分子クラウディング
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分子クラウディング、または高分子クラウディング(英:molecular crowding または macromolecular crowding)といわれる現象は、タンパク質などの高分子が高濃度である状態で、溶媒中の分子の性質が変化すること[1]。高分子こみあいとも言う。以下、本稿では「(分子)クラウディング」や「込み合い(効果)」などと訳す。この状態は生物の細胞中では普通に見られる。例えば大腸菌の細胞質中の高分子濃度は 300-400mg/ml になる[2]。分子クラウディングの状態になると、その高濃度により、溶媒内の高分子の占有体積が減少し、その結果として活量が増大する。
分子クラウディング効果により、細胞中の分子は、in vitro における挙動とは全く異なるふるまいをする可能性がある[3]。それゆえ、実験室内で薄い溶液を使って酵素の特性や代謝のプロセスを測定すると、生存細胞内に見られる真の値より何桁も異なる場合がある。生化学的プロセスの研究は、実際に近い高濃度条件で行うことは非常に重要である。これはすべての細胞で普遍的な性質であるし、分子クラウディングこそが代謝の効率性の本質かもしれないからである。