内部オールト雲
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内部オールト雲[1](ないぶオールトうん、英: Inner Oort cloud[注 1]、英: Inner cloud[2])は、オールトの雲の内側にあると想定される、理論上の星周円盤である。提唱者であるジャック・G・ヒルズの名前から Hills cloud と呼ばれることもある[3]。円盤の外縁は、太陽から20,000 - 30,000天文単位 (au) 付近、内縁は、あまり明確ではないが、惑星やエッジワース・カイパーベルト天体の軌道をはるかに超えた 250 - 1500 auの付近にあると想定されている[要出典]が、さらに遠くにある可能性もある。
内部オールト雲仮説は、オールトの雲仮説の抱える矛盾を説明するために提唱された。オールトの雲にある彗星は、天の川銀河や太陽系近傍の恒星などの重力的な影響を受けて、絶えず摂動されている。そのため、無視できないほどの数の彗星が太陽系を離脱したり、内部太陽系に入り込んで蒸発したり、太陽や木星型惑星に落下したりしており、太陽系誕生時に生まれたオールトの雲は、はるか昔に枯渇していたはずである。しかしながら、今でも十分な数の彗星がオールトの雲に存在するとされており、どこかに彗星の供給源となるものが必要となる。
内部オールト雲仮説では、このオールトの雲の持続性問題を解決するために、より天体の数が多い「内部オールト雲」の存在を仮定する。内部オールト雲から放出された天体がオールトの雲の領域にたどり着くことで、オールトの雲が維持される[4]。内部オールト雲には、太陽系内で最も多くの彗星が集中して存在していると考えられており、もし本当に内部オールト雲が存在するならば、オールトの雲の約5倍の数の彗星が存在するものと考えられている[5]。
近年、彗星や小惑星など内部オールト雲由来と考えられる候補天体が複数発見されており、内部オールト雲の存在を支持するものとなっている。本当に内部オールト雲が存在するならば、その密度はオールトの雲よりも高いはずである[6]。太陽系近傍の恒星の重力相互作用や天の川銀河の潮汐作用の影響を受けて、オールトの雲の彗星は円軌道を描いているが、内部オールト雲の彗星はそうではない可能性がある。内部オールト雲の総質量は不明であるが、外側のオールトの雲の何倍もの質量があると考える研究者もいる。