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サハの電離公式
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サハの電離公式(サハのでんりこうしき)は、気体の電離度を気体の温度、密度、イオン化エネルギーの関数として求めたものである。インドの物理学者メグナード・サハによって求められた。
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を電離度(電離した分子の比率)とすればサハの公式は
とあらわされる。ここでT は温度、h は プランク定数 、nは中性分子とイオンの数密度の和、は電子の数密度、 はイオン化エネルギーである。
X=1 は気体中の分子がすべて電離して中性分子がなくなった状態を示し、完全電離と呼ばれる。上記公式から温度 T が十分に高いと完全電離になることが分かる。これは構成粒子の運動エネルギーが充分に大きくてイオン化エネルギー の壁を楽に乗り越え、かつ電離を起こす粒子間の2体衝突の頻度が高くなるためである。
一方この公式から、密度 n が十分に小さくなっても完全電離になることが分かる。これは密度が十分に小さくなるとイオンと電子の衝突の頻度が低くなり、電離した粒子が中性分子に戻れなくなるためである。このため、極めて稀薄な宇宙空間の星間ガスの類は多くは完全電離プラズマの状態にある。
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発見の経緯
恒星スペクトルの詳細な研究が勃興したのは19世紀後半のことであった。1860年代にアンジェロ・セッキが恒星をスペクトルにより分類したのを皮切りに、多くのグループが恒星の分類に取り組むようになっていった。この結果、1900年には23もの異なる体系が使われるようになっていた。
→詳細は「スペクトル分類」を参照
こうしたスペクトル研究の中で、フラウンホーファー線の内いくつかの波長の異なる吸収線が同一の元素の吸収によりもたらされたものである、ということが実験室におけるアーク放電や火花放電による研究により確認されていた。
この複数ある吸収線のうち、彩層の上部からは特に高い強度の吸収線が得られることが知られていた。当初ノーマン・ロッキャーはこの彩層上部においてよく得られる吸収線を増強線(enhanced lines)と命名していた。[1]
この問題に対してKosselやゾンマーフェルトなどにより原子のイオン化(電離)によるものだという指摘がなされていた。[2]またLorenseとFowlerなどはカルシウムの吸収線の通常線であるg線と増強線であるK線およびH線とのリュードベリ式を比較し、K線およびH線においてはカルシウムがイオン化していることを示していた。[3]
サハは物理化学においてよく知られていた化学平衡というアイデアを原子の電離に拡張した。元の原子と電離したイオン、そして電離により放出された電子(原子量1/1836の単原子気体と仮定)の三者による定圧平衡式(Equation of the Reaction iso-bar)を考えた。[4] この圧力平衡を密度に置き換えたものが今日知られるサハの式である。サハは化学者のネルンストと交流があり、そこから「化学分解」を「電離」に置き換えるという着想を得たことを認めている。[5]
サハはこの式をカルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属および水素、ヘリウムに適用し、彩層上部ではこれらのアルカリ土類金属は電離していること、水素は太陽大気のどこにおいても電離していること、逆にヘリウムは太陽大気のどこにおいても電離していないことを理論的に示した。[6]
その後、セシリア・ペインにより実際の恒星について測定データをもとにした厳密な計算がなされた。
→詳細は「セシリア・ペイン=ガポーシュキン」を参照
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参考文献
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