標本空間
ウィキペディア フリーな encyclopedia
標本空間(ひょうほんくうかん、英: sample space[注釈 1])は、確率論にて、試行結果全体の集合のことである[4]。確率空間を定義する上で最初に必要な定義である。
標本空間はふつう Ω で表す。全事象という意味では U(Universe の頭文字)で表すことも多い。
標本空間の元を標本点ともいう。標本空間の大きさ(元の個数)が有限で特に等確率空間の場合、確率は標本空間の全ての部分集合に対してラプラスの古典的確率(数学的確率)で定義される。
標本空間の大きさが無限だと非等確率空間になり、可算個であるか否かにより可算型と連続型に分けられる。
アンドレイ・コルモゴロフは『確率論の基礎概念』(1933年)[5]で公理的確率論を提唱した。これにより確率を非等確率空間に対しても定義できるようになり、確率測度の概念が導入されるようになった。
コルモゴロフの拡張定理より、可算回の反復試行へも確率が拡張できるための必要十分条件は、確率測度が完全加法性を満たすことである。
測度論により、標本空間の部分集合で確率をもつものには可測であることが必要になる。標本空間の部分集合のうち確率をもつものを事象、事象空間をふつう で表す。 は Ω の完全加法族である。
これ以上分解できない事象を根元事象または単純事象 (elementary event / simple event) という。注意したいのは、根元事象は標本空間の1点を表す集合であり、元ではない。1点を表す集合か元であるかはそれぞれ「根元事象」「標本点」で区別される(例えば、サイコロを振ったとき、根元事象は {1}, …, {6})
標本空間が非可算集合の場合、ほとんど全ての確率変数値の確率は 0 になり、確率質量関数で確率分布を表せない。累積分布関数が絶対連続の場合、確率は確率密度関数により表される:
標本調査において、母集団から任意抽出された元の集合を「標本」と言うが、それと「標本空間」は意味が異なる。母集団から抽出した標本という意味では S(Sample の頭文字)で表すことも多い。