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偽常染色体領域

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偽常染色体領域
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偽常染色体領域(ぎじょうせんしょくたいりょういき、: pseudoautosomal region、略称: PAR)とは、X染色体Y染色体(またはZ染色体とW染色体)の間で配列が相同な領域のことである。

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ヒトの中期スプレッド。X染色体(左)とY染色体(右上)の短腕の偽常染色体領域が蛍光in situハイブリダイゼーション(緑)によって検出されている。染色体は赤色で対比染色されている。

偽常染色体領域という名称は、この領域の遺伝子(これまでヒトでは少なくとも29遺伝子が見つかっている[1])が常染色体上の遺伝子のような遺伝パターンを示すことに由来する。ヒトではPAR1PAR2と呼ばれる2つの領域が存在する[2]。PAR1はヒトや類人猿のX染色体とY染色体の短腕の先端2.6 Mbpの領域、PAR2は長腕の先端320 kbpの領域である(X染色体の全長は155 Mbp、Y染色体は59 Mbp)[3]

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位置

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偽常染色体領域は性染色体の両末端に位置する。

GRC英語版h38(ヒトゲノム)によるPARの位置を示す[4]

さらに見る 名称, 染色体 ...

遺伝と機能

正常なオスの哺乳類では、PAR内の遺伝子はX染色体のPARに1コピー、Y染色体のPARに1コピーの計2コピー存在する。また正常なメスも2本のX染色体に1コピーずつの計2コピー持つ。通常、X染色体とY染色体の間の乗換えはPARに限定されている。そのため、PAR内の遺伝子は性染色体連鎖型ではなく常染色体型の遺伝パターンを示す。そのため、もともと父親のY染色体に存在していたアレルをメスが受け継ぐこともある。

こうしたPARの機能は、オスの減数分裂時にX染色体とY染色体が対合し、正しい分離を可能にしている[6]

遺伝子

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PAR1には16遺伝子が含まれ、PLCXD1が最もテロメア側末端に近く、XGセントロメア側末端の境界部に位置する。PAR2には3遺伝子が含まれ、SPRY3がセントロメア側末端の境界に位置し、IL9Rがテロメア側の末端に位置する[7]

偽常染色体領域はPAR1、PAR2という2つの異なる位置に存在し、これらはそれぞれ独立に進化したと考えられている[8]

PAR1

PAR1内の遺伝子には次のようなものがある[9]

マウスでは、PAR1の遺伝子の一部は常染色体に移動している[10]

PAR2

PAR2内の遺伝子には次のようなものがある[11]

病理

X染色体とY染色体の対合(シナプシス)とPAR間での乗換えは、男性の減数分裂の正常な進行に必要であるようである[13]。そのため、X-Y染色体間での組換えが起こらなかった細胞では、減数分裂が完了しない。X、Y染色体のPARの構造的・遺伝的非類似性は対合や組換えを阻害し、男性不妊の原因となる。

PAR1領域のSHOX遺伝子は、ヒトの疾患と最もよく関係しており、理解が進んでいる[14]。PARの全ての遺伝子はX染色体の不活性化を回避し、そのため性染色体異数性疾患(45,X47,XXX47,XXY47,XYYなど)における遺伝子量英語版効果の候補遺伝子となっている。また、PARの欠失もレリーワイル症候群英語版[15]マーデルング変形と関係している。

出典

関連項目

外部リンク

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