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監査等委員会が、取締役の職務執行の組織的監査を担う株式会社 ウィキペディアから
監査等委員会設置会社(かんさとういいんかいせっちがいしゃ)とは、2015年(平成27年)5月1日施行の平成26年会社法改正により新たに導入された株式会社の機関設計であり、監査役会に代わって過半数の社外取締役を含む取締役3名以上で構成される監査等委員会が、取締役の職務執行の組織的監査を担うというもの。監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の中間的性格を帯びた第三の会社形態として、上場会社の間で急速に広まりつつある。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
2003年(平成15年)制定の株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(のち会社法)によって、アメリカ合衆国の制度を参考とした指名委員会等設置会社(当時の名称は「委員会設置会社」)制度が導入された。従前の監査役会設置会社に比して、迅速な意思決定及び業務執行機能(執行役)と監督機能(取締役会)の分離を図ったものである。しかしながら、この機関設計によると、三委員会(指名委員会・監査委員会・報酬委員会)のそれぞれが過半数の社外取締役で構成されなければならず、実務上は相当数の社外役員が要求される、機関構成の膨らみやすい制度であり、とりわけ日本の硬直した経営者市場下においては社外役員の確保に苦慮しがちであり、導入から10年以上が経過しても指名委員会等設置会社へ移行した企業はわずか68社に留まっていた[1]。この他にも、人事や報酬の決定権を社外役員に掌握されることへの抵抗感が強いことが、普及を妨げる大きな理由として挙げられていた[2]。
かねてよりこの三委員会をめぐって、経済界からはより柔軟な機関設計を可能とする要請もあり[3]、社外取締役の活用を推進してコーポレート・ガバナンスを強化する観点から、2014年(平成26年)に会社法が改正され、監査等委員会設置会社制度が導入された[4]。なお、本制度との区分のため、従来の委員会設置会社という名称は「指名委員会等設置会社」に改められた。
監査等委員会設置会社では、取締役会の中に監査等委員会が置かれる。一方で監査役(監査役会)を設置することはできない(327条4項)。また常に会計監査人の設置が必要である(327条5項)。
監査等委員会設置会社においては、取締役会の中に監査等委員会を設置しなければならない。監査等委員会は3名以上の監査等委員である取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない(331条6項)。
監査等委員会設置会社における取締役会の権限は通常の取締役会に類似するが、取締役の過半数が社外取締役である場合には、399条の13第5項各号に定める事項を除き重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる。これは指名委員会等設置会社に類似する、意思決定の迅速性を重視したものである。社外取締役が過半数に満たない場合であっても、定款に定めれば取締役会決議によって同等の効果を発揮することが可能となる(399条の13第6項)。重要な業務執行の決定を取締役に委任しない場合においては、監査役会設置会社と同様に特別取締役による議決の制度が存在する(373条)。
取締役の任期は、後述する監査等委員である取締役を除き、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなる(332条3項)。この点は指名委員会等設置会社に類似する。
監査等委員会は各監査等委員が招集する(399条の8)。招集通知は一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)前までに発するが、監査等委員全員の同意によって招集通知は不要となる。必要に応じて取締役や会計参与に出席を要求することもできる(399条の9)。
決議は議決に加わることができる監査等委員の過半数が出席し、その過半数をもって行う(399条の10)。当該決議に特別の利害関係を有する監査等委員は議決に加わることができない点(399条の10第2項)、及び定足数が存在する点は取締役会に類似する(ただし定足数は加重不可であり取締役会とは異なる)。その他は監査役会と同様の規定が置かれている。決議要件を加重することができない点、みなし決議制度が存在しない点も監査役会と同様である。
監査等委員会(監査等委員)は、次に掲げる職務を行う(399条の2第3項)。
監査等委員会は以下の権限を持つ。
監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役はその他の取締役と体系的に区別されている。具体的には、役員選任権付種類株式(108条1項9号)・選任(329条)・累積投票制度(342条)・株主総会で定める報酬等(361条)などにおいて両者は区別される。
委員会非設置会社は定款を変更して監査等委員会設置会社となることができる(915条1項・911条3項22号参照)。この場合、監査役・監査役会を置いている場合、廃止しなければならず(327条4項)、監査役は任期満了により退任する(336条4項2号)。また、取締役会を置いていない場合、取締役会設置会社となり(327条1項3号)、会計監査人を置いていない場合、会計監査人設置会社となる(327条5項)。なお、監査等委員会設置会社となった場合、従前の取締役及び会計参与は任期満了により退任する(332条7項1号・334条1項)。会計監査人は退任しないので注意が必要である。なお、特例有限会社には委員会を置くことができない(整備法17条1項)。
監査等委員会設置会社の定めの新設は定款変更であるから、株主総会の特別決議によらなければならない(309条2項11号・466条)。
登記事項は以下の通りである(911条3項22号)。
監査役会設置会社と対比した場合、監査等委員会設置会社には以下の利点が挙げられる。
一方、以下の欠点も挙げられる。
2015年(平成27年)5月の導入以降、監査等委員会設置会社へ移行した企業は地域を問わず急増している。2か月後の7月時点で早くも190社程度が移行を表明[10]、2016年(平成28年)6月末の株主総会シーズン後には600社前後に達した。これは上場会社全体の約2割に相当する規模である[11]。
ここまで急速に本制度が広まった最大の理由は、改正会社法が施行された1か月後の2015年(平成27年)6月1日に運用開始された東京証券取引所の企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)[12]である。「原則4-8. 独立社外取締役の有効な活用」にて、以下のような定めがある。
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである。
東証は本指針運用開始後最初に開催する定例株主総会の日から6か月を経過する日(多くの場合12月末となる)までに「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の提出を求め、当該原則を実施しない場合にその理由を記載しなければならないとした[13]。更に改正会社法は、有価証券報告書提出会社が社外取締役を置いていない場合に、置くことが相当でない理由を定時株主総会で説明する義務を取締役に課した(327条の2)[注釈 1]。コーポレートガバナンス・コードはあくまで要請にすぎないものであるが、法規定の上においても、社外取締役を設置するか設置しない理由を株主に対して説明するか、のどちらかを講ずる必要が生じたのである。監査役会設置会社においては従来より社外監査役を最低2名設置する必要があり、監査等委員会設置会社への移行と同時にこれらを横滑りで社外取締役とすれば、コーポレートガバナンス・コードを形式上満たすことができる。前述の通り、監査役会設置会社よりも社外役員数が少なく済む監査等委員会設置会社は公開大会社にとってメリットが大きいのである。
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