ドレイズ試験
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ドレイズ試験(Draize Test)もしくはドレイズ法は、1944年にFDAの毒性学者であったジョン・ドレイズ(John H. Draize)とジェイコブ・スピネス(Jacob M. Spines)により考案された急性毒性(刺激性)試験法である。当初は化粧品の試験として開発され、その手順には、意識のある状態で拘束したウサギの皮膚または眼に対し、試験物質を0.5mLまたは0.5gを適用して4時間の放置を行う過程を含む試験である[1](後述する動物愛護の観点から、試験物質量は近年削減方向にある)。この試験の観察期間は最大で14日間であり、皮膚に対する試験では紅斑と浮腫の徴候を、また、眼に対する試験では、赤み、腫れ、分泌物、潰瘍、出血、混濁、失明の徴候を確認する。実験動物には一般的にアルビノのウサギを用いるが、イヌを含むその他の動物を用いる場合もある[2]。試験動物はドレイズ試験の終了後に殺処分される[3]。 なお、2006年度にアメリカ合衆国で動物実験に使用されたウサギは24万羽であるが[4]、そのうちの大部分がドレイズ試験またはポリクローナル抗体の試験に使用されていることが知られている[5]。
この試験法のうち、特に眼粘膜刺激性試験法は試験動物の眼へ直接に試験物質を投与する点から議論を呼んでおり、批判的な論者の側からは、結果の評価を視覚により判定するため主観的要素が含まれる点と、ヒトとウサギの眼には機能・構造的な差異が存在している点からこの試験法は非科学的であり、また、実験動物に対して残酷な試験であるとみなされている。一方、FDAはこの試験法を支持しており、「現在まで、単一の試験と総合的な試験のいずれにおいても、ドレイズ試験に代わって科学界に受け入れられた試験法は無い。」と述べている [6]。 このように大きな物議を醸していることから、近年のアメリカやヨーロッパ諸国においてはドレイズ試験の適用件数が減少しており、また、麻酔を適用したり試験物質の量をより少なくするための試験法の修正が時おり行われている[7]。なお、in vitro 試験において、既に副作用が明らかとなっている化学物質については、現在はドレイズ試験の適用外となっており[8]、それによって実験動物の数と実験動物に対する試験の過酷さの軽減を行っている。