Loading AI tools
ウィキペディアから
バウルスクス科(バウルスクスか、学名:Baurusuchidae)は、後期白亜紀のゴンドワナ大陸に生息したワニ形上目の科。南アメリカ大陸(アルゼンチンとブラジル)から産出した動物食性の陸棲爬虫類から構成され、パキスタンから産出した化石にも本科に割り当てられうるものが存在する。バウルスクス科はバウルスクスとストラティオトスクスの最も近い共通祖先を含む単系統群として定義されているが、バウルスクスをノトスクス亜目に、他のバウルスクス科の属をセベキア類に位置付ける系統解析もあり、そういった解析では多系統群として扱われる。2014年の解析では、アプレストスクス、カンピナスクス、キノドントスクス、ストラティオトスクス、バウルスクス、ピサラチャンプサ、ワルゴスクスが含められている。下位分類群として、バウルスクス亜科とピサラチャンプサ亜科が提唱されている。
バウルスクス科 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Baurusuchus salgadoensis の頭骨 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Baurusuchidae Price, 1945 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
属 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
|
バウルスクス科には複数の属が分類されている。科の名称はブラジルのバウル層群の上部白亜系チューロニアン - サントニアン階から産出したバウルスクスに由来する[1]。バウルスクスに加え、カンピナスクス、キノドントスクス、ストラティオトスクス、ピサラチャンプサ、ワルゴスクスの5属が割り当てられてきた。1896年にイギリスの古生物学者アーサー・スミス・ウッドワードが記載したキノドントスクスは最初に発見されたバウルスクス科の動物であるが、バウルスクス科に分類されたのはもっと後のことであった[2]。ワルゴスクスは2008年に記載された[3]。キノドントスクスとワルゴスクスは共に断片的な骨格しか発見されておらず、また産出層準は共にアルゼンチンのサントニアン階である。
ストラティオトスクスは2001年にバウルススクス科に分類された。化石はブラジルのチューロニアン - サントニアン階から産出している[4]。2001年に記載された Pabwehshi 属はパキスタンのマーストリヒチアン階から産出した[5]が、後に基盤的セベキア類へ再分類された[6]。
カンピナスクスは2011年5月に記載され、バウルスクス科に分類された。化石はブラジルのバウル盆地に分布するアダマンティナ累層から産出している[7]。その直後には同じくバウル盆地の Vale do Rio do Peixe 累層から産出したピサラチャンプサが記載された。
2014年には同じくアダマンティナ累層から産出したアプレストスクスが記載され、バウルスクス科に分類された[8]。
バウルスクス科はブラジルの古生物学者 Llewellyn Ivor Price により1945年に命名され、バウルスクス属が内包された[9]。1946年には、アメリカ合衆国の古生物学者エドウィン・ハリス・コルバートが、セベクス属に代表されるセベクス科とバウルスクス科を合わせてセベコスクス類を新設した[10]。バウルスクスとセベクスは共に、上下に深い吻部と、幅が狭く鋭く鋸歯状の(Ziphodont)歯を有していた[11]。その後、この2属に類似した姿を示す属としてキノドントスクス、ストラティオトスクス、ワルゴスクスが発見された。これらのグループを統合するために用いられた特徴としては、深い吻部、幅が狭く鋸歯状の歯、カーブを描く歯列、上顎の深い切れ込みに合致する肥大化した犬歯状の歯骨歯、そして下顎の溝が挙げられる[12]。
バウルスクス科とセベクス科の近縁性は過去に行われた数多くの系統解析で示されてきた[11]。両科は初期のMetasuchia (en) であり、Metacushiaにはノトスクス類(主に陸棲のcrocodyliforms)と新鰐類(大型で主に半水棲のcrocodyliforms。現生のワニを含む)が分類される。バウルスクス科とセベクス科を含むセベコスクス類は、複数の解析でノトスクス類に近縁とされている[13]。新属イベロスクスとエレモスクスが後にバウルスクス科に分類されても、バウルスクス科をセベクス科に近縁とする解析が発表され続けた[14]。より新しい系統解析では、バウルスクス科を含むセベコスクス類は派生的なノトスクス類に位置付けられた。以下に、バウルスクス科をノトスクス類に置くOrtega et al. (2000)のクラドグラムを示す[15]。
ノトスクス類 |
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2004年にバウルスクス科とセベクス科を含む分類群としてバウルスクス上科が提唱された。系統的には、バウルスクス上科はセベクスとバウルスクスの最も近い共通祖先とその全ての子孫として定義された[16]。
2005年の解析では、セベクス科は基盤的なセベコスクス類のみを集めた側系統群とされ、バウルスクス科は派生的なセベコスクス類を集めた有効な単系統群とされた。以下は Turner and Calvo (2005) に基づくクラドグラム[17]。
Metasuchia |
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
後の研究では、バウルスクス科をセベコスクス類から区別する数多くの特徴が指摘された。セベコスクス類は現生ワニを含むネオスクス類とより近縁なグループ、バウルスクス科はより遠縁な系統群と考えられていた[18]。1999年の系統解析では、バウルスクスは他のZiphosuchus類(ノトスクス類とバウルスクス類を含むグループ)を除いたノトスクス類と単系統群を形成した[19]。この位置付けは後の解析でも支持され、バウルスクスはノトスクス類内に位置付けられた[20]。
2007年にはセベキア類 (en) という新たな単系統群が設立された[6]。セベキア類はセベクス科とペイロサウルス科を内包する。ペイロサウルス科は陸棲の小型ワニ形上目の科で、以前の研究ではネオスクス類の付近に位置付けられていた。セベクス科のセベキア類への位置付けにより、ペイロサウルス科はノトスクス類よりもネオスクス類に近縁な位置に置かれた。当該の研究ではバウルスクス科は分割され、バウルスクスが基盤的メタスキア類に、残りのバウルスクス科(ブレテスクスと Pabwehshi)がセベキア類に置かれた。そのため、バウルスクス科は多系統群として扱われている。以下は Larsson and Sues (2007) に基づくクラドグラム[6]。
Metasuchia |
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
さらに新しい系統解析ではバウルスクスはセベコスクス類を含むノトスクス類に含められ、他のセベコスクス類の属はより遠縁なメタスキアに置かれた[20]。2011年にピサラチャンプサが命名されると、その記載に際して包括的なバウルスクス科の系統解析が行われた。Montefeltro et al. (2011) ではバウルスクス科はバウルスクス、キノドントスクス、ピラサチャンプサ、ストラティオトスクス、ワルゴスクスを含む単系統群として扱われた。なお、同論文では他のワニ形上目からバウルスクス科の動物を区別するためにBaurusuchiaという名称が採用された。Baurusuchiaは1968年に下目として設立されたが、2011年の研究でバウルスクス科とほぼ等しいことが判明した。Bauruschiaとバウルスクス科の唯一の違いは、バウルスクス科がノード(分岐点)に基づく分類群であるのに対し、Baurtuschiaがステム(幹)に基づく分類群であることである。バウルスクス科はバウルスクス、キノドントスクス、ピラサチャンプサ、ストラティオトスクス、ワルゴスクスを含む最も包括的でない系統群として定義されている。BaurusuchiaはBaurusuchus pricei、Notosuchus terrestris、Mariliasuchus amarali、Armadillosuchus arrudai、Araripesuchus gomesi、Sebecus icaeorhinus、Bretesuchus bonapartei、Peirosaurus torminni、Crocodylus niloticus(ナイルワニ)の最も近い共通祖先とその全ての子孫として定義されている[12]。
ノードに基づくバウルスクス科と異なり、ステムに基づくBaurusuchiaでは共通祖先とその全ての子孫は定義に含まれないが、特定のバウルスクス科に非バウルスクス科動物よりも近縁な全ての属種を含む。ステムに基づく分類群としてはBaurusuchiaはバウルスクス科よりも包括的な分類群である。例えば、新属新種が発見されたとして、それが最も近い共通祖先の子孫でない場合にはバウルスクス科から除外されてしまうが、他のワニ形上目よりもバウルスクスに近縁であればBaurusuchiaに属する。ただし、2011年時点で、Baurusuchiaとバウルスクス科は基本的に同一の範囲を指す[12]。
Montefeltro et al. (2011) でもバウルスクス科は2つの亜科(ピサラチャンプサ亜科とバウルスクス亜科)に区分された。ピサラチャンプサ亜科にはピサラチャンプサとワルゴスクス、バウルスクス亜科にはバウルスクスとストラティオトスクスが含まれる。キノドントスクスはどちらの亜科にも属さず、基盤的なバウルスクス科に位置付けられる。なお、キノドントスクスを区別する特異的な特徴は記載された標本が幼体であるがゆえの可能性があり、その場合キノドントスクスはバウルスクスの幼体とされ、2属はシノニムの関係にある[12]。
以下はMontefeltro et al. (2011)に基づくクラドグラム[12]。
Notosuchia |
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
なお、ピサラチャンプサの数か月前に命名されたカンピナスクスは解析に含められていない[21]。カンピナスクスは2014年に記載されたアプレストスクスの記載に際して行われた系統解析で解析に含められ、ピサラチャンプサ亜科に置かれた。なお、アプレストスクスはバウルスクス亜科に置かれ、バウルスクスは多系統群であることが明らかにされた。以下に Godoy et al., (2014) に基づくクラドグラムを示す[8]。
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2011年にブラジルのアダマンティナ累層から、バウルスクス科、おそらくはバウルスクスのものとされる卵化石が発見された。この化石には Bauruoolithus fragilis という分類名が与えられた。卵の長さは幅の約2倍で、両端が鈍い形をしている。保存状態は良好で、厚さ約0.25ミリメートルの比較的薄い殻も保存されている。バウルスクス科に近縁な現生のワニでは、卵は幼体が殻を破りやすいように外的要因で劣化するが、この卵化石から、バウルスクスの幼体は劣化したのではなく元々薄い卵殻を破って孵化したと考えられる[22]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.