ヴァンデルモンドの行列式は、各行の公比の差積に等しい。具体的には、上記の行列 V に対して

が成り立つ。n = 2, 3 の場合を書き下せば、


である。公式より直ちに分かることとして、x1, …, xn が全て異なるとき、かつそのときに限り、ヴァンデルモンドの行列式は 0 ではない。
公式の証明
この公式は、n に関する数学的帰納法で示すこともできるし、行列式の性質を用いたうまい証明の仕方もある。実際、行列式の交代性(行を入れ替えると行列式は −1 倍になる)と因数定理によって、det V は xj − xi たちを因数に持つことが分かるので、あとは次数と係数を比較すれば、公式が成り立つことが容易に分かる。
以下に、別の証明法の1例として、ある正方行列のある列(行)の各成分に同じ係数を乗じ、別のある列(行)にベクトル的に加算するという操作(行列の基本変形の1つ)を行っても、行列式の値は変わらないという性質と、やはり因数定理および、各項の次数と係数を比較する方法を示す。
正方行列Vは次の形であるとする。

V の行列式は定義により次のようになる。

ここで、Sn は n次対称群(n次置換群)を表し、Sn の元 σ に対して sgn σ は符号数と呼ばれる関数であり、σ がn次交代群(遇置換群)に属していれば 1、そうでなければ -1 という値を取る。
この定義式から
は
の多項式で表わされ、そのどの項においても
の次数の合計は、
であることが分かる。
行列Vの第1列に
を乗じて第2列から引き、第1列に
を乗じて第3列から引き、以下この操作を第1列に
を乗じて第n列から引くまで繰り返すと、V は次の形に変形される。

この操作によって
の値は不変である。つまり
である。

であるから、
の第2行の第1列以外の各列の要素は
を因数に持ち、第k行の第1列以外の各列の要素は
を因数に持つことが分かる。従って、
は
を因数に持つことが分かる。
次に、行列Vの第1列に
を乗じて第2列から引き、第1列に
を乗じて第3列から引き、以下この操作を第1列に
を乗じて第n列から引くまで繰り返すと、V は次の形に変形される。

この操作によって
の値は不変であり、上と同様の論法で、
は
を因数に持つことが分かる。
同様の操作を、行列Vの第1列に
を乗じて第2列から引き、第1列に
を乗じて第3列から引き、以下この操作を第1列に
を乗じて第n列から引くまで繰り返せば、
は
を因数に持つことが言え、最終的に
は
を因数に持つことが分かる。
は
型の因数を
個掛け合わせているので、
の多項式に展開できるが、各項の
の次数の合計は、
である。従って、
は
の定数倍になるはずである。
の各因数の左側の変数(
であれば
)を掛け合わせた項は
である。一方
の対角要素を掛け合わせると、
であり一致する。従って、
と
は一致する。