火薬入れ
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火薬入れ(かやくいれ)とは、火薬を入れるための小型の容器であり、19世紀に紙製薬莢が広まる以前の前装式小銃の射撃装備としては必須の器具である。これらは非常に精巧な装飾の芸術的作品から、一般向け容器の質素な形状まで多種にわたっており、広く収集されている。多くは軍の支給品として規格が統一されているが、華美な装飾が施されたものは射撃競技に用いられるのが普通だった[1]。
「powder horn」(牛角製火薬入れ)という語は、しばしば他の種類の火薬入れを示す言葉として用いられる。しかしこれは、厳密にはウシ科の角をくり抜いて製造した火薬入れのサブカテゴリーである。火薬入れは非常に多様な素材と形状で作られている。ただし、打撃された時に火花を発しやすい鉄などの金属類は、通常避けられた。彫刻や切削できる雄シカの枝角は非常に一般的な素材だった。しかし木材や銅もよく用いられており、インドでは象牙が使われた。角状の製品は別として、一般的な火薬入れの形状は枝角をベースとしたY字状の物か、平たい洋ナシ型でストレート形状の口がついたものだった。円形で平たい形状のものもある。大型の火薬入れには、側面がへこんだラインの、全体としては三角形状のものがある。これは小型の火薬入れとは異なり、地面に立てることができる。枝角や角を用いたタイプのデザインの多くには、蓋をするため、幅広で密閉できる穴が空いており、ここに火薬を振り出すための小さな口が設けられている。多様な装置が適正な薬量を振り出すために用いられた。適切な量の火薬を振り出すことは重要であり、火薬はパウダー・メジャーやチャージャーの中へと振り出された[2]。1600年頃という初期から、ドイツの火薬入れには「異なる薬量にあわせて調節可能な伸縮自在のバルブ」が付属する銀製の口がついていた[3]。