2次元ケプラー問題のハミルトニアンは、
を運動量、
を座標とするとき

により与えられる。対応する運動方程式は

である。この方程式は重力源からの距離
がゼロの極限で発散する特異性がある。Levi-Civita変換はこの特異性を除去するような変数変換である。
ステップ1: 正準変換
この系に次の母関数
によって生成される正準変換
を施す[8]。

この正準変換は具体的に次のように表示できる。

次節でこの変換の詳細な性質について見るが、ここでは
が成立することを指摘しておく。さて、
とおくとき、変換後のハミルトニアン
は

であり、運動方程式は

となる[9]。この段階ではまだ
での特異性が残っている。
ステップ2: 時間変数の変換
Levi-Civita変換では物理的な時間
の代わりにfictitious time
を独立変数として扱う。その定義は

である[10]。この変換を行うと、上の正準方程式は

という方程式系へと変換される。これは極限
での特異性を持たない。さらに
が保存量であることから、それが負の値を取る束縛軌道に関しては、これは角振動数
の調和振動子の方程式に等しい。
なお、この運動方程式は形式的に
を正準変数とするハミルトニアン

に対応する正準方程式に (
はもとのハミルトニアン
の符号を反転させたものと解釈するとき) 一致する[11]。