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僕って何

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僕って何』(ぼくってなに) は、三田誠広中編青春小説1977年に文芸誌『文藝』5月号に掲載され、同年上期の第77回芥川賞を受賞。芥川賞は池田満寿夫の『エーゲ海に捧ぐ』との同時受賞である。本作と『エーゲ海に捧ぐ』が掲載された文藝春秋1977年9月号は100万部を記録している。文藝春秋が100万部以上を記録したのは、「昭和天皇独白録」を掲載した1990年12月号、村上龍の『限りなく透明に近いブルー』が掲載された1976年9月号、金原ひとみの『蛇にピアス』と綿矢りさの『蹴りたい背中』が掲載された2004年5月号である。

概要 僕って何, 作者 ...

1977年7月に河出書房新社から単行本化。1980年6月に河出文庫1988年5月に角川文庫から、それぞれ文庫化された。

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あらすじ

田舎から上京し、学園紛争真っ只中の大学に入学した「僕」。何も知らない母親っ子の僕が、いつの間にかセクトの争いや内ゲバに巻き込まれる中で、思いがけず年上の「レイ子」と暮らすことになる。激しく揺れ動き変化する周囲に戸惑いながら、「僕」は定まらない自分のアイデンティティを見つめ直していく。

評価

芥川賞選考委員の選評

[1]

肯定的評価

  • 永井龍男は、「若さ、群集を書きまくるエネルギーに将来性を感じた」「欠点も多い代りスケールは(他の候補作より)大きかった」と評した[1]
  • 大江健三郎は、「方法として単調だし、イメージのつくり方も、しばしば通俗的な風俗性に流れている。しかし、それなりに不安定な対象に密着しつづけて、ともかくも一時代の青春の一局面を、散文の世界に囲いこみえている」「小説一篇読みおえての面白さをいえば、この作品が授賞作に選ばれて自然だった」と評価した[1]
  • 吉行淳之介は、「池田満寿夫高橋揆一郎三田誠広の順に内心支持して会に出た」「『僕って何』とは同年代に向って『君って何』という問いかけの批評を含んでいて、このあたりの年齢の周辺を私小説風に描いて過大に評価されてきたこれまでのいろいろの作品より、ずっと良かった。ユーモアにもとぼけているようで、批評がある」と評価した。[1]
  • 井上靖は、「若さがよく出ている明快な作品で、好意を以て読んだ」と評価した。[1]
  • 安岡章太郎は「いいと思った。しかし、(中略)積極的に推せるものはなかった」「前半部がとくにダラシのない文章で退屈であった。しかし読みすすめるにつれて、当今学生気質といったものが過不足なく描かれたシタタカなところがあり、なかなかヤルじゃないか、という気がした」と評した[1]
  • 遠藤周作は、「授賞作になることに反対しなかった。ただ、この作品にはやや新人らしい独自の冒険がなく、安全な書きかたをしているのが多少、物足りなかった。(たとえばトシオが学生たちにからむ気持の描写などは、安全な書きかたであり、もっと複雑なものがあるような気がする)」と評した。[1]

否定的評価

  • 中村光夫は、「素朴な語り口」「ものものしい題名のわりに、主人公の心理が浅くしか把握されていないので、内面の展開がなく、冗長の感をあたえるのは惜しまれます」と評した[1]
  • 瀧井孝作は、「おしゃべりのズラズラしゃべりまくる筆で、このおしゃべりが特長かもしれないが、私はもっと簡潔に書いてほしいと思った」と評した[1]
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収録書籍

  • 1977年7月『僕って何』河出書房新社
  • 1980年6月『僕って何』河出文庫
  • 1982年12月『芥川賞全集 第11巻』文藝春秋
  • 1988年5月『僕って何』角川文庫
  • 1988年12月『昭和文学全集 第31巻 澁澤龍彦・中井英夫・中野孝次・三木卓・色川武大・田中小実昌・金井美恵子・三田誠広・青野聰・立松和平・村上龍』小学館
  • 2008年9月『僕って何』[新装版]河出文庫
  • 2014年10月『現代小説クロニクル 1975~1979』講談社文芸文庫

脚注

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