先々を考えるとこれもあと3年もすれば頭打ちという予測に至った。ならば「これから先は自分のやりたい事をやろうと。ともかくこの頃は元に戻りたいというか、シュガー・ベイブに戻りたかった。要するに『流行りものじゃない音楽』がやりたかった。自分の中のオタク願望を実現させたかったというか、自分が思春期に憧れていたものとか、そういう音楽をやりたかったんだ」「ここから2〜3年でダーッと売るだけ売って、パっと散るという道もあったけど、それはミュージシャンとしての僕が許さなかった。もちろん僕はムーン・レコードの役員で、なおかつ稼ぎ頭だったから、自分のわがままを押し通すわけにはいかなかったけど、ともかく自分のやりたいことをやろう、と」「30歳でレコード会社を移籍するというのはすごくリスクの大きい事だった。でも僕としては83年まで生き残れてた事自体がすごくラッキーだと思ってた。最後にひと花咲かせたというか。で、たぶんあと5年ぐらいしか活動できないと思ってた。実際の話、ムーン・レコードには制作部長というポストは92年までなかったの。それは僕のために残してあった。当時の予定としては、90年に武道館でさよならコンサートをやって、その後、制作部長のポストに就くことになってたんだ」[2]と、当時の様子を語っている。
この頃、ミュージシャン、スタジオ、マネージメントといった、レコーディングを取り巻く環境は数年前とは見違えるほど改善されていた。この上さらに何か向上させられるものはないかと考えた時、初めて歌詞の部分に思いが及んだ。それまでは、言葉よりも音にウエイトを置いた、いわゆるサウンド志向の作品を作り続けていた。決して歌詞をぞんざいにしていたわけではなく、自分の作る音楽が本来は英語で歌われるべきメロディー構造だったため、どうしても言葉の数に制限が出たり、言葉の選択に窮屈さを感じてしまい、その結果、フォークソングや歌謡曲といった、言葉重視の音楽に比べると詞が弱いという評価を受けていた。そんな窮屈な中でも、自分なりの歌世界が作れないか。職業作詞家のような作詞術は持ち合わせていなくても自分の言葉で歌を作ることは、この先音楽を続けていく上で、とても重要なことに思えた。作品に自分のものの考え方、いわば思想信条といったものを、もっと投影させてみたいと願った結果が、作詞をできる限り自分で手掛けようという選択につながって行った。その背景には「僕は70年安保の政治的な時代に多感な10代を過ごした世代だし、サブカルチャーから出てきた人間として、どうしても歌に自分の言葉で自分の思想を込めたいという願望に駆られたんだ」という側面もあったという。本作では『FOR YOU』[注釈 2]のアウト・テイク「BLUE MIDNIGHT」とグレン・キャンベルのカヴァー「GUESS I'M DUMB」以外は山下の作詞で、これ以降作詞も重要なファクターとなっていく。このアルバムの歌詞の世界観について山下は「どっちにしろ職業作詞家じゃないから、ある程度限定された世界でいいし。この時は初めてまとめて歌詞を書くという事で、どうせなら歌詞のテーマを重複させようと思った。このアルバムは“MELODIES AND MEMORIES”というようなノスタルジックなイメージがテーマで、歌詞は全てリアルタイムの事じゃなくて、思い出というか、イリュージョンというか、そういうものに基づいている。僕が自分で歌詞を書く上で持ち続けているテーマは、都市生活者の抱く疎外感というようなものなんだけど、そういうものと男のやくざな感性というか、ロマンティシズム、あるいはレイ・ブラッドベリ的なイリュージョンというものでやろうと思ったんだ」[2]と語っている。
後に『MELODIES 30th Anniversary Edition』の曲目解説で山下は、本作の発売当初は夏っぽくない、『FOR YOU』[注釈 2]のような開放感に欠ける、といった類の批判もかなり受けたが、確信犯的行動だったので、全く気にならなかった。その後も活動を続けられるのは、本作での路線変更のおかげだと書いている。
アナログ盤はゲートフォールド仕様。尚、ジャケット裏は当初、誤って予定していたものとは別の写真が使われていたため、CD再発に際し、本来使用するはずだった写真に差し替えられた。
発売後、オリコンチャートで初登場1位を獲得。翌週には松田聖子『ユートピア』が1位になったものの、その翌週には再び1位となった。結局、本作は前作『FOR YOU』の売り上げを上回る成績を残した。
1992年 にリマスター盤として再発された際、オリコンでは1992年11月23日 付と30日付の2週にわたってオリジナル盤とは別に集計されていたが、1992年12月7日 付のチャートにおいてオリジナル盤と合算して集計された(2週分の累計売上は合算されず)。このような現象は同時期に再発された竹内まりや『REQUEST』[注釈 3]でもみられた。
Tatsuro Yamashita |
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Daisuke Inoue | Tenor Sax Solo |
Tatsuro Yamashita | E Guitar, Background Vocals | |
Jun Aoyama | Drums | |
Kohki Itoh | Bass | |
Hiroyuki Namba | E Piano & A Piano | |
Satoshi Nakamura | OBX-a | |
Motoya Hamaguchi | Percussion | |
Hidefumi Toki | A Sax | |
Keiko Yamakawa | Harp | |
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Tatsuro Yamashita |
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Jun Aoyama | Drums | |
Kohki Itoh | Bass | |
Hiroshi Satoh | E Piano, A Piano | |
Motoya Hamaguchi | Percussion | |
Keiko Yamakawa | Harp | |
Hidefumi Toki | A Sax | |
Susumu Kazuhara | Trumpet | |
Masahiro Kobayashi | Trumpet | |
Shigeharu Mukai | Trombone | |
Tadanori Konakawa | Trombone | |
Takeru Muraoka | T Sax | |
Shunzo Sunahara | B Sax | |
Ohno Group | Strings |
Tatsuro Yamashita |
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Kohki Itoh | Bass | |
Susumu Kazuhara | Trumpet | |
Masahiro Kobayashi | Trumpet | |
Shigeharu Mukai | Trombone | |
Tadanori Konakawa | Trombone | |
Takeru Muraoka | T Sax | |
Shunzo Sunahara | B Sax | |
Ohno Group | Strings |
Tatsuro Yamashita |
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Jun Aoyama | Drums | |
Motoya Hamaguchi | Percussion |
Tatsuro Yamashita |
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Jun Aoyama | Drums, Percussion | |
Kohki Itoh | Bass | |
Satoshi Nakamura | OBX-a |
Tatsuro Yamashita |
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Yuichi Togashiki | Drums | |
Akira Okazawa | Bass | |
Hiroshi Satoh | A Piano, E Piano | |
Keiko Yamakawa | Harp | |
Tsunehide Matsuki | E Guitar | |
Hidefumi Toki | A Sax | |
Ohno Group | Strings |
Tatsuro Yamashita |
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Jun Aoyama | Drums | |
Kohki Itoh | Bass | |
Motoya Hamaguchi | Percussion | |
Hiroyuki Namba | Hammond Organ |
Tatsuro Yamashita |
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Tatsuro Yamashita |
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Jun Aoyama | Drums | |
Kohki Itoh | Bass | |
Hiroyuki Namba | A Piano, E Piano | |
Satoshi Nakamura | OBX-a |
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Mixed and Remixed by Tamotsu Yoshida |
Associate Producer : Nobumasa Uchida |
Assistant Engineer : Masato Ohmori |
Recorded at CBS/SONY Roppongi Studio A & B |
Re-mixed at CBS/SONY Roppongi Studio B |
Mastering Studio | : |
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Disc Mastering Engineer : Teppei Kasai |
Management Office : Wild Honey |
Assistant Management | : |
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Copyright Management : Kenichi Nomura |
Masterrights Owned by Smile Co. |
Exective Producer : Ryuzo“Junior”Kosugi |
Art Direction : Hiroshi Takahara |
Design | : |
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Photographer : Kaoru Ijima |
Inner sleeve illustration : Midori Murakami |
Lettering : Tadashi Yokoshi |
Hiroshi Satoh by the courtesy of ALFA Records |
Hiroyuki Namba by the courtesy of RCA Records |
Daisuke Inoue by the courtesy of JAPAN Records |
CD商用化直後の1983年 に発売された初回盤。
1986年 にリリースされた価格変更に伴う品番改定による再発盤。1990年 、同一品番にてリマスタリングが行われた。
# | 発売日 | リリース | 規格 | 品番 | 備考 |
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1 | 1983年6月8日 | MOON ⁄ ALFA MOON | LP | MOON-28008 | |
2 | 1983年6月8日 | MOON ⁄ ALFA MOON | MOCT-28008 | カセット同時発売。アナログLPと同内容。 | |
3 | 1983年11月28日 | MOON ⁄ ALFA MOON | CD | 38XM-1 | 初CD化。 |
4 | 1986年12月21日 | MOON ⁄ ALFA MOON | CD | 32XM-27 | 価格変更に伴う品番改定による再発。 |
5 | 1990年 | MOON ⁄ MMG | CD | 32XM-27 |
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6 | 1992年11月10日 | MOON ⁄ MMG | CD | AMCM-4150 | 品番改定によるエム・エム・ジー盤の再発(リマスター盤)。 |
7 | 1999年6月2日 | MOON ⁄ WARNER MUSIC JAPAN | CD | WPCV-10020 | 品番改定によるエム・エム・ジー盤(1992年盤)の再発。 |
8 | 2013年8月28日 | MOON ⁄ WARNER MUSIC JAPAN | CD | WPCL-11539 |
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9 | 2013年10月20日 | MOON ⁄ WARNER MUSIC JAPAN | 2LP | WPJL-10009/10 |
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