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二重特異性T細胞誘導抗体
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二重特異性T細胞誘導抗体[1](Bi-specific T-cell engaging antibody、BiTE antibody) は、抗がん剤としての利用が検討されている人工的な二重特異性モノクローナル抗体の一種である。BiTE抗体は、宿主の免疫システム、特にT細胞の細胞傷害活性を、がん細胞に対して誘導する。

BiTEは、約55キロダルトンの単一のペプチド鎖上に、異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)、すなわち4つの異なる遺伝子のアミノ酸配列が結合した融合タンパク質である。一方のscFvはCD3受容体を介してT細胞に結合し、もう一方のscFvは腫瘍特異的分子を介して腫瘍細胞に結合する[2][3]。
作用機序

他の二重特異性抗体と同様に、また通常のモノクローナル抗体とは異なり、BiTE抗体はT細胞と腫瘍細胞の間にリンクを形成する。これによりT細胞は、MHC Iや共刺激分子の存在とは無関係に、パーフォリンやグランザイムなどのタンパク質を産生することで、腫瘍細胞に対して細胞傷害活性を発揮する。これらのタンパク質は、腫瘍細胞に入り込み、細胞のアポトーシスを開始する[2]。
この作用は、T細胞が腫瘍細胞を攻撃する際に観察される生理学的プロセスを模倣している。
BiTE抗体の臨床評価
いくつかのBiTEについて、その治療効果と安全性を評価するための前臨床試験や臨床試験が行われている[4]。
ブリナツモマブ
→詳細は「ブリナツモマブ」を参照
ブリナツモマブは、B細胞表面のCD19受容体とT細胞を結びつける。米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)は、フィラデルフィア染色体陰性の再発または難治性の急性リンパ性白血病の成人患者を対象に本治療法を承認した[5]。
ソリトマブ
→詳細は「ソリトマブ」を参照
研究開発
同じ技術を利用して、悪性黒色腫(MCSP特異的BiTE抗体)や急性骨髄性白血病(CD33特異的BiTE抗体)を標的とすることができ[8]、この分野の研究は現在進行中である。また、新しい抗がん剤治療の可能性として、トラスツズマブ(HER2/neuを標的とする)、セツキシマブ、パニツムマブ(いずれもEGF受容体を標的とする)など、現在使用されている従来型の抗体の一部をBiTEアプローチで再構築することが挙げられる[9]。また、CD66eやEphA2に対するBiTE抗体も開発中である[10]。
参考資料
関連文献
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