前提
ユークリッド空間内を運動する粒子の時刻 t における位置ベクトルを r (t) とする。関数 r (t) のグラフは粒子の軌道を表す曲線である。
ただし、 r (t) は滑らかな関数であり、
粒子は停止せず軌道は曲がっている (r "(t)×r '(t)(=d2r /dt2×dr /dt)≠0)
と仮定する。
弧長パラメータ
s (t) を弧長、すなわち、粒子が時刻 t までに曲線上を動いた距離

とする。仮定よりr '≠0 なので、t を s の関数として表せ、よって、r をs の関数として r(s)=r(t(s)) と表せる。このように、曲線を弧長でパラメータ表示できる。なお、微分は

と変換できる。
互いに直交する単位ベクトルの微分
曲線上の各点 r (s) で定義された正規直交基底 {
e1(s),
e2(s),
e3(s)
} (動標構(英語版))を考える。それぞれのベクトルは s について微分可能とする。
微分したベクトル
{
de1(s)/ds ,
de2(s)/ds ,
de3(s )/ds
}は、
あるスカラー関数
ω1(s), ω2(s), ω3(s) を使って
…(0)
と表せる。
行列の反対称性の証明
基底の縦表示

を考える。これらの要素のベクトルは基底をなすから任意のベクトルを線形和で表示できる。
よって自身の微分に対しても
…(p1)
となる行列 Ω が存在する。
よって、証明すべきことはこの行列が反対称性 (ΩT=-Ω) を持つことである。
さて、
{
e1(s),
e2(s),
e3(s)
} は正規直交基底なので

となる。
これを式(p1)に適用すると

が得られる。
また、I =Q ・QT の両辺を微分すると、

が導かれる。これより、Ω が反対称性

を持つことが示せた。
反対称行列は3個のパラメータで表せるが、以下に示すように、正規直交基底を適切に選ぶと反対称行列の成分を2個のパラメータで表すことができる。
フレネ・セレ標構
曲線上の各点 r (s) において、3組のベクトル {T, N, B} を以下のように定義する:
![{\displaystyle {\begin{aligned}{\boldsymbol {T}}&\equiv {\frac {\mathrm {d} {\boldsymbol {r}}}{\mathrm {d} s}}\\&={\frac {{\boldsymbol {r}}'(t)}{\left\|{\boldsymbol {r}}'(t)\right\|}}&(1)\\[1.0em]{\boldsymbol {N}}&\equiv {\frac {{\mathrm {d} {\boldsymbol {T}}}/{\mathrm {d} s}}{\left\|{\mathrm {d} {\boldsymbol {T}}}/{\mathrm {d} s}\right\|}}\\&={\frac {{\boldsymbol {r}}'(t)\times ({\boldsymbol {r}}''(t)\times {\boldsymbol {r}}'(t))}{\left\|{\boldsymbol {r}}'(t)\times ({\boldsymbol {r}}''(t)\times {\boldsymbol {r}}'(t))\right\|}}&(2)\\[1.0em]{\boldsymbol {B}}&\equiv {\boldsymbol {T}}\times {\boldsymbol {N}}\\&={\frac {{\boldsymbol {r}}'(t)\times {\boldsymbol {r}}''(t)}{\left\|{\boldsymbol {r}}'(t)\times {\boldsymbol {r}}''(t)\right\|}}&(3)\end{aligned}}}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/15b09655a0633465ef32d41d370f55649f590f3e)
これらは正規直交基底であり、この順に右手系をなすことがわかる。{T, N, B} をフレネ・セレ標構とよぶ。
フレネ・セレの公式
フレネ・セレ標構に対して、動標構の微分の関係式(0)を適用すると、フレネ・セレ標構の定義(2)からω2=0となる。
ω3=κ,ω1=τと置き換えるとフレネ・セレの公式:

が得られる。
κ,τはそれぞれ曲線の曲率、捩率を表し、公式より、

と与えられる。定義により κ >0 である。