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障害調整生命年

疾病負荷を示すもの ウィキペディアから

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障害調整生命年(しょうがいちょうせいせいめいねん、: disability-adjusted life yearDALY)とは、病的状態、障害、早死により失われた年数を意味した疾病負荷を総合的に示すものである。元来はハーバード大学により世界銀行のために1990年に開発されたものであるが、後に世界保健機関(WHO)がその手法を2000年に採用した。早死によって失われた潜在的な年数の概念を拡張して、損なわれた健康や障害のために失われた健康的な生活の年数も含めたものである[2]。それにより、死亡率と疾病率は単一の共通指標に統合されることになる。DALYは、公衆衛生健康影響評価英語版 (HIA)[3] の分野で次第に一般的なものとなってきている。

さらに見る 順位, 疾病 ...

DALYは「早死により失われた期間」と「疾病により障害を余儀なくされた期間」の、双方の期間を慢性疾患による影響として最も妥当な指標であるとみなしている。それゆえ1DALYは、1年間の健康生活が失われたことと同等である。日本人の平均余命が世界で最も長いので、日本人の平均余命が早死の評価の基準値として使われている[4]

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算出法

伝統的に、健康の損失は、単一の指標である損失生存年数(Years of Life Lost: YLL) の期待値(平均値)で表現されてきた。この計算方法のみでは、障害生存年数 (Years Lived with Disability: YLD) と呼ばれる障害による影響が考慮されていない。

障害調整生命年(DALY)は、これらの2つの要素の和である[5]。計算式は次のとおり。

障害調整生命年 (DALY) = 損失生存年数 (YLL) + 障害生存年数 (YLD)[6]
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障害調整生命年

社会的重み付け

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いくつかの研究では青年時の年代に重み付けしてDALYを計算している。この計算式では10歳と55歳前後が全体の平均値に相当し、25歳前後で最高値となり、幼児や高齢者で最低値となる。

DALYについての研究群での大きな相違点は、年齢に応じた値に「社会的重み付け」をつけるかどうかである。通常、青年としての年代は、子供や中高年の年代に比べてより高い価値付けがなされる。この重み付け方式は、生産性と子供時代の教育投資の収益回収に関連した社会的利益を反映させている。社会は、幼児に対しては相対的にほとんど投資をしていないし、中高年者からは投資に見合う回収を既に社会が実質的に受けているからである。青年は、教育等の最大限の投資を受け終わり、働き始めたばかりで、社会は投資に見合った利益を青年からほとんど得ていないからである。

グローバル疾病負荷 (GBD) 2001-2002年の研究では生存年を同等に計算したが、グローバル疾病負荷1990年及び同2004年の研究では以下の計算式を使用している[7]

W = 0.1658 Y e0.04 Y[8]

ここでYとは実際の年齢を表し、Wとは平均すれば1となる係数を表す。eとは自然対数の底でe = 2.71828である。

これらの研究では、さらに対象者の年齢が増した場合、1年ごとに翌年は前年に比べて3%減価されて97%の価値で計算されることになる。

平均余命と損失年数、減価、社会的重み付けの相互作用の影響は、疾病の重篤さと疾病期間に関連して複雑になっている。例えば、グローバル疾病負荷1990年の研究で採用されたパラメーターは、39歳以前の死亡に対してはそれ以降の年齢と比較して高い重み付けを与えており、新生児の死亡に対して33DALYを与え、5-20歳の死亡に対しては概ね36DALYを与えている[9]

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歴史及び使用

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2004年における10万人あたりの全についての障害調整生命年[10]
  データ無し
  9,250未満
  9,250-16,000
  16,000-22,750
  22,750-29,500
  29,500-36,250
  36,250-43,000
  43,000-49,750
  49,750-56,500
  56,500-63,250
  63,250-70,000
  70,000-80,000
  80,000を超える

DALYは、1990年に発表されたグローバル疾病負荷(The global burden of disease)として知られているWHOと世界銀行の研究としてマーレーとロペスによって初めて提唱された[11]。障害調整生命年は現在、世界保健機関によりGlobal Burden of Diseaseなどの出版物で用いられている主要な指標となっている。

2000年

2000年の全世界における、各疾患のDALYに占める割合上位は以下の通り[12]

  1. 周産期疾患 6.8%
  2. 下気道呼吸器感染症 6.3%
  3. HIV/AIDS 5.5%
  4. 単極性うつ病 4.5%
  5. 下痢性疾患 4.4%
  6. 虚血性心疾患 4.0%
  7. 脳血管疾患 3.1%
  8. マラリア 2.9%
  9. 道路交通事故 2.6%
  10. 結核 2.4%

2004年

2004年の全世界における、各疾患のDALYに占める割合上位は以下の通り[13]

  1. 下気道感染症 6.2%
  2. 下痢性疾患 4.8%
  3. 大うつ病 4.3%
  4. 虚血性心疾患 4.1%
  5. HIV/AIDS 3.8%
  6. 脳血管疾患 3.1%
  7. 未熟児、低出生体重 2.9%
  8. 出生時仮死出生外傷 2.7%
  9. 交通事故 2.7%
  10. 新生児の感染症など 2.7%
  11. 結核 2.2%
  12. マラリア 2.2%
  13. COPD 2.0%
  14. 屈折異常 1.8%
  15. 成人発症性の難聴 1.8%
  16. 先天異常 1.7%
  17. アルコール使用障害 1.6%
  18. 他傷による怪我 1.4%
  19. 糖尿病 1.3%
  20. 自傷行為怪我 1.3%
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国別の例

要約
視点
さらに見る 豪州, カナダ ...

オーストラリア

(25.1/1,000)、心臓病 (23.8/1,000)、メンタル問題 (17.6/1,000)、神経疾患 (15.7/1,000)、慢性呼吸器疾患 (9.4/1,000) 及び糖尿病 (7.2/1,000) が平均余命を損う損失年や早死の原因となる代表的な疾病である[15]

PTSDの状況

2004年の世界の人口の多い25ヶ国でのDALYによると、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) の影響はアジア太平洋諸国や米国で最も多く出ている(心的外傷後ストレス障害#疫学に示されるように)。

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脚注

関連項目

外部リンク

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