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エウトレタウラノスクス
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エウトレタウラノスクス(学名:Eutretauranosuchus)は、後期ジュラ紀の北アメリカ大陸に生息した、ゴニオフォリス科に属する絶滅したワニ形上目の属。化石はアメリカ合衆国ワイオミング州やコロラド州から産出している[1]。
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発見と歴史
タイプ種 Eutretauranosuchus delfsi はエドウィン・デルフスが1957年にコロラド州に分布するモリソン層から発見し、チャールズ・ムックが1967年に記載した[2]。化石はほぼ完全な頭骨と複数の四肢の骨から構成されている[3]。
Eutretauranosuchus という属名は「二重に穴の開いた口蓋」にちなんでおり、種小名はデルフスへの献名である[4]。
ムックは E. delfsi のタイプ標本がそれまでに記載されていた他の中鰐類と大きく異なることに気付いた。タイプ標本の内鼻孔はそれまでに記載されていた同サイズの標本よりも顕著に長く、この極端に伸長した内鼻孔を以て新種として判断された。また、ムックは内鼻孔の前方に口蓋突起で分けられた小さな開口部が位置していることも記載し、突起が鼻腔内に入っていたと仮説を立てた。ムックによると、これらの特徴はゴニオフォリス科の間での幅広い特殊化を示唆しており、記載された標本が新属のホロタイプ標本であることを示唆してもいる[3]。
後の研究で、追加の鼻の開口部についてのムックの原記載は不正確であったこと、そしてこの開口部が口蓋骨の張り出しにより内側に極端に狭窄された後鼻孔の一部であることが提唱された。他の E. delfsi、Amphicotylus lucasii、A. gilmorei の標本に共通して見られるように、その砂時計状の形状ゆえに、前方に別の開口部があるように見えたのである[5]。
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特徴
要約
視点

頭骨
E. delfi の頭骨の特徴には、頭骨全体が伸長していて板状の吻部を持つ点、上顎歯槽骨突起の後側方に窪みが存在する点、上顎骨歯の側方のうねりが小さい点、前前頭骨の前方に位置する鼻孔の幅が拡大している点、鼻骨と外鼻孔が接していない点、縁が上側頭窓に沿って上昇している扁平で幅広な innerfenestral bar、鋤骨突起の前方の拡大により形成される nasopharyngeal septum がある[6]。涙骨は長方形で、背側から見ると前後方向の長さが幅の2倍である[6]。涙骨はその長さの全体に渡って前前頭骨により側方から接触されており、前前頭骨はそれにより鼻骨から分けられている[6]。断面が三角形である大型の postorbital bar により、眼窩と下側頭窓が分けられている[6]。方形頬骨は2つの部位を持つ。より小型の背側部は皮膚のピッティング(窪み)を欠いていて、より大型の腹側部はピッティング(窪み)があり、下側頭突起の底半分を形成し、本属の特徴と考えられている顕著な切れ込み(indentation)を形成している[6]。
口蓋骨
ゴニオフォリス科は、扁平な吻部と後側方に位置する上顎骨の窪みにより歴史的に分類されてきたものが多数派であった。そういった標本の口蓋骨の解剖学的特徴は多様性に富んでいた。モリソン層のゴニオフォリス科化石の二次口蓋は大半が不完全であり、口腔と鼻腔が完全には分断されていなかった。ヨーロッパと北アメリカのゴニオフォリス科の属種の間では口蓋骨の解剖学的差異が観察された。G. simus や G.siplingi といったヨーロッパの標本には口蓋骨と上顎突起から形成される骨質の二次口蓋が存在した一方、北アメリカのゴニオフォリス科の上顎骨と口蓋骨は接していなかった。従って、後者では口蓋骨が開いていて、鼻咽頭が腹側に露出していた[6]。
内鼻孔
エウトレタウラノスクスはまだ現生のワニと比較して半水棲適応の途中段階であったが、内鼻孔は既に口蓋の後方まで後退していた。この内鼻孔の後退はワニ形上目の間で進行してきた進化であり、外鼻孔から取り込んだ空気を体内へ送り込む内鼻孔が奥に位置していることによって、水中で開口していても、あるいは獲物を咥えていても呼吸が可能となった。こうした半水棲適応は、より派生的な系統のワニ形類でさらに進行していく[1]。
ポストクラニアルの骨格
ゴニオフォリス科の頭骨よりも後方の骨格は、両凹椎骨、背中に並ぶ2列の鱗板骨、腹側に位置する多角形の皮骨板で特徴づけられる[7]。ゴニオフォリス科は椎骨の前後面が凹状で関節の安定性が低いため、それを背側の巨大な鱗板骨で保護していたと考えられている。ゴニオフォリス科以降の派生的な新鰐類(ベルニサルティアや正鰐類)では、椎骨の関節が安定するにつれて鱗板骨が小型化して列数も増えていく様子が確認できる[1]。
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地理・古環境

エウトレタウラノスクスはコロラド州中央部の上部ジュラ系 Dry Mesa Dinosaur Quarryや、コロラド州西部の Brushy Basin Member、ワイオミング州の Bone Cabin Quarry から発見された種が知られている。これらの層準は全てモリソン層に相当する[6]。他のゴニオフォリス科は前期ジュラ紀や後期白亜紀の層準からも産出しており、北アメリカ大陸・ヨーロッパ・東南アジアに分布していたことが分かっている。また、このグループの標本はエスチュアリーや淡水性の堆積物層からよく発見される[8]。
移動能力や食性
エウトレタウラノスクスを含むゴニオフォリス科のワニ形類は半水棲適応を遂げている[9]。保存されている標本から、エウトレタウラノスクスは平均的な体重が50 - 60キログラムと推定される、中型のワニ形類であったことが示唆されている[9]。モリソン層から発見されているゴニオフォリス科の標本の大きさや筋のある歯からは[3]、エウトレタウラノスクスが昆虫・魚類・小型の爬虫類・哺乳類・恐竜といった獲物を捕食する動物食性動物であったことが支持されている[9]。
系統解析
要約
視点
E. delfsi はエウトレタウラノスクス属で唯一認められている種である。ゴニオフォリス科の他の属には、アンフィコティルス、ゴニオフォリス、スノスクス、カルソヤスクスがいる[4]。
エウトレタウラノスクスの正確な系統的位置は曖昧なままである。Smith et al., 2010 の系統解析では、エウトレタウラノスクスとカルソヤスクスとスノスクスが近縁である証拠が提示された。しかし、多くの論文がエウトレタウラノスクスをゴニオフォリス科内に位置付けることを支持する一方で、ゴニオフォリスとスノスクスのどちらにより近縁なのかという点については議論がある。これとは別に、J.R. Foster, 2006 では、エウトレタウラノスクスはフォリドサウルスやディロサウルス科と最も近縁であるとされ、ゴニオフォリスやベルニサルティアや正鰐類を含むより包括的な分岐群に属するとされた[10]。
三畳紀末の大量絶滅事変と関連する進化史を再評価する研究もある。当該の研究では、ゴニオフォリス科のワニ形類である Calsoyasuchus valliceps が基盤的な系統的位置に就いていることから、ワニ形上目の基底となる数多くのゴーストリネージが存在するはずであると結論付けられている[11]。
以下は、Marco Brandalise de Andrade et al., 2011 に基づくクラドグラム[12]。
新鰐類 |
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出典
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