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技術の一つ ウィキペディアから
バーチャル・リアリティ(英: virtual reality)とは、コンピューターによって創り出された仮想的な空間などを現実であるかのように疑似体験できる仕組み[1]。コンピューターによって提供される感覚刺激 (視覚像や音など) を通じて体験される人工的な環境であり、環境内で起こることを人の行動により部分的に決定することができるもの[2]。略語はVR[3]。日本語では「仮想現実」と訳される(後述)。
バーチャル・リアリティは、コンピュータによって作り出された世界である人工環境・サイバースペースを現実として知覚させる技術である[4]。時空を超える環境技術であり、人類の認知を拡張する[5]。
コンピュータグラフィックスなどを利用してユーザに提示するものと、現実の世界を取得し、これをオフラインで記録するか、オンラインでユーザに提示するものとに大別される。後者は、ユーザが遠隔地にいる場合、空間共有が必要となり、テレイグジスタンス、テレプレゼンス、テレイマージョンと呼ばれる。後者は、第5世代移動通信システム(5G)との連携で一層実現しやすくなると期待されている。
ユーザーが直接知覚できる現実世界の対象物に対して、コンピュータがさらに情報を付加・提示するような場合には、拡張現実(Augmented reality)や複合現実(Mixed reality)と呼ばれる。
現実と区別できないほど進化した状態を表す概念として、シミュレーテッド・リアリティ(Simulated reality)やアーティフィシャル・リアリティ(Artificial reality)があるが、これはSFや文学などの中で用いられる用語である。
商用化としては、1990年代初頭の第1次VRブームが、技術的限界から画面表示のポリゴン数や解像度が低く、センサーの精度が低かったため利用者の動きと画面描画のズレが起きて酔いやすく、VR機器の値段も非常に高価で普及に至らず失敗に終わった。その後、2010年代初頭の第2次VRブームが起きてから商用化が進んだ。但し、既存の平面ディスプレイの完全な代替には至らず、エンタメを中心とした限定的な普及に留まっている。
スタンリイ・G・ワインボウムによる1935年の短編小説『Pygmalion's Spectacles』にゴーグル型のVRシステムが登場する[6]。これは、視覚、嗅覚、触覚の仮想的な体験をホログラフィに記録してゴーグルに投影するというシステムで、バーチャル・リアリティのコンセプトの先駆けとなった。
現代のバーチャル・リアリティは、3次元の空間性、実時間の相互作用性、自己投射性の三要素を伴う(Presence/Interaction/Autonomy)。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、前庭感覚、体性感覚など、多様なインタフェース(マルチモーダル・インタフェース)を利用する。
VRゲームの分野では、VR酔い対策のガイドラインがある[23]。
現時点で実用化できるのは視覚と聴覚のみであり、操作はコントローラで行うことになる。肉体で操作することもできるが本質的には変わっていない。
フィクション作品のように意識も肉体も完全にその世界に入り込むことは実現のめどが立っていない。また、現実世界よりも体感時間を遅らせる理論も提唱されていない(光速に近い速度で移動すると時間の流れが早くなるが、必要なのはその逆である)。
バーチャル・リアリティの技術を構成する要素には、コンピュータ科学、ロボティクス、通信、計測工学と制御工学、芸術や認知科学などが含まれる。また、その応用は、科学技術における情報の可視化(en:Scientific visualization)、ソフトウェアの構築、セキュリティ、訓練、医療、芸術などと幅広い。たとえば、VRに関するIEEEやACMの国際会議などでは次のようなセッションが準備されている。
バーチャル・リアリティは、コンピューターゲーム、エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)、メタバースなどに利用されている。
VRの映像を通して行われるeスポーツでは、Space JunkiesやHADO Xballなどのシューティングゲーム(STG)や球技に似たゲームが有名であり、大会も開かれている[26]。現在では、Virtuix社のVirtuix Omniなど装置の上で走ることができるVR機器も開発されている。
バーチャル・リアリティは新型コロナウイルスの影響で試合の観戦に人が集められない状況の中で仮想空間を通して試合を観戦する手段として活用された。2020年8月にCyberZ社が開催したRAGE ASIA2020というeスポーツの大会で、VR技術を活用し、eスポーツ観戦やイベント体験ができる日本初のバーチャル空間「V-RAGE(ブイレイジ)」が発表された[27]。第5世代移動通信システム(en:5G)回線の普及により通信環境が整備されることでサービスの快適化が進められている。
VR技術は医療面における活用の研究も始まっており、日本IBMと順天堂大学は、医療分野における仮想空間の研究を行っている。これは、患者が来院前に前もって入院、治療を体験するもので、従来の口頭による複雑な治療の説明をより分かりやすくし、患者の治療に対する理解を深めることを目的としている[28]。類似の取り組みは海外にもあり、マレーシアの病院グループであるIHHヘルスケアとインドネシアのシロアム・インターナショナル・ホスピタルズが、移動制限のある患者らのための遠隔診療の一環としてVRを用いた研究も行なっている[29]。
また、VRによる暴露療法を用いた不安障害やうつ病の改善を目的とした研究も存在する。 患者への負担や時間面、費用面などの課題がある暴露療法だが、実際に状況を用意するのではなくVRを使用することでこれらを大幅に抑えることが出来る上、画面を眺めるよりも没入感があるためより現実味のある状況再現が可能となり、治療効果が高まるとされている[30]。
バーチャル・リアリティ/virtual realityは、もともとシュルレアリスムの詩人アントナン・アルトーが造語[45]した芸術用語であった。現在のような意味では「バーチャル・リアリティの父」[46][47]と呼ばれるジャロン・ラニアーらが普及させた。
「バーチャル・リアリティ」は、たとえば、人間が行けない場所でのロボット操作などの応用や、コンピュータ上の作り出す仮想の空間を現実であるかのように知覚させることなどに使用される。現実の光景にさまざまなデジタル情報を重ね合わせて表示する技術の拡張現実(Augmented Reality)とは異なる。
1990年代はじめまで「人工現実感/artificial reality」という言葉があったが、「仮想現実/virtual reality」に押されて衰退した[48]。
英語の "virtual" は本来「厳密には異なるがほとんど同様の」という意味であり、「バーチャル・リアリティ」はその一例である。一方自然科学分野の文脈においては「物理的には存在しないもののそのようにみえる」という意味で用いられ、電子工学用語の仮想接地という用語の英文は「Virtual ground」と呼ばれている。実際に接地されているわけではないが、理屈上接地しているという概念である)。
「仮想」という言葉は、本来は「仮に想定すること」を意味するが(仮想敵/imaginary enemyなど)、コンピュータ関連の文脈においては、上記のような意味における "virtual" の訳語として用いられている(仮想ドライブ/virtual drive など)。よって"virtual reality" は「仮想現実」と訳される。
明治時代の日本では「強キ」「能アル」「ハタラキアル」などと訳されたが、物理学の学術用語として「虚」「假(仮の旧字体)」があてられ、虚像/virtual imageなどの言葉も生まれている。少なくとも1928年には『物理学用語新辞典』において「假想」の訳後が存在しており、その後定着したものとみられ、1972年に日本IBMがvirtual storageを「仮想記憶装置」と訳した際には、特に異論は出なかった[48]。
しかし現在使われている「仮想」は原義よりも虚な感じがあり、誤解を与えかねない訳語であるとして別の訳語をあてるべきとの意見が1990年代半ば頃からある[48]。東京大学大学院教授(当時)の舘暲は、2005年の日本バーチャル・リアリティ学会第10回大会において、バーチャル・リアリティの訳語として、「現実」という語を提案した。はこのために提案された国字で、立心偏に實(実の旧字体)と書き、「ジツ」または「ばーちゃる」と読む[49][50][51]。
その他の言語では、virtual realityに対し、簡体字では虚拟现实(虚擬現実)、繁体字では虛擬實境(虚擬実境)をあてている。
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