根拠に基づく医療
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この項目では、医学におけるエビデンス(根拠、証拠)について説明しています。他の分野におけるエビデンスについては「エビデンス」をご覧ください。 |
根拠に基づく医療(こんきょにもとづくいりょう、Evidence-based medicine: EBM)とは、「個々の患者のケアに関する意思決定において、現在の最良のエビデンスを意識的、明示的かつ思慮深く用いること (conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence)」である[1][2]。 エビデンスに基づく医療とも呼ぶ。EBMの目的は、臨床医の経験、患者の価値観、および入手可能な最良の科学的情報を統合して、臨床管理に関する意思決定を導くことである。この用語はもともと、医学の実践を指導し、個々の患者に関する個々の医師の意思決定を改善するための手段を説明するために使用されていた[3]。
医学および保健医療の分野におけるエビデンスとは、一般的には「科学的根拠」という意味である[4]。そして、ある治療法・検査法が、ある病気・怪我・症状に対して、科学的に効果があることを示す根拠となる検証結果・臨床研究結果を指す[5]。EBMにおいては、メタ分析、システマティック・レビュー、ランダム化比較試験の実施と結果の採用が強く推奨されている。EBMが医療分野に及ぼした影響は大きく、パラダイムシフト[6][7]と称されている。この用語の使用は急速に広まり、患者に適用される指針を立案するにあたってエビデンスの活用に重点を置いた手法が取り入れられるようになった[8]。健康管理のあらゆる場面や、非医療分野における意思決定への取り組み方について説明する際にもこの用語が広がっていった。
EBMピラミッドは、医学におけるエビデンスレベル(英語版)を視覚化するのに役立つツールである。システマティック・レビューはピラミッドの上部、すなわち権威があり、信頼がおけるものとされており、専門家の意見であってもピラミッドの下部に位置する[10]。動物実験に至ってはピラミッドの最下段にしかランクされない(右図)、または、ピラミッドに採用されていない[10]。
「根拠に基づく医療」(evidence-based medicine: EBM)という用語は、1990年にマックマスター大学のゴードン・ガイアット(英語版)によって導入されたものである[11][12][13][14]。