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三官能性抗体
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三官能性抗体[1](Trifunctional antibody)は、典型的にはCD3と2つの異なる腫瘍抗原に対する結合部位を持つモノクローナル抗体で、二重特異性モノクローナル抗体の一種である。またFc部分は、従来の単一特異性抗体と同様に、抗原提示細胞のFc受容体に結合することができる。このタイプの薬剤は、CD3を介してT細胞、単球/マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞などのFc受容体を発現する細胞を腫瘍細胞に結びつけ、腫瘍細胞を破壊するという効果がある[2]。

同等の用量であれば、従来の抗体よりも1,000倍以上も強力に腫瘍細胞を除去することができる[3]。これらの薬剤は、(i)従来の抗体でも説明されている抗体依存性細胞媒介性細胞毒性、さらに重要なことには、(ii)CD8 T細胞を中心としたポリクローナル細胞傷害性T細胞反応によって、腫瘍細胞の除去を誘発する。また、これらの三官能性抗体は、カツマキソマブなどで治療を受けたがん患者において、個々の抗腫瘍免疫反応を惹起する。すなわち、自己抗体や腫瘍に向けられたCD4+およびCD8+ T細胞が検出されたのである[4][5]。さらに、カツマキソマブの投与により、悪性腹水に含まれる癌幹細胞と思われる細胞が除去された[6]。
カツマキソマブは、米国で2009年に、最初の三官能性抗体として臨床使用が承認された(がん患者の悪性腹水の治療)。
カツマキソマブ(EpCAM / CD3)の他にも[7][8]、エルツマキソマブ(HER2/neu / CD3)[9]、FBTA05(CD20 / CD3)[10][11]、TRBS07(GD2 / CD3)[12]など、さまざまなタイプのがんに対する薬剤が開発されている。
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開発の歴史
三官能性抗体は、最初に製造された二重特異性モノクローナル抗体の一種である。最初のコンセプトは1980年代半ばに遡る[13][14]が、製造上の問題から、20年以上に亘って臨床使用が認められなかった。免疫原性は、適切な親抗体がラットやマウスから得られることに起因する。投与後、患者の免疫系は通常、抗薬物抗体を産生するが、これは有益な臨床結果の初期指標となる[15]。さらに、カツマキソマブの最初の投与サイクル後に抗薬物抗体反応が発現するにも拘らず、カツマキソマブを繰り返し投与することで、再発した悪性腹水の治療に成功している[16]。架橋によりサイトカインが放出され、発熱、吐き気、嘔吐などの管理可能な副作用が生じるが、これらは一般的に可逆的であり、主に免疫学的な作用機序に関連していた[17]。2009年にがん患者の悪性腹水の治療薬として承認されたカツマキソマブは、これらの条件を満たしている。また、2011年5月現在、臨床使用が認められている唯一の抗体でもある。
免疫治療介入戦略のもう一つの方法は、異なる構造を持つ二重特異性抗体の研究であり、2000年代半ば以降、二重特異性T細胞誘導抗体(Bi-specific T-cell engaging antibody、BiTE抗体)が製造されている[18]。
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製造方法
まず、目的とする抗原の一方を標的とするモノクローナル抗体を持つマウスハイブリドーマ細胞を作製する。それとは別に、もう一方の抗原を標的とするラットハイブリドーマ細胞を作製する。この2種類の融合細胞をハイブリッドさせると、クワドローマ(融合細胞同士を融合させた細胞。ハイブリッドハイブリドーマとも。)が得られ、純粋なマウス抗体と純粋なラット抗体に加えて、ハイブリッド(3官能)抗体が生成される。三官能性抗体はプロテインAカラムを用いたクロマトグラフィーで抽出される。

異なる2つの種(マウスとラット)を用いると、ラットの軽鎖はラットの重鎖と、マウスの軽鎖はマウスの重鎖と好んでペアになるため、ミスマッチ抗体の生成が少ないという利点がある。一方、単一種(マウス/マウス、ラット/ラット)のクワドローマでは、最大で10種類の抗体が産生され、そのほとんどが重鎖または軽鎖、あるいはその両方が不一致である[19]。
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参考資料
関連文献
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