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原始概念

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原始概念(げんしがいねん、英:primitive notion)とは、数学論理学哲学形式体系において、それ以前に定義された概念に基づいては定義されない概念をいう。しばしば直観への訴えなどを通じて自明とみなされることもある。公理系英語版では、原始概念間の関係は公理によって制限される[1]。後者を、「一つ以上の公理で原始概念を定義する」と呼ぶ著者もいるが、これは誤解を招きうる。無限後退に陥ってしまうため、形式理論は原始概念を欠くことはできない。

例として、現代幾何学では、直線・含むなどが原始概念の一部である。

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アルフレッド・タルスキは原始概念の役割を次のように説明している[2]

ある学問分野を構築しようとするとき、まず我々は、その分野において直ちに理解可能と思われる少数の表現群を区別する。これらの表現を原始用語または未定義用語と呼び、その意味の説明なしに用いる。同時に我々は、次の原則を採用する――原始用語と、これより前に意味が説明された当該分野の表現の助けによってまず意味が定められていない限り、当該分野の他のいかなる表現も用いない。このような仕方で語の意味を定める文を定義と呼ぶ。

ジルベール・ド・ロビンソン英語版は、認識論における原始概念への不可避な回帰について次のように述べた:

数学者でない人には、使用するすべての術語を明示的に定義することは不可能だという事実はしばしば意外である。これは表面的な問題ではなく、あらゆる知識の根幹にある問題である。どこかから始めることが必要であり、進歩するためには、未定義のままにしておく要素と関係、そして自明として受け入れる性質を明確に述べなければならない[3]
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原始概念の必要性は、数学におけるいくつかの公理的基礎づけに示される。

集合論集合の概念は原始概念の一例である。メアリー・タイルズ英語版は次のように書く[4]

「集合」の「定義」は、原始語・未定義語という地位を与えられているものについての説明の試みにすぎない。

その根拠として、フェリックス・ハウスドルフを引用している――

集合とは、個々の対象を一つの全体にまとめることによって形成される。集合とは一つの単位として考えられた多である。

素朴集合論空集合は原始概念である。その存在を主張することは暗黙の公理に当たる。

ペアノ算術後者関数と数0が原始概念である。ペアノ算術が数の性質に関して有用である以上、原始概念がどの対象を表すかは厳密には重要ではない[5]

実数算術:通常、原始概念は実数、二つの二項演算加法乗法)、0 と 1、順序<である。

公理系:原始概念はその体系に選ばれた公理集合に依存する。アレッサンドロ・パドアは1900年パリの国際哲学会議でこの選択について論じた[6]。原始概念は必ずしも明示される必要はない。スーザン・ハックはこう記す――「公理系が、その原始概念に対して暗黙の定義を与えると言われる」[7]

ユークリッド幾何学ヒルベルトの公理英語版系):原始概念は点・直線・平面合同・中間性・インシデンス。

ユークリッド幾何学(ペアノの公理系):原始概念は点・線分・運動。

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脚注

関連項目

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