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ウィルティンガーの微分
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一変数および多変数の複素解析において、ウィルティンガーの微分(英: Wirtinger derivative, ときに Wirtinger operator[1] とも)は、複素多変数関数論に関する研究において1927年に導入したヴィルヘルム・ヴィルティンガー (Wilhelm Wirtinger) の名前にちなんでおり、正則関数、反正則関数、あるいは単に複素領域上の微分可能な関数に適用したときに、1つの実変数に関して通常の微分と非常によく似た振る舞いをする、一階の偏微分作用素である。これらの作用素によって、そのような関数に対する微分学の、実変数関数に対する通常の微分学と完全に類似した、構成ができる[2]。

導入
要約
視点
複素数 z ∈ C を実部と虚部に分解して z = x + iy と書き、C の適当な領域 G 上の実可微分関数 f = u + iv: G → C に対し、偏微分
を考えることができる。座標関数として x, y ではなく z = x + iy, z = x − iy を考えるとき、これとは別の偏微分作用素としてヴィルティンガー微分が定義されるが、複素数値関数を実部と虚部に明示的に分けずとも計算できるため扱いはより平易なものとなる。
と書くとき、z = x + iy, z = x − iy とすれば微分小に関して
であり、これをもとの全微分に代入して整理したものを形式的に
と書けば、各係数
がヴィルティンガー微分と呼ばれるものである[3]。しばしば ∂f⁄∂z および ∂f⁄∂z をそれぞれ ∂f および ∂f とも書き、また作用素 ∂ はコーシー–リーマン作用素とも呼ばれる。
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定義
一変数の場合
定義1. 複素平面 を考えよう。ウィルティンガーの微分は次の一階線型偏微分作用素として定義される:
明らかに、これらの偏微分作用素の自然な定義域は領域 上の 級関数の空間であるが、これらの作用素は線型であり定数係数であるから、超関数の各空間にただちに拡張できる。
多変数の場合
定義2. 複素数体上のユークリッド空間 を考えよう。ウィルティンガーの微分は次の一階行列線型偏微分作用素として定義される:
一変数のときと同様これらの偏微分作用素の自然な定義域は領域 ⊆ ℝ2n 上の 級関数の空間であるが定数係数の線型作用素のため超関数の空間へと拡張できる。
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基本的な性質
要約
視点
この節以降 は複素ベクトルであり ただし , は実ベクトルで n ≥ 1 とする。また、部分集合 は ℝ2n あるいは ℂn の領域とする。証明は全て定義1、定義2、そして(常あるいは偏)微分の対応する性質の容易な結果である。
線型性
補題1. とし、 を複素数とすると、 に対して、以下の等式が成り立つ
積の法則
補題2. であれば、 に対して、積の微分法則が成り立つ
この性質によってウィルティンガーの微分はちょうど通常の微分のように抽象代数学的視点の微分であることに注意。
チェインルール
これは一変数と多変数とで異なる:n > 1 に対して完全な一般性でチェインルールを表現するには2つの領域 および と自然な滑らかさの要求を満たす2つの関数 および を考える必要がある[4]。
一変数の場合
補題3.1 および であれば、チェインルールが成り立つ
多変数の場合
補題3.2 および であれば、 に対し、以下の形のチェインルールが成り立つ
共役
補題4. であれば、 に対して、以下の等式が成り立つ
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例
- f(z) が z と z の多項式であるとき、z, z を独立変数と思って形式的に偏微分すればよい。例えば、
- f が正則であるとき、f ′ = ∂f である。
- コーシー・リーマンの方程式が成り立つことと、∂f = 0 となることは同値である。
- ∂∂ = ∂∂ = (1/4)Δ, ここで Δ = ∂2/∂x2 + ∂2/∂y2 はラプラシアン。
- 正則関数を実部・虚部に分け f = u + iv とすると、Δf = 4∂∂f = 0, したがって Δu + iΔv = 0 となるから、Δu = Δv = 0, すなわち u と v は調和であることがわかる。
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関連項目
- コーシー・リーマンの関係式
- コーシー–リーマン関数 (CR-関数)
- ドルボー複体
- ドルボー作用素
- 多重調和関数
脚注
参考文献
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