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オープンソースの離散要素法可視化ソフトウェア
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オープンソースの離散要素法可視化ソフトウェア(おーぷんそーすのりさんようそほうかしかソフトウェア)は、離散要素法(Discrete Element Method、DEM)による数値シミュレーションから得られる粒子群や接触ネットワークなどのデータを、三次元的に表示・解析するためのオープンソースの可視化プログラムの総称である。
DEM 用の「専用」可視化ソフトウェアは少なく、多くの場合はVTK などの標準データ形式に変換した上で、ParaView や VisIt などの汎用科学可視化ソフトウェアが用いられる。[1][2]
概要
離散要素法に基づくシミュレーションでは、数十万から数億個の剛体粒子の位置・速度・回転、粒子間および粒子–境界間の接触力などが時間発展とともに生成される。このようなデータを理解するためには、粒子の三次元配置、速度場、接触ネットワーク、局所密度や応力指標などを視覚的に評価する可視化が重要となる。[3]
多くのオープンソース DEM フレームワーク(YADE、LIGGGHTS、MercuryDPM、ESyS-Particle など)は、シミュレーション結果を VTK、XDMF/HDF5、あるいは専用テキスト形式で出力し、外部の可視化ソフトウェアによる後処理を前提としている。[4][5][6][7]
主な汎用可視化ソフトウェア
ParaView
ParaView(パラビュー)は、Kitware が中心となって開発しているマルチプラットフォーム対応のオープンソース科学可視化アプリケーションであり、大規模データの並列可視化や解析を目的として設計されている。[8][9] ParaView は VTK 形式をはじめとする多くのデータ形式を入力として、粒子を球状グリフとして表示したり、接触力や速度などのスカラー場・ベクトル場を色付けや矢印で可視化したりすることができる。LIGGGHTS や ESyS-Particle など複数の DEM コードが標準のポストプロセッサとして ParaView の利用を推奨している。[10][11]
OVITO
OVITO は「Open Visualization Tool」の略称であり、原子・分子動力学や DEM など粒子ベースシミュレーションの可視化と解析を目的としたソフトウェアである。[12] OVITO Basic はオープンソースのコードを基盤とした無償版であり、LAMMPS 互換 dump、XYZ、VTK などの粒子データ形式に対応している。[13] 「モディファイア」と呼ばれる処理パイプラインを通じて、粒子のフィルタリング、クラスタ解析、局所配位数や密度の評価などを GUI 上で行うことができ、DEM による粒状体挙動の解析にも利用されている。[14]
VisIt
VisIt(ビジット)は、米国ローレンスリバモア国立研究所により開発されたオープンソースの可視化・解析ツールであり、大規模並列計算で得られたデータの分析を目的として設計されている。[15][16] 格子データと粒子データを同時に扱うことができるため、大規模な DEM シミュレーションやCFDとの連成計算などの可視化に利用される。
その他
DEM のポストプロセスには、上記のほかに Python ベースの Mayavi、VTK ライブラリを直接用いた自作可視化ツール、分子動力学向けの VMD (Visual Molecular Dynamics) などが利用される場合もある。[17][18] なお VMD は無償で配布されているが、厳密な意味でのオープンソースではない。
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DEM ソルバーとの関係
多くのオープンソース DEM ソルバーは、簡易な組み込みビューアと、ParaView や OVITO など外部可視化ソフトウェアの併用を前提として設計されている。[19][20]
YADE
YADE(Yet Another Dynamic Engine)は、連続体–離散体の力学問題を扱うために開発されたオープンソースの DEM フレームワークであり、C++ コアと Python インターフェースから構成される。[21] YADE には Qt/OpenGL によるインタラクティブな 3D ビューアが統合されており、計算中の粒子配置や接触力をリアルタイムで観察できるほか、結果を VTK 形式に出力して ParaView など外部ソフトで再可視化することも可能である。[22]
LIGGGHTS と CFDEM
LIGGGHTS は、LAMMPS をベースに拡張されたオープンソースの DEM コードであり、粉体工学やプロセス工学における粒状体挙動の解析に広く用いられている。[23] LIGGGHTS は粒子情報をテキスト dump 形式で出力し、付属ツールやサードパーティ製ツールによって VTK 形式に変換した後、ParaView などの可視化ソフトウェアで表示するワークフローが公式に案内されている。[24] LIGGGHTS と OpenFOAM を連成した CFDEM(CFD–DEM 統合ソルバー)においても、可視化には主として ParaView が用いられる。[25]
MercuryDPM
MercuryDPM は、バルク材料や粉体の挙動を対象としたオープンソースの離散粒子法 (Discrete Particle Method) コードであり、複雑な壁形状や多体境界条件を扱うための機能を備える。[26] MercuryDPM のマニュアルでは、シミュレーション出力の可視化に ParaView や VMD などのツールを使用することが推奨されている。[27]
ESyS-Particle
ESyS-Particle は、地殻変形や岩盤破壊などの問題に適用されるオープンソースの DEM コードであり、MPI による分散並列計算を前提とした設計になっている。[28] ESyS-Particle では、チェックポイントファイルから粒子情報を抽出して VTK の非構造格子形式に変換するツールが提供されており、その結果を ParaView などの可視化ソフトで表示する手順が公式に示されている。[29]
その他のフレームワーク
Project Chrono などのマルチボディダイナミクス向けオープンソースフレームワークでも、粒子接触を扱うモジュールと OpenGL ベースのビューアが提供されており、DEM 的な接触問題の可視化に利用されることがある。[30]
利用分野
オープンソースの DEM 可視化ソフトウェアは、粉体工学、地盤工学、鉱業、岩盤力学、製薬プロセス、食品工学など、粒状体の挙動が重要となる分野で利用されている。これらの分野では、DEM によって計算された粒子配置や応力分布を三次元的に可視化することで、充填性、流動性、破壊パターンなどを定性的・定量的に評価することができる。
関連項目
- 離散要素法
- 科学可視化
- 可視化ソフトウェア
- オープンソースソフトウェア
- 数値流体力学
- 粒状体
脚注
参考文献
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