散りぬるを (小説)
川端康成の短編小説 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
『散りぬるを』(ちりぬるを)は、川端康成の短編小説[注釈 1]。実際に起きた殺人事件の犯罪記録を素材に潤色した小説である[3][4][5][6]。川端自身の自己評価が高かったものの、川端文学の中では異色作であったため、あまり本格的に取り上げられることの少なかった作品であるが[3][7][5][1]、1990年代以降には、転換期の作品という側面以外にも、様々な角度からの論究がなされて注目度が増した小説である[5][6][7]。
概要 散りぬるを, 作者 ...
散りぬるを | |
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作者 | 川端康成 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 短編小説、中編小説 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
初出情報 | |
初出 |
「散りぬるを」 - 『改造』1933年 11月号(第15巻第11号) 「瀧子」 - 『文學界』1933年12月号(第1巻第3号) 「通り魔」 - 『改造』1934年5月号(第16巻第6号) |
刊本情報 | |
収録 | 『禽獣』 |
出版元 | 野田書房 |
出版年月日 | 1935年5月20日 |
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女弟子2人が殺され、犯人も獄死してしまった5年前の殺人事件に思いを巡らす小説家の「私」が、残された聴取書・予審終結決定書の記録と、当時の自身の記憶や現在の感慨などを複雑に交錯させる中、永遠の不可知でしかない事件の真相や3人の心理などの深淵を探ることの不毛性を示唆しながら、犯人と取調官の「合作の小説」にすぎない公判記録の虚構性を認識すると同時に、それに導かれ綴られていく自身の手記(小説)もまた言葉の虚構にすぎないと認識する小説家としての意識が描かれている[8][7][9]。