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タクシー数
2つの立方数の和として n 通りに表される最小の正の整数 ウィキペディアから
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n 番目のタクシー数(タクシーすう、taxicab number、Ta(n)もしくはTaxicab(n)と表記される)とは、2つの立方数の和として n 通りに表される最小の正の整数と定義される。1954年にゴッドフレイ・ハロルド・ハーディとエドワード・メートランド・ライトが全ての正の整数 n に対し、Ta(n)が存在することを示した。その証明を利用すれば「2つの立方数の和として n 通りに表される正の整数」を見つけることはできる。ただしそれが最小の数であるかは保証されていないため、Ta(n)であるとは限らない。
「タクシー数」と言う名前はハーディが乗ったタクシーの番号1729についてそれがTa(2)であることをシュリニヴァーサ・ラマヌジャンが指摘したエピソードから来ている(後述)。そのため、この数の問題とタクシーとの関連は全く無い。
なお、ここでの立方数は正の整数のみを考える。0と負の整数も含めるときは、名前の「taxicab」をひっくり返してキャブタクシー数と呼ばれる。
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概要
要約
視点
与えられた正の整数 N に対し、不定方程式
の整数解 y ≥ x > 0 の個数は明らかに有限個である(0 < y3 < N であるため)。これを s(N) とおく。Ta(n) は s(N) ≥ n となる最小の N である。
任意の n に対して s(N) ≥ n となる整数 N が存在することが知られており、したがって Ta(n) は存在する。実際 m を正の整数とすると
は楕円曲線なので、階数が正ならば無限個の有理点を持つ。さらに、このとき有理点の全体は実数点の中で稠密となる。よって、その中には無限個の正の有理点が存在する。それらから任意の個数の有理点 を選んで分母を払うことにより
が成り立つ。 ととれば が成り立つ。m = 7, 9 などに対して上記の曲線の階数は正なので、ここから s(N) がいくらでも大きなものを得ることができる。よって任意の正の整数に対して Ta(n) は確かに存在する。
一般に F が3次形式で
が階数 r の楕円曲線を与えているとき、
の解の個数が > c(log m)r/(r+2) となる m が無数に存在する(c> 0 は F と m0 のみに依存し d には依存しない)。
は階数3を持つことが知られている(実際 (17/2, -7/2), (163/19, 56/19), (3439/223, -3220/223) が生成元となる)。よって
となる N が無数に存在する[1]。したがって
が無数の n に対して成り立つ。
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既知のタクシー数
要約
視点
現在までに以下の6つのタクシー数が知られている(オンライン整数列大辞典の数列 A011541参照)。
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タクシー数の上限
要約
視点
以下の数字は7通り~12通りの2つの立方数の和で表せる数である。これらがタクシー数そのものである可能性はあるが、証明はされていない。つまり、Ta(7)からTa(12)の上限となる。
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発見の歴史
要約
視点
ハーディ・ラマヌジャン数として知られるTa(2)は1657年にバーナード・フラン・ベッシーによって他のいくつかの2つの立方数の和で2通りに表せる数とともに見出された[2]。レオンハルト・オイラーは
の有理数解の一般解を与えており、その後アドルフ・フルヴィッツはそれを単純化した[3]:
ただしこの公式から、すべての整数解を与える公式が導かれるわけではない。t, a, b が整数ならばこの公式は整数解を与えるが、それがすべての整数解を与えるわけではないからである。たとえば Ta(2) は (a, b, t) = (10/19, −7/19, −361/42) に対応しており t, a, b が整数であるものからは与えられない(もちろん t, a, b をうまく与えることでどの整数解も得られるが、整数解に対応する t, a, b がどのようなものかは明らかではない)。またオイラーは
を発見している(t = 1 とおくとタクシー数を得る)。
Ta(2) は後にハーディとラマヌジャンのエピソードによって不滅のものとなった。ハーディによれば[4]
「 | 私は彼をパットニーの療養所に見舞ったことを覚えている。私はナンバーが1729のタクシーに乗り、その数は無味乾燥なもののように思え、それが不吉なことの前兆でないことを願っていた。しかし彼は「そんなことはありません、とても興味深い数字です。それは2通りの2つの立方数の和で表せる最小の数です」と返した。 | 」 |
ラマヌジャンは1913年に無限個の整数解を与える公式
を発見し、その後オイラーの一般有理解と等価な一般有理解の公式を得ている。またラマヌジャンの遺稿には
の無限個の整数解を得る(オイラーとは別の)方法が述べられている[5]。
ラマヌジャンやハーディー・ライトがタクシー数の解法を示して以降は、コンピュータによる発見が常となった。ジョン・リーチは1957年にTa(3)を発見した。1991年にはE・ローゼンスティール、J・A・ダーディス、C・R・ローゼンスティールがTa(4)を発見。J・A・ダーディスは1994年にTa(5)を発見し、1999年にデービッド・W・ウィルソンによって確認された[6][7]。Ta(6)はウーヴェ・ホラーバッハによって2008年3月9日にメーリングリストNMBRTHRYに発見が報告されたが[8]、これは2003年に Claude et al. によって99%の確率でTa(6)であろうとされていたものだった[9]。2006年にはクリスチャン・ボワイエによってTa(7)からTa(12)までの上限が与えられた[10]。2008年にはクリスチャン・ボワイエとJaroslaw WroblewskiによってTa(11)からTa(22)までの上限が更新された[11]。
より制限をかけた形でのタクシー問題は、タクシー数がcubefreeである、つまり13以外の立方数で割り切れない場合である。 cubefreeなタクシー数 T が T = x3+y3と書かれるとき、全ての組 (x, y) に対して x, y は互いに素である。先述したタクシー数の中では、Ta(1)とTa(2)だけがcubefreeなタクシー数である。3通りに表される最小のcubefreeなタクシー数は、1981年に大学院生だったポール・ボイタによって発見された(未発表)。これは以下の通りである。
- 15170835645
- = 5173 + 24683
- = 7093 + 24563
- = 17333 + 21523.
4通りに表される最小のcubefreeなタクシー数は、2003年にダンカン・ムーアとスチュアート・ギャスコインによって独立に発見された。以下の通り。
- 1801049058342701083
- = 922273 + 12165003
- = 1366353 + 12161023
- = 3419953 + 12076023
- = 6002593 + 11658843.
(オンライン整数列大辞典の数列 A080642参照)
上記の通り制限のない場合には s(N) はいくらでも大きくできるが、N が立方因子をもたないとき、
の解の個数をどこまで大きくできるかは未だわかっていない。この方程式のあらわす楕円曲線の階数を r(N) とすると
となる絶対定数 c が存在する。 N が大きいときは
が成り立つ[12]。
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脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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