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全国公益支援財団

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一般財団法人全国公益支援財団(ぜんこくこうえきしえんざいだん、英: Japan Foundation for Public Interest Support、略称: JFPS)は、日本の非営利法人業界の支援を目的とする一般財団法人である[1]

全国の公益法人や一般社団・財団法人などが直面する運営上の課題解決を支援するため、株式会社全国非営利法人協会(全国公益法人協会の運営母体)の出捐により、令和7年6月23日に設立された [1]。本部は東京都千代田区に置かれている[1]

主な事業として、専門人材の育成を目的とした「検定試験事業」、人口減少社会に対応するための「法人事務局代行事業」、制度改善に資する「調査研究・情報提供事業」、公益法人の設立を包括的に支援する「公益法人設立支援事業」、そしてAI技術を活用して運営の生産性向上を目指す「バックオフィスのAI活用支援事業」の5つを柱としている [2]。理事長は近畿大学名誉教授の堀田和宏が務める[2]

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設立

経緯

一般財団法人全国公益支援財団は、令和7年6月23日に設立登記を完了した[1]。その設立は、全国公益法人協会の運営母体である株式会社全国非営利法人協会の出捐(財産の寄付)によって行われた[2]。この設立形態は、営利を目的とする株式会社が、その事業活動とは別に、非営利セクター全体の発展に寄与するための公益的活動を専門的に担う組織として、独立した財団法人を設立したことを示している。

この組織構造は、特定の企業活動とは一線を画した中立的かつ公益的な立場から、業界全体の基盤強化や課題解決に取り組むための戦略的な選択であると解釈できる。株式会社が直接手掛けることが難しい、あるいは公益性の観点から馴染まない基礎研究、人材育成、業界標準の策定といった活動を、一般財団法人という非営利の枠組みの中で推進することにより、活動の信頼性と社会的な受容性を高める狙いがある。

株式会社全国非営利法人協会との関係

設立の背景にある出捐関係に加え、財団の役員構成は、株式会社全国非営利法人協会との極めて緊密な連携関係を物語っている。財団の評議員には株式会社全国非営利法人協会の代表取締役である宮内章が就任しているほか、業務執行の中核を担う専務理事には同社の専務取締役である桑波田直人が、常務理事には同社の常務取締役である高野恭至がそれぞれ就任している[2]

このように、親会社である株式会社の経営陣が、財団の日常業務を統括する重要な役職を兼任する体制は、両法人が一体的な戦略のもとに運営されていることを示唆している。財団が担う公益的活動が、株式会社の事業戦略と密接に連動し、相互に補完し合う関係にあることを構造的に担保している。財団が非営利セクターの健全な発展を促進することで、結果的に株式会社が提供する専門サービスの市場が拡大・成熟するという、長期的なエコシステム形成を意図した組織設計であると考えられる。財団の公式サイトにおいても、株式会社が運営する「全国公益法人協会」が関連サイトとして紹介されている[1]

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目的と事業内容

要約
視点

財団の公式ウェブサイトには、独立した「設立趣意書」のような形で目的を明文化したページは存在しない[1]。しかし、掲げられた5つの主要事業の内容から、その設立目的は、日本の非営利法人セクターが抱える構造的な課題、特に人材不足、運営ノウハウの属人化、デジタル化の遅れ、複雑な法制度への対応といった問題に対して、体系的かつ専門的な支援を提供し、セクター全体の持続可能性と発展に貢献することにあると明確に読み取れる[1]

検定試験事業

財団は、非営利法人業界における専門人材の育成と、その能力を客観的に評価する公正な基準の確立を目指し、「公益法人会計検定」を始めとする各種検定試験の企画・運営を行っている[2]

この事業は、非営利法人、特に公益認定を受けた法人に求められる高度な会計基準やコンプライアンスに関する専門知識の普及を目的としている。会計は法人の透明性と信頼性の根幹をなす要素であり、この分野における標準化された資格制度を確立することは、業界全体のガバナンス強化に直結する。財団がこの検定制度を主宰することにより、非営利法人の実務で求められる知識体系を定義し、教育機関や研修プログラムの内容にも影響を与えることが可能となる。長期的には、財団が認定する資格が業界内でのキャリアパスにおける重要な指標となり、人材の流動性や専門性の向上を促す基盤を構築する役割を担う。これは、財団が非営利セクターにおける人材育成のエコシステムの中心的な担い手となることを目指す戦略的な取り組みである。

法人事務局代行事業

日本社会が直面する深刻な「人口減少社会」というマクロな課題に対し、財団は具体的な解決策として、公益法人や一般社団・財団法人の事務局機能を代行するサービスを提供している[2]

非営利法人の多くは、限られた予算と人員で運営されており、特に中小規模の団体では、専門的なバックオフィス業務(経理、総務、法務など)を担う人材の確保が大きな経営課題となっている。人口減少と高齢化が進む中で、この問題はさらに深刻化することが予想される。財団が提供する事務局代行サービスは、こうした団体が本来の目的である公益活動に資源を集中できるよう支援するものであり、単なる業務のアウトソーシングに留まらない。複数の法人の事務局機能を集約・標準化することで効率性を高め、個々の団体では導入が難しい専門知識やシステムへのアクセスを可能にする。これは、非営利セクター全体の事業継続性を支える社会的なインフラとしての役割を果たすものであり、財団が各法人の内部運営に深く関与することで得られる知見は、他の事業(調査研究や制度改善提言)にも活用されることが期待される。

調査研究・情報提供事業

財団は、非営利法人の運営効率化や関連する制度の改善に関する調査研究を実施し、その成果を学術論文、調査報告書、セミナーなどを通じて社会に広く発信している[1]

この事業は、財団を非営利セクターに関する専門的な知見を集積・発信する「シンクタンク」として位置づけるものである。現場の実務から得られるミクロなデータと、学術的な視点からのマクロな分析を組み合わせることで、政策提言や実務上のベストプラクティスの提示において高い権威性と説得力を持つことを目指している。理事長や特別顧問、監事などに大学教授や研究者が名を連ねていることは、この調査研究機能の信頼性を担保する上で重要な要素となっている[1]。財団が中立的な立場から客観的なデータに基づいた研究成果を公表することは、非営利法人をめぐる建設的な議論を促進し、政府や監督官庁、資金提供者などのステークホルダーに対する効果的な働きかけを可能にする。これにより、財団はセクター全体の発展に向けたアジェンダ設定において主導的な役割を果たすことができる。

また、海外の非営利活動に関する情報提供活動として、note上で非営利海外事情と称するオンラインメディアを運営し、海外の非営利組織に関する論考を公開している。[3]

公益法人設立支援事業

財団は、新たに公益法人の設立を目指す団体に対して、構想段階から設立後の運営までを見据えた包括的な支援を提供している。その支援範囲は、設立趣旨の整理、定款の作成、事業計画の策定、そして行政庁への公益認定申請といった、設立プロセス全体に及ぶ [1]

日本における「公益法人」の認定プロセスは、法律上の要件が厳格であり、申請書類の作成も極めて専門的で複雑な手続きを要する。多くの団体にとって、このプロセスは高いハードルとなっている。財団は、この専門領域における「ナビゲーター」としての役割を担い、団体が持つ公益活動への情熱を、法的に認められる組織形態へと円滑に転換させることを支援する。この事業は、質の高い公益法人が社会に増えることを直接的に促進するだけでなく、財団の他の事業との間に強力な相乗効果を生み出す。設立段階から関与することで、新設法人は財団のネットワークに初期から組み込まれ、会計検定による人材育成、事務局代行、AI活用支援といった他のサービスの長期的な利用顧客となる可能性が高い。これは、財団のエコシステムを拡大・強化するための重要な入口戦略として機能している。

バックオフィスのAI活用支援事業

財団は、AI(人工知能)技術を活用して、非営利法人の事務処理の効率化や定型業務の自動化を支援している。この事業は、社会課題の解決に取り組む法人の「生産性向上と働き方改革の実現」をサポートすることを目的としている。例として、公益法人設立の支援に特化した生成AIチャットボット「全国公益AIナビ」をWebサイト「自分でできる公益法人設立」や同財団が運営するWebサイトに公開している。[4][5]

非営利セクターは、営利企業に比べてテクノロジー導入への投資が遅れがちな傾向がある。財団は、このデジタル・デバイド(情報格差)を埋めるべく、AIという最先端技術を非営利法人のバックオフィス業務に特化して提供することで、独自の価値を創出しようとしている。これは、単なるコスト削減や効率化に留まらない。事務作業から解放された職員が、より創造的でミッションに直結する活動に時間を費やせるようにすることは、組織全体のパフォーマンスと社会的インパクトを向上させる上で不可欠である。「生産性向上」や「働き方改革」は日本全体の国家的課題であり、財団がこのテーマに積極的に取り組むことは、非営利セクターの現代的課題への対応能力を示すとともに、その社会的意義をアピールする上でも効果的である。この事業は、財団を単なる伝統的な支援組織ではなく、未来志向のイノベーターとして位置づける役割を担っている。

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組織体制

要約
視点

一般財団法人全国公益支援財団のガバナンスは、非営利法人分野における学術、実務、規制、そして経営の各領域から専門家を結集させた、戦略的な布陣となっている。この役員構成は、財団が設立当初から高い専門性と信頼性を確保し、多角的な視点から事業を推進するための強固な基盤を形成している[2]

役員および評議員は以下の通りである(令和7年7月1日現在)[2]

さらに見る 役職, 氏名 ...

この組織体制を分析すると、いくつかの特徴的な機能が見て取れる。

第一に、学術的な権威性の確保である。理事長の堀田和宏(近畿大学名誉教授)や特別顧問の藤井秀樹(京都大学名誉教授)といった学界の重鎮をトップに据えることで、財団の調査研究事業や検定試験事業に高い学術的信頼性を与えている[2]

第二に、規制・政策への深い知見の統合である。評議員の出口正之は、内閣府の公益認定等委員会の元常勤委員であり、公益法人制度の運用に深く関与した経験を持つ[2]。この経験は、公益法人設立支援事業や制度改善に関する政策提言において、他に代えがたい価値をもたらす。

第三に、実務における専門性の網羅である。監事の上松公雄(税理士)、評議員の山下雄次(税理士)、常務理事の高野恭至(行政書士)など、税務・法務の第一線で活躍する専門家が役員に名を連ねており、法人運営の現場で生じる具体的な課題に対応できる体制を整えている[2]

そして第四に、設立母体である株式会社全国非営利法人協会による経営上の監督と戦略的連携である。評議員の宮内章(代表取締役)、専務理事の桑波田直人(専務取締役)、常務理事の高野恭至(常務取締役)が経営の中枢を担うことで、財団の公益的活動と株式会社の事業戦略が常に同期し、一体として機能することが保証されている[1]

このように、学術、規制、実務、経営という4つの異なる領域の専門知識とネットワークが意図的に組み合わされたガバナンス構造は、財団が非営利セクターにおける包括的かつ権威ある支援機関としての地位を、設立初期の段階から確立することを可能にしている。

脚注

外部リンク

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