アーカムそして星の世界へ
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『アーカムそして星の世界へ』(アーカムそしてほしのせかいへ、原題:英: To Arkham and the Stars)は、アメリカ合衆国の小説家フリッツ・ライバーが1966年に発表した短編小説。クトゥルフ神話の一つ。単行本『ポーの末裔その他の断片』(アーカムハウス)に収録された。現実のアーカムの街を訪れ、ラヴクラフト作品で描かれた事件のその後を知るという内容のメタフィクション作品。特に『闇に囁くもの』と『ダニッチの怪』の2事件がほぼ同時に起こっているという疑問へのアンサーでもある。そしてラヴクラフトが実は生きていたという真相を描く。
東雅夫は『クトゥルー神話辞典』にて「ラヴクラフトとアーカムに捧げた強烈なオマージュ」[1]、「神話小説中とびきりの異色作。これはラヴクラフトの作品と登場人物がすべて実在のものだったという設定のもとに描かれた、現代のアーカム訪問記なのだから。1937年3月14日が何の日にあたるかは、あえて付言するまでもあるまい」[2]と解説している。
『クトゥルフ神話ガイドブック』は「ミスカトニック大学を訪問し、教授連からラヴクラフトが描いた事件の裏話を聞くというファン好みの掌編」「まさに、ファンのお遊びというべき掌編だが、これこそクトゥルフ神話というムーブメントの本質かもしれない」と解説している。また特にミ=ゴに着目して、旧支配者と異なり、明確な脅威とはなりにくかった陰謀家ミ=ゴに「好意的な立場を取った」作品であることを強調している。[3]
1960年代の宇宙開発と冷戦時代が反映されている。1961年にはソビエト連邦のユーリイ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行に飛び立ち、本作発表の翌1967年にはアメリカのニール・アームストロング宇宙飛行士が月面に立っている。またミスカトニック大学や禁断の文献の軍事利用を目論む権力や他国の存在にも言及される。
本作品が収録されている単行本には、巻末解説として大瀧啓裕による「迷宮の地理学」が収録され、ラヴクラフトの舞台設定についても解説されている。