イクター
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イクター(アラビア語: إقطاع, EALL方式ラテン文字転写: iqṭāʿ)は、イスラーム圏において、主として軍人に対して与えられた徴税権およびその権利が設定された土地を指す用語である。イクターの保有者はムクター(ムクタア/muqṭaʿ)と呼ばれ、原則としては君主に対する軍事奉仕義務を負った。イクターを基盤とした社会・経済体制をイクター制と呼び、10世紀半ばにイラク地方で成立して以降、近代に入るまでイスラーム圏の広い範囲で類似した体制が構築され発展した[1][2]。イランのサファヴィー朝(1501年-1736年)のソユールガール[注釈 1]やガージャール朝(1779年-1922年)のトゥユール[注釈 2]と呼ばれる封有地、そしてバルカン半島・アナトリア・レヴァント・エジプト・イラクを支配したオスマン帝国(1299年-1922年)のティーマール(英語版)はイクター制の発展形態の1つであり、イランでは19世紀、オスマン帝国支配地では17世紀頃までこうしたイクター制の流れを組む、あるいは同様の制度が施行された[2]。