水素
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水素(すいそ、英: hydrogen、羅: hydrogenium、仏: hydrogène、独: Wasserstoff)は、原子番号1の元素である。元素記号はH。原子量は1.00794[1]。非金属元素のひとつである。
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外見 | |||||||||||||||||||||||||
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無色の気体[1] プラズマ状態の紫色の輝き | |||||||||||||||||||||||||
一般特性 | |||||||||||||||||||||||||
名称, 記号, 番号 | 水素, H, 1 | ||||||||||||||||||||||||
分類 | 非金属 | ||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 1, 1, s | ||||||||||||||||||||||||
原子量 | 1.00794(7) | ||||||||||||||||||||||||
電子配置 | 1s1 | ||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 1(画像) | ||||||||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||||||||
色 | 無色[1] | ||||||||||||||||||||||||
相 | 気体 | ||||||||||||||||||||||||
密度 | (0 °C, 101.325 kPa) 0.08988[1] g/L | ||||||||||||||||||||||||
融点 | 14.01[1] K, −259.14[1] °C | ||||||||||||||||||||||||
沸点 | 20.28[1] K, −252.87[1] °C | ||||||||||||||||||||||||
三重点 | 13.8033 K (−259 °C), 7.042 kPa | ||||||||||||||||||||||||
臨界点 | 32.97 K, 1.293 MPa | ||||||||||||||||||||||||
融解熱 | (H2) 0.117 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||
蒸発熱 | (H2) 0.904 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||
熱容量 | (25 °C) (H2) 28.836 J/(mol·K) | ||||||||||||||||||||||||
蒸気圧 | |||||||||||||||||||||||||
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原子特性 | |||||||||||||||||||||||||
酸化数 | 1, −1 (両性酸化物) | ||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 2.20(ポーリングの値) | ||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 1st: 1312.0 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 31±5 pm | ||||||||||||||||||||||||
ファンデルワールス半径 | 120 pm | ||||||||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 六方晶系 | ||||||||||||||||||||||||
磁性 | 反磁性[2] | ||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | (300 K) 0.1805 W/(m⋅K) | ||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ | (gas, 27 °C) 1310 m/s | ||||||||||||||||||||||||
CAS登録番号 | 12385-13-6 1333-74-0 (H2)>[3] | ||||||||||||||||||||||||
主な同位体 | |||||||||||||||||||||||||
詳細は水素の同位体を参照 | |||||||||||||||||||||||||
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ただし、一般的に「水素」と言う場合、元素としての水素の他にも水素の単体である水素分子(水素ガス)H2、1個の陽子を含む原子核と1個の電子からなる水素原子、水素の原子核(ふつう1個の陽子、プロトン)などに言及している可能性があるため、文脈に基づいて判断する必要がある。
1783年、ラヴォアジエが「 音声、イドロジェーヌ(hydrogène)」と命名した[1]。ギリシア語の 「ὕδωρ=『水』」と 「γεννάν=『生む』『作り出す』」を合わせた語で、水を生むものを意味する[1]。英語では「 音声、ハイドロジェン(hydrogen)」という。
日本語の「水素」は、オランダ語「 音声、ワーテルストフ(waterstof)」の意訳である。宇田川榕菴が書いた『舎密開宗』で初めて用いられた。ドイツ語の「 音声、ヴァッサーシュトフ(Wasserstoff)」も同じ構成の複合語である。朝鮮語でも同じく水素(ハングル:수소 音声)と称する。
中国語ではその気体としての軽さから「軽」の旁を用いて「氫」(拼音: qīng 音声)という字があてられている。
詳細は「元素の中国語名称」を参照
1671年に、ロバート・ボイルが鉄と希硝酸を反応させて生じる気体が可燃性であることを記録している[1]。1766年、ヘンリー・キャヴェンディッシュが水素を気体として分離し、発見した。
量子力学における役割
陽子1つと電子1つからなるシンプルな構造ゆえ、原子構造論の発展において水素原子は中心的な役割を果たしてきた。事実、量子力学の入門として、水素原子や水素様分子をまず取り扱う教科書がほとんどである。
水素は宇宙でもっとも豊富に存在する元素であり、(ダークマターとダークエネルギーを除いた)宇宙の質量の4分の3を占め[4]、総量数比では全原子の90 %以上となる[5]。これらのほとんどは星間ガスや銀河間ガス、恒星あるいは木星型惑星の構成物として存在している。
水素原子は宇宙が誕生してから約38万年後[6]に初めて生成したとされている。それまでは陽子と電子がバラバラのプラズマ状態で光は宇宙空間を直進できなかったが、電子と陽子が結合することにより宇宙空間に散乱されずに進めるようになった。これを「宇宙の晴れ上がり」という。
宇宙における主系列星のエネルギー放射のほとんどはプラズマとなった4個の水素原子核がヘリウムへ核融合する反応によるもので、比較的軽い星では陽子-陽子連鎖反応、重い星ではCNOサイクルという過程を経てエネルギーを発生させている。水素原子はいずれの核融合反応においてもこれを起こす担い手である[7]。太陽の組成に占める水素の割合は約73 %[注 1]である[8][9]。
地球表面の元素数では酸素・珪素に次いで3番目に多いが[1]、水素は質量が小さいため、質量パーセントで表すクラーク数では9番目となる[要出典]。地球表面の元素数ではほとんどは海水の状態で存在し[1]、単体の水素分子状態では天然ガスの中にわずかに含まれる程度である[要出典]。海水における推定存在度は1 Lあたりに108 g、地球の地殻における推定存在度は1 kgあたり1.4 gであり[10]、乾燥大気における構成比は0.55ppmである[11]。宇宙空間に散逸する地球の大気は少ないが、それでも1秒あたり水素が3 kg、ヘリウムが50 gずつ放出されている。これは大気が薄く原子や分子の速度が減速されずに宇宙へ飛び出すジーンズエスケープ(英語版)や、イオン状態の荷電粒子が地球磁場に沿って脱出する現象がある。なお、加熱された粒子がまとまって流出するハイドロダイナミックエスケープ(英語版)や太陽風が持ち去るスパッタリングは現在の地球では起きていないが、地球誕生直後はこの作用によって水素が大量に散逸したと考えられる[12]。
固有磁場を持たない金星は、現在でもハイドロダイナミックエスケープやスパッタリングが続き、地表には比較的重いため残った酸素や炭素が作る二酸化炭素が大気のほとんどを占め、水がない非常に乾燥した状態にある。火星も軽い水素を中心に散逸し、かろうじて氷となった水が極部分の土中に残るにとどまる[12]。
質量数が2(原子核が陽子1つと中性子1つ)の重水素(2H)、質量数が3(原子核が陽子1つと中性子2つ)の三重水素(3H)等と区別して、質量数が1(原子核が陽子1つのみ)の普通の水素(1H)を軽水素とも呼ぶ。
天然の水素には、水素(軽水素、プロチウム)1H、重水素 2H (デュウテリウム、ジューテリウム[13]、略号D)、三重水素 3H (トリチウム、略号T)の3つの同位体が知られている[1]。このうち、もっとも軽い 1H は、1つの陽子と1つの電子のみによって構成されており、原子の中で中性子を持たない核種の1つである。存在が確認されている中でほかに中性子を持たない核種はリチウム3のみである。それぞれの同位体は質量の差が2倍、3倍となり、性質の違いも大きい。たとえばD2はH2よりも融点や沸点が高くなり、溶融潜熱は倍近くに、蒸気圧は10分の1近くとなる[14]。2013年現在、より重い同位体は水素4から水素7までが確認されている。もっとも重い水素7(原子核は陽子1、中性子6よりなる)はヘリウム8を軽水素に衝突させることで合成されている。質量数が4以上のものは寿命がきわめて短く、たとえば水素7では半減期が23 ys(= 2.3×10−23 s)ほどしかない[15]。
水素の同位体は、それぞれの特徴を有効に活かした使い方をされる。重水素は原子核反応での用途で、中性子の減速に使用され、化学や生物学では同位体効果の研究、医療では診断薬の追跡[13]に使用されている。また、三重水素は原子炉内で生成され、水素爆弾の反応物質や核融合燃料、放射性を利用したバイオテクノロジー分野でのトレーサーや発光塗料の励起源として使用されている。
水素分子は、常温常圧では無色無臭の気体として存在する、分子式 H2で表される単体である。分子量2.01588、融点 −259.2 °C(常圧)、沸点 −252.9 °C(常圧)、密度 0.0899 g/L、比重 0.0695(空気を 1 として)、臨界圧力 12.80 気圧、水への溶解度 0.021 mL/mL(0 °C)。最も軽い気体である。原子間距離は 74 pm、結合エネルギーはおよそ 435 kJ/mol[3]。
水素分子は常温では安定であり、フッ素以外とは化学反応をまったく起こさない。しかし何かしらの外部要因があればその限りではなく、たとえば光がある状態では塩素と激しい反応を起こす[14][3]。また、水素と酸素を混合したものに火をつけると起きる激しい爆発(水素爆鳴気)は、混合比下限は4.65 %、上限は93.3 %であり、空気との混合では4.1 – 74.2 %となり、これはアセチレンに次ぐ広い爆発限界の範囲を持つ[3]。
ガス密度が低い水素は速い速度で拡散する性質を持ち、また燃焼時の伝播も速い。そのため、ガス漏れを起こしやすい傾向にある[3]。原子径の小ささから、金属材料に侵入し機械的特性を低下させる(水素脆化)傾向が強い。これは高温高圧環境下で顕著となり、封入容器の材質には注意を払う必要がある。−250 °C以下で液化させると体積は 800分の1となり、さらに軽いため低温貯蔵性には優れる[16]。
ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になると考えられている。逆に宇宙空間など非常に圧力が低い場合、H2+やH3+、単独の水素原子などの状態も観測されている。H2分子形状の雲は星の形成などに関係があると考えられており、特に新生惑星や衛星の観察時にはそれを注視することが多い。
オルト水素とパラ水素
水素分子は、それぞれの原子核(プロトン)の核スピンの配向により、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類の異性体が存在する[14]。オルト水素は、互いの原子核のスピンの向きが平行で、パラ水素ではスピンの向きが反平行である。この2つは、化学的性質に違いがないが、物理的性質(比熱や熱伝導率など)がかなり異なる。これは内部エネルギーにある差によるもので、パラ水素側が低い[14]。統計的な重みが大きいほうをオルトと呼ぶ。
常温以上では、オルト水素とパラ水素の存在比はおよそ3:1であるが、低温になるほどパラ水素の存在比が増し、絶対零度付近ではほぼ100パーセントパラ水素となる[14]。ただし、このオルト-パラ変換はスピン反転を伴うために、触媒を用いない場合極めて遅く、触媒を用いずに水素を液化すると、液化した後もオルト-パラ変換に伴い両者のエネルギー差に相当する熱が発生するため、液化水素が気化してしまう。これを水素のボイル・オフ問題という。[17]オルト‐パラ変換を起こす触媒は、活性炭や鉄などの金属の一部、常磁性物質またはイオンなどがある[14]。
水素は、ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になると考えられているが、1996年にローレンス・リバモア国立研究所のグループが、140 GPa(1 GPa = 約1万気圧)、数千°Cという状態で、100万分の1秒以下という短寿命ではあるが、液体の金属水素を観測したと報告している[18][19]。木星型惑星(木星・土星)の深部は非常に高い圧力になっており、液体金属水素が観測された条件と似ている。木星型惑星を構成するもっとも主要な元素のひとつである水素は、この状況下では金属化している可能性があり、惑星の磁場との関わりも指摘されている[20]。しかしながら、2017年現在、数百GPaのオーダーで圧力を加える実験が行われているものの、固体の金属水素が得られたという十分な証拠が示されたことはない[21][22][注 2]。
金属化そのものが達成されていないためにその真偽はいまだ不明であるが、Ashcroft (1968, p. 1748) は、金属化した水素は室温超伝導を達成するのではないかと予想している。この可能性の傍証として、周期表で水素のすぐ下のリチウムは、30 GPa以上という超高圧下で超伝導状態となることが示されている。リチウムの超伝導への転移温度は圧力48 GPaで20 K程度であるが、この数字は単体元素のものとしては高い部類に入り、いくつかの例外を除けば一般に軽い元素ほど転移温度は高くなるため、もっとも軽い元素である水素は、より高い転移温度を持つ可能性が十分ある。
また、励起状態の水素が金属化するときわめて強力な爆薬になるとの理論計算が行われ、電子励起爆薬として研究されている。この理論では圧力だけでは不十分であり、水素を励起状態にして圧力をかければ金属化するとしている。
元素およびガス状分子の中でもっとも軽く[3]、また宇宙でもっとも数が多く[1]、珪素量を106とした際の比率は2.79×1010である。[24]地球上では水や有機化合物の構成要素として存在する。
水素分子は常温・常圧では無色無臭の気体で、非常に軽く、非常に燃焼・爆発しやすいといった特徴を持つ。そのため日本では、高圧ガス保安法容器保安規則により、赤色のボンベに保管するように決められている[3]。従来、水素ガスの爆発濃度は4 % – 75 %であるとされてきたが[25]、慶應義塾大学環境情報学部の武藤佳恭は、10 %以下であれば爆発しないことを明らかとした[26]。