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ギンザメ目

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ギンザメ目
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ギンザメ目 Chimaeriformesは、軟骨魚綱全頭亜綱(ぜんとうあこう)の下位分類群。3科6属に約50種が含まれ、日本近海には11種が生息している。現在は50種ほどの小さな分類群だが、化石記録によると多様で豊富な分類群であったとされる。板鰓亜綱との共通祖先は約4億年前に存在した[2]。現生種は多くが深海に生息する[3]

概要 ギンザメ目, 分類 ...
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形態

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吻部の電気受容器が目立つ。

頭部は大きく尾は先細りで、体は柔らかいサメのようである。全長は150 cmに達する種もいる。骨格は軟骨で構成される。皮膚は滑らかで、鱗や皮歯は無い。しかし孵化したばかりの稚魚の背中には皮歯の列があり、雄の生殖器は鋸歯状である[4]。鰓弓は鰓蓋に包まれており、胸鰭前部に開口部がある[5]総排出腔をもつ板鰓類とは異なり、肛門と生殖器の開口部は別々である。

胸鰭を用いて水中を羽ばたくように泳ぐ。胸鰭の後方には小さな腹鰭があり、臀鰭がある属も知られる。ギンザメ科、テングギンザメ科の尾鰭は薄くて鞭状であり、上下が対称的である。ゾウギンザメ科の尾鰭はサメと同様に異尾である。背鰭は2基あり、第一背鰭は大きな三角形で、第二背鰭は小さい。防御のため、背鰭の棘に毒をもつ種もいる[4]

多くの種では吻に感覚器官があり、獲物の電気信号を感知している[5][6]。口蓋方形軟骨が脳函と融合している。後頭部は椎骨の複合体に支えられており、背鰭棘とも接続している[4]

歯は6枚の歯板から成り、生涯成長し続ける。下顎の先端に一対、上顎に沿って二対がある。これらの突き出た歯板によって獲物を粉砕する[4]。歯の大部分は象牙質だが、プレロミンというエナメル質のように固い部分がある。プレロミンはシートまたはビーズ状に配置され、と同様に間葉由来の組織によって沈着する。またエナメル芽細胞由来の物質によるものでなく、他の動物では歯の中で結晶化する物質により硬化する[7]

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生態

北極海南極海を除く全世界の温帯海域に分布し、水深2,600 mまでの海底に生息しており、水深200 mより浅い場所ではほとんど見られない。しかしゾウギンザメカイブツギンザメミダレボシギンザメは浅い場所でみられることが多く、水族館でもよく飼育される[8]。主に甲殻類、その他にもクモヒトデ軟体動物を捕食する[9]。現生種は底生生物を粉砕して捕食しているが、石炭紀には遊泳性の吸引捕食者も知られていた[10]。雄にはクラスパーがあり、交尾を行う。卵は細長い紡錘形である[1]。また交尾を補助するために特殊な構造を持っている[5][11]。額から棒状の突起を伸ばし、交尾中に雌の胸鰭を掴む。また腹鰭の前の袋の中には鋸歯状の突起があり、交尾中に雄を雌に固定する。クラスパーは軟骨で融合され、先端で分岐して葉状になっている[4]。カイブツギンザメの鰓にはChimaericola leptogaster という単生綱寄生虫が寄生する。

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保全と脅威

一部の種は混獲乱獲の影響を受けている。IUCNによれば、4種が危急種としてリストされ、さらに4種が近危急種としてリストされ、さらに多くの種がデータ不足とされている。多くの種は生息範囲が限られており、混獲報告は通常正確さが不十分であるため、混獲の実態は不明である。データの欠如により、個体数の減少が見過ごされている種がいる[12]

沿岸に生息するいくつかの種、例えばゾウギンザメ科、Hydrolagus bemisiHydrolagus novaezealandiae などは、肉を目的として漁獲されている。現在の保護計画が制定される前の20世紀には、ゾウギンザメが深刻な乱獲を受けた。Neoharriotta pinnata は肝油を目的としてインド沿岸で標的にされており、最近の捕獲率の低下は個体数の激減を示している可能性がある。Callorhinchus callorynchusNeoharriotta carri、カイブツギンザメ、ギンザメダマシ、ミダレボシギンザメ、およびHydrolagus melanophasma は生息域の特定の地域で混獲率が10%を超えており、急激に減少している種もいる。サメのように鰭を狙った漁業は行われていない[12]

もう一つの脅威は、沿岸の産卵場所や深海のサンゴ礁の生息地の破壊である。ゾウギンザメなど沿岸に近い場所に生息する種は、気候変動の影響を受けやすい。強い嵐や海水温の上昇により、孵化を完了するために必要な安定した環境が破壊され、卵の死亡率が増加すると予測されている[12]

分類

要約
視点

21世紀初頭には、深海探査の発達のため多くの新種が記載された[3]。8%の種が絶滅の危機に瀕している[13]

ギンザメ亜目 Chimaeroidei Patterson, 1965

ゾウギンザメ科 Callorhinchidae

ゾウギンザメ科 Callorhinchidae は1属3種。全て南半球にのみ分布しており、日本近海では見ることはできない。鉤状の吻をもつ。

ギンザメ科 Chimaeridae

ギンザメ科 Chimaeridae は2属約40種を含む。日本近海にはギンザメなど8種が生息する。ギンザメ科はゾウギンザメ科・テングギンザメ科のような特徴的な構造の吻をもたない。

  • ギンザメ属 Chimaera
    • Chimaera Chimaera cubana Howell Rivero, 1936
    • ジョルダンギンザメ Chimaera jordani Tanaka, 1905
    • Bight ghostshark C. lemures (Whitley, 1939)
    • Carpenter's chimaera Chimaera lignaria Dider, 2002
    • カイブツギンザメ Rabbit fish Chimaera monstrosa Linnaeus, 1758
    • ギンザメダマシ C. ogilbyi (Waite, 1898)
    • シロブチギンザメ Chimaera owstoni Tanaka, 1905
    • Chimaera panthera Dider, 1998
    • ギンザメ Silver chimaera Chimaera phantasma Jordan & Snyder, 1900
  • アカギンザメ属 Hydrolagus
    • Smalleyed rabbitfish H. affinis (de Brito Capello, 1868)
    • African chimaera H. africanus (Gilchrist, 1922)
    • イトヒキギンザメ H. alberti Bigelow et Schroeder, 1951
    • Hydrolagus alphus
    • ココノホシギンザメ H. barbouri (Garman, 1908)
    • Pale ghost shark Hydrolagus bemisi
    • ミダレボシギンザメ Spotted ratfish H. colliei (Lay & Bennett, 1839)
    • Philippine chimaera H. deani (Smith & Radcliffe, 1912)
    • ニジギンザメ H. eidolon (Jordan & Hubbs, 1925)
    • Hydrolagus lusitanicus
    • オオメアカギンザメ Bigeye chimaera Hydrolagus macrophthalmus F. de Buen, 1959
    • Striped rabbitfish Hydrolagus matallanasi
    • Galapagos Ghost Shark Hydrolagus mccoskeri
    • ムナグロギンザメ Large-eyed rabbitfish H. mirabilis (Collett, 1904)
    • アカギンザメ Spookfish H. mitsukurii (Jordan & Snyder, 1904)
    • Dark ghost shark H. novaezaelandiae (Fowler, 1911)
    • ムラサキギンザメ Purple chimaera H. purpurescens (Gilbert, 1905)
    • Hydrolagus pallidus
    • Pointy-nosed blue chimaera Hydrolagus trolli Didier & Séret, 2002
    • Hydrolagus waitei

テングギンザメ科 Rhinochimaeridae

テングギンザメ科 Rhinochimaeridae は3属8種。日本近海にはアズマギンザメヨミノツカイクロテングギンザメテングギンザメの4種が生息する。著しく伸長した吻をもつ。

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進化

要約
視点

良質な化石は不足しており、DNA解析によって種分化が研究されている[16]全頭亜綱は3億8000万年前のデボン紀に板鰓亜綱と分岐したと考えられている。既知の最古の種はロシアの前期石炭紀の地層から発見された Protochimaera であり、ギンザメ亜目と密接に関連している[17]。現生種に起因する最古の化石はヨーロッパの前期ジュラ紀の地層から得られたものだが、後期三畳紀のロシアからはテングギンザメ科に似た、ニュージーランドからはゾウギンザメ科に似た卵殻の化石が発見されている[18]。現生種と異なり、中生代の種は浅い水域に生息していた[19]

以下の絶滅分類群が知られる。

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脚注

関連項目

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