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静音パソコン(せいおんパソコン)とは、明確な定義は存在しないもののデスクトップパソコンないしその周辺機器から発する騒音を抑えた、さらには無音化したパソコン全般を指す言葉である[1]。日本語において騒音が少ない状況を表す語は「静穏」であるが、これを冠し「静穏パソコン」と表記されることは少ない。
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主な騒音源である、電源・CPU・グラフィックカードの冷却用ファン音の低減をはじめとし、さらにはHDDの回転にともなう振動とヘッドの駆動音を避けてSSDにより無音化する、などが主とした静音化である。
Cray-1の、「まるで直冷式の冷凍庫に電子回路を組み込んだような」構造などで知られる通り、大量かつ高速の計算を電子的におこなう際には、大量の熱の発生がともなう。パーソナルコンピュータにおいても1990年代後半より顕著となった。
パーソナルコンピュータで使用されるマイクロプロセッサの消費電力は、当初のNMOS時代からCMOS化によって一旦は劇的に減少した。しかし、CMOSプロセッサの消費電力は、クロック周波数と集積される回路規模に比例して増える。プロセッサの消費電力はそのまま熱になる。そのため、性能向上に従って急激に発熱が問題となり、デスクトップパソコンでは486〜Pentiumプロセッサの頃からCPUの強制冷却が必要になった。微細化や低電圧化によりある程度キャンセルされていたが、2000年ヒトケタ代後半には低電圧化は鈍足化し微細化ではむしろリーク電流による消費電力増が効いてくるようになった。
電源装置は、元々効率があまり良くなかった時代にはむしろ主たる発熱源であり、パソコン筐体内の冷却は昔は電源を主に設計されていた。効率は向上したが、前述のCPUや後述のグラフィックプロセッサにより、また内蔵される機器の多種多様化などにより消費電力が増加したためそれを供給する電源の発熱も増加し、電源装置の冷却の必要性は変わらなかった。また、他の機器によって熱を持った空気がトラブルの原因となることから、冷却を独立させることが重要となった。
ビデオカードに搭載されるグラフィックプロセッサも、性能向上によりCPUと変わらない程の熱を発するようになり、冷却が必要になった。
以上のように、パーソナルコンピュータでも強力な強制冷却を必要とするようになったため、その騒音が問題点となった。
特にDVDやTVなど、マルチメディア機能がパソコンに搭載されるようになって以降は、快適な視聴環境の指標としてパソコンの静音性は、性能の一指標として扱われるようになった。メーカー製パソコンにおいても、静音性のあるパソコンを製造するメーカーが近年あらわれており、具体的に音圧レベル(dB単位)を公開しているモデルのあるメーカーも幾つかある。
自作パソコン愛好家の中でも性能よりも静音性を重視する層が一派をなしており、そういった静音派向けの雑誌も販売されている。前述のような視聴覚用途以外に、俗に自宅サーバ等と言われる、住宅内で稼働させ続ける用途においても静音性を重視することがある。また、周辺機器でも、たとえばヤマハのルータのようにファンレス化している例がある。
パソコンの静音化には、パソコンの用途によってその実現性が大きく分かれる。
まず最新の性能を備えた情報の高速処理が可能なパソコンでは冷却処理の必要性のさらなる増大は避けられない状態にあるので、騒音の原因となっている空冷扇風機の音を減らさなければならない。この場合に初期には放熱板(ほうねつばん)の体面積を大きくし空冷の必要を減少させた上で扇風機の設計を変えて同じ空冷効果を少ない音で実現してきた。ただしこの場合には扇風機や放熱板が大きく場所を取る為にパソコン本体の体積の増大を生んだ。またこのために内部の部品の位置の設置に関する風通しの工夫も必要となってきた。最近では、パソコンのCPUの高速化による電力消費とそれに伴う発熱の増大に空冷の消音化では物理的に対応出来なくなってきた事もあり、空冷でなくより高価で複雑な水冷処理が施されるようになってきている。よって最近では、冷却機能そのものが最新鋭のパソコンの機能および出費の大きな部分としてその重要性が増大してきている。
一方で、元々パソコンの駆動音の上昇の原因は、最新のパソコンゲームに対処する必要性から起こったものであり、このような用途が必要で無く、インターネットを含めたマルチメディア機能(ブラウザー、動画処理、スカイプなど)と基本的な事務的処理用ソフト(ワープロや表計算)やサーバーとしてのみの使用が目的であれば、全く逆の発想でパソコンの静音化が可能である。
これはパソコンの情報処理速度を下げて、空冷の必要を下げる事によって静音化を実現させるというものである。この場合には、やり方によれば上記の高性能パソコンの冷却方法を一切使わず、放熱板(ほうねつばん)だけで熱処理を行い、完全な無音化を目指す事も可能である。もともとパソコンゲーム市場が欧米に比べて著しく小さい日本では特に注目されている静音化の方法である。ただし、日本の夏の気温は日によれば四十度近く上昇する場合があり、このような環境で空冷機能が皆無の場合は、問題が発生する事もあるので注意が必要である。
具体的には、周期数が最速のCPUではなく、中速あるいは低速のCPUを設計の段階でその処理をさらに効率化して、同じ内容の機能を少ない情報処理量で実現する事によって必要となる電気の消費量とそれに伴う発熱を下げる。それによって空冷の必要性を下げる、あるいは放熱板だけで低温化を実現し、空冷の必要性を無くしたCPUが開発されるようになった。インテル社のAtom、AMD社のAthlonNeoやVIA社のVIANanoやDM&P Electronics社のVortex86がこれに当たる。また、電力の消費が少ないので、電源の空冷やケースの換気用の空冷も必要としない。ゲーム用ではないので、高性能のグラフィックカードも必要でなく、マザーボードに組み込まれているもので代用する。このCPUでパソコンを組み上げると、電源、CPU, グラフィックカードの総てで空冷が必要無くなり、さらにこれにハードドライブの代わりにFlashCardなどを使えば、駆動部分がパソコンから消滅する。これによって無音パソコンが実現する。またFlashCardではなく、既存のHDを使う場合もCacheやメモリーの容量を上げてHDアクセスを減らす事で消音化を行う事も可能である。さらに、結果として、場所を取る扇風機が無くなり、さらに、換気のためにスペースを取る必要も無くなる事から、ケースが小さくてすみ、結果として辞書程度の大きさの省スペースパソコンとしても機能する。現在は省スペースパソコンは、ほとんどの場合は、小さな扇風機を使った静音あるいは空冷を一切行わない無音パソコンである。また低機能化により静音化を実現しているので出費が少なくて済むという利点もある。
このようなパソコンの開発の背景となったのはラップトップパソコンである。小型化、薄型化が重要なラップトップではCPUの発熱から生ずる問題は重要な課題であり、またラップトップはゲームなどの用途には不向きな為、CPUのメーカーはあくまでも事務処理に主眼をおいたラップトップ用の低発熱のCPUをこれまで開発してきた。一方で、携帯電話機が高機能化する過程でその機能的内容がコンピューターに近いものになると、携帯電話のパソコン化がおこる。特に携帯電話においてはその用途から空冷などは問題外であり、この場合は無音を前提としたCPUがパソコン用のCPUとは別路線で開発されてきた。
さらに近年、ビジネス用に商品開発されたラップトップに対してインターネットとマルチメディア機能に特化した小型のネットトップが新たな商品として開発されるようになる一方で、携帯電話では、スマートフォンと呼ばれる事実上パソコンに近い携帯電話が開発されている。近年では、パソコンでインターネットを使っての通話が可能であり、小型パソコンと携帯電話の垣根そのものが曖昧になってきている。インターネットなどのマルチメディアのソフトの使用の利便さは、パソコンのCPUの速度ではなく、あくまでもインターネット通信の速度がその利便性の要となる為、このような市場の流れのなかで、これまでの高速化を至上としたCPUの開発とは別にあくまでも便利性(小型・無音・軽量)に特化した新たなパソコン用のCPUが開発されるようになった。このように静音化に特化したCPUを使ってマルチメディアやサーバー用に特化したネットトップやスマートフォンなどの新たな商品区分が生まれるなか、前世紀のパソコン市場は高性能至上主義であったが、最近ではマルチメディア用、サーバー用、ゲーム用、仕事用、外出用などの違った用途に合ったパソコンを独自で組み立てる消費者も存在する。
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