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ザイフェルト–ファン・カンペンの定理

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数学において、ザイフェルト-ファン・カンペンの定理: Seifert–van Kampen theorem)とは、代数トポロジーにおける定理であって、位相空間 基本群の構造を、 を被覆する弧状連結な開部分空間の基本群によって表現するものである。この名前はヘルベルト・ザイフェルトエグバート・ファン・カンペンに因む。しばしば単にファン・カンペンの定理とも呼ばれる。これはしたがってより単純な空間から組み立てられた空間の基本群を計算する為に使用することができる。

基本群に関するファン・カンペンの定理

要約
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[1]

を位相空間であって、2つの弧状連結な開部分空間 の和集合になっているものとする。 は弧状連結かつ非空と仮定し、 の点で、基本群の基点に用いられるものとする。 から への包含写像は群準同型 誘導する。すると は弧状連結であり、 は可換なプッシュアウト英語版図式を成す:

Thumb

自然な射 は同型である。つまり の基本群は の基本群の自由積を で融合したものにほかならない[2]

通常、包含によって誘導される射は単射ではなく、この言明のより精密なバージョンは群のプッシュアウト英語版の言葉を用いて書かれる。

基本亜群に関するファン・カンペンの定理

円は代数トポロジーに於ける最も重要かつ基本的な例であるが、残念ながら上で与えた定理は円の基本群を計算できない。その理由は、円は連結な共通部分を持つような2つの開集合の和集合としては実現し得ないということにある。この問題は、幾何学的な状況に応じて選択をした基点の成す集合 上の基本亜群 を用いることによって解決することができる。円の場合には、2つの基点を選べばよい[3]

この亜群 の点を結ぶ 内の曲線達の両端に相対的(両端を固定する)ホモトピー類からなる。とくに、可縮空間で、 の相異なる2点からなるとき、 としばしば書かれる亜群に同型であることが容易に見て取れる。この亜群は2つの頂点と各頂点間にちょうどひとつの射からなる。この亜群は、群の理論に於ける整数の成す群が果たすのと同様の役割を、亜群の理論に於いて果たす[4]。亜群 はまた亜群のホモトピーの概念を考えることを可能にする:つまりこれは亜群の圏に於ける単位区間対象である。

Thumb
2つの非連結空間の連結な和集合と基点集合

亜群の圏は全ての余極限、とくに全てのプッシュアウトを持つ。

定理. 位相空間 が2つの部分空間 の内部によって被覆され、基点集合 の全ての弧状連結成分と交わりを持つとする。このとき の全ての弧状連結成分と交わり、かつ包含によって誘導された射からなる図式
Thumb

は亜群の圏のプッシュアウト図式となる[5]

この定理は、基本亜群 の完全な決定に際し、トポロジーから代数への移行手段を与える。代数および組合せ論を、幾つかの基点における基本群の決定に用いる必要がある。

この定理のひとつの解釈は、これがホモトピー1-型を計算するというものである。

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同値な定式化

要約
視点

組合せ群論英語版の言葉を用いるなら、 が位相空間、 の弧状連結な開部分空間、 が空でなく弧状連結、そして ならば、 の(必ずしも単射ではない)準同型 による融合積である、と言うことができる。群の表示

が与えられたならば、その融合積は次のように表示できる[6]

圏論では、 は群の圏における次の図式のプッシュアウト英語版である:

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要約
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2-球

ファン・カンペンの定理はより簡単な空間に分解できるような位相空間の基本群の計算に利用できる。例として球 を考えよう。開集合 を選ぶ。ここで ns はそれぞれ北極と南極を表す。すると、A, B および AB は弧状連結な開集合であることが分かる。よって、AB から AB への包含と、AB から への包含からなる可換図式が存在すること、および、それに対応する各々の部分空間の基本群の間の準同型からなる図式が存在することが分かる。ファン・カンペンの定理を適用することによって

という結果を得る。しかし、AB はどちらも (これは単連結)に同相であるから、AB はともに自明な基本群を持つ。このことから明らかに、 の基本群は自明である。

空間の楔和

2つの基点付き位相空間 が与えられると、その楔和 の2つの基点を同一視する商を取ることで構成できる。

点(がひとつだけからなる空間)の基本群は自明であるから、ファン・カンペンの定理は

が群の同型であることを示す。

向き付けられた種数 g の曲面

より複雑な例としては種数 n の向き付け可能曲面 S の基本群(種数 n の曲面群としても知られる)の計算がある。S はその基本多角形英語版を使って構成できる。まず1つ目の開集合 A を決める為に、この多角形の中に収まるような円盤を取る。そして BA の中心点の S における補集合とする。すると AB の共通部分は円環領域となる。これは円周とホモトピー同値であり同じ基本群を持つことが知られている。よって (これは整数の成す加群)であり、 である。すると から への包含はどの生成元も自明な元に送る。しかし、 から への包含は自明でない。このことを理解する為に、まず を計算しなければならない。これは S から一点を除いたもの)を基本多角形の辺へと変形レトラクトすることができるから容易である。この辺は

とラベル付けられているとしよう。この(変形レトラクトされた後の)空間は 2n 個の円周の楔和円を束ねたブーケとも呼ばれる)であることが知られており、これはさらに 2n 個の生成元を持つ自由群と同型な基本群を持つことが知られている。この場合、それらの生成元は(上でラベル付けしたところの)辺たちによって表現できる:。いまやファン・カンペンの定理を適用するに十分な情報を得た。生成元はループ であり(A は単連結であるから生成元を持たないことが帰結する)、そしてちょうどひとつの関係式

がある。この生成元と関係式とを用いて、この群は

と記述できる。

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一般化

後述の通り、この定理はロナルド・ブラウンによって、基点集合 上の基本亜群 を用いることで、不連結な場合へと一般化された。任意の被覆に対する(ただし はその被覆に含まれる任意の3つの集合の共通部分と交わるという制限のもとでの)この定理はブラウンとアブドゥル・ラザク・サラーの論文で与えられている[7]

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関連項目

  • 高次代数
  • 高次圏論
  • 擬円英語版
  • ロナルド・ブラウン (数学者)英語版

脚注

参考文献

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