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参照 (書誌学)
記事に参考文献の書誌情報を添えること ウィキペディアから
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書誌学における参照(さんしょう、英語: citation)とは、記事に参考文献の書誌情報を添えること。記事の信頼性の向上や引用の出どころの明示を目的に、学術論文や総説、専門書、オープンソースの百科事典などで行われる[注 1]。

ニュートンは「巨人の肩の上に乗る」ことの重要性を説いた[1]。「巨人」は偉大な先人の喩えである[2]。
目的

参照の目的は、論拠の提示による記事の信頼性の向上や[3]、引用を行った場合の要件たる出どころの明示である[4]。記事の導入や考察、解説においては、過去の背景や経緯の説明が必要となる。この説明の論拠として、権威ある先行文献の書誌情報を添えることで、解説の説得力や信頼性を高めることができる。転載の意味での引用に関しては、著作権法において出どころの明示が要件とされていることもあるが、出どころを明示しない引用は、他の論を自らの論として発表する「剽窃(盗作)」と捉えられかねず、これを避けるためにも引用を行った場合は参照が必要となる。
種類
要約
視点
かつては各箇所の本文中で、書誌情報が全て記載されていた(筆頭著者姓名、共著者姓名(発行年)「表題」『誌名』発行者名、巻(号): 頁-頁などといった、長い長い書誌情報を括弧で添えたりすると、このようにとても邪魔である)。しかし、上述のように読みやすさに難を生じやすく、19世紀にエドワーズ・ローレンス・マークによって記事末尾に書誌節を設けて書誌情報を集約するハーバード方式が考案され[5]、以来、書誌情報を本文中に記載する方式はほとんど採用されなくなっている[6]。
以後採用されている参照方式は、脚注法、著者姓・発行年方式、著者姓・ページ方式、アルファベット番号方式、参照順方式の5種類である。中でも著者姓・発行年方式と参照順方式は強い支持を得ている。前者は生物学雑誌編集者協議会 (CBE) やアメリカ心理学会 (APA) 、後者は米国国立医学図書館 (NLM) である[7]。
脚注法
本文中に短剣符「†」や肩番「1)」を置き、各ページの下部に脚注欄を設け、そこに書誌情報を全て記載する。この方式を用いる投稿規定としてはMLAが挙げられる[8]。
著者姓・発行年方式
本節以下はすべて、記事末尾に書誌節を設けて書誌情報を集約し、本文には文献符号を置く方式である。文献符号として何を置くかで、著者姓・発行年方式、著者姓・ページ方式、アルファベット番号方式、参照順方式の4種類に分類される。
著者姓・発行年方式 (author-date system) は、文献符号として、著者姓と発行年を用いる。文献符号の直後に該当箇所として、ページ番号や章節名を付すこともできる。同一著者による同年発行の文献がある場合、発行日の昇順で発行年の末尾にabcを付す。
書誌節では、文献は著者姓名と発行日の昇順で並べられる。書誌要素は、APAでは著者姓、名、発行年月日の順に記載される。これは、著者姓と発行年を文献符号とするためである。この方式を採用する投稿規定としては、社会学評論などが挙げられる[9]。
→詳細は「ハーバード方式」を参照
括弧内に文献符号として著者姓と発行年、そして該当箇所が示される。
犬も歩けば棒に当たる(佐藤・Smith 2010: 77)。
参考文献
- 佐藤一郎・Smith, Bob(2010年7月7日)「はじめの一歩」『甲子論集』渡辺出版、12(3): 67-78、ISBN 978-0-9999-0000-0。
本文に著者姓を織り込む場合、「佐藤・Smith(2010: 77)によれば、犬も歩けば棒に当たる」とする[注 2]。
この方式を採用する投稿規定としては、APAが挙げられる。
著者姓・ページ方式
著者姓・ページ方式 (author-page system) は、文献符号として著者姓(と省略表題)を用いる。原則的には著者姓のみを用い、同じ著者による複数の文献が登場する場合にのみ、表題の省略形を付す。文献符号の直後に該当箇所として、ページ番号を示す。 書誌節では、文献は著者姓名と表題の昇順で並べられる。書誌情報は著者姓、名、表題の順に記載される。これは、著者姓と表題を文献符号とするためである[10]。
犬も歩けば棒に当たる(佐藤・Smith 「初一歩」: 77)。
参考文献
- 佐藤一郎・Smith, Bob「はじめの一歩」『甲子論集』渡辺出版、12(3): 67-78、2010年7月7日。ISBN 978-0-9999-0000-0。
この方式を採用する投稿規定としては、MLAが挙げられる。
アルファベット番号方式
アルファベット番号方式は、文献符号として、著者姓名昇順の肩番を用いる。肩番に該当ページ番号が添えられることもある。
書誌節では、文献は著者姓名の昇順(=肩番の昇順)で並べられる。書誌要素は著者姓、名の順に記載される。これは、肩番が著者姓名のアルファベット順で振られるためである。
参照順方式
参照順方式(Citation order system[11])は、文献符号として、参照順の肩番を用いる。
書誌節では、文献は肩番の昇順で並べられる。書誌要素は順不同。これは、書誌要素を文献符号に利用しないためである。
この方式を採用する投稿規定としては、NLMが挙げられる。
→詳細は「バンクーバー方式」を参照
犬も歩けば棒に当たる1)。
参考文献
- 佐藤一郎・Smith, Bob(2010年7月7日)「はじめの一歩」『甲子論集』渡辺出版、12(3): 67-78、ISBN 978-0-9999-0000-0。
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学術論文の参照・引用

アカデミズムでは、自分の論文が斯界の権威ある学術雑誌で引用(参照)されていればされているほどその研究者(引用元の論文の著者)が価値のある存在として扱われるという風習がある。自然科学や経済学ではそれが論文の「被引用回数」という形で定量的にシステム化されており、人文・社会科学系でもそこまで露骨でなくとも自分の論文が引用されることを評価する価値観は存在する。そのため、「その論文に関連する先行論文を(実際にはそれほど参考にしていないのに)形式的に参照しておく」あるいは「その論文に関する先行論文の存在は知っているが、それを明示的に参照するだけの価値が見出せないためあえて無視する」といったことが行われることがあり、社会学者の北田暁大はこれらをそれぞれ「儀式的関心」「顕示的無関心」と呼んでいる[13]。これらは社会学者のアーヴィング・ゴッフマンが提唱した儀礼的無関心を意識した語で、北田によれば、建前上は引用とは「自分が示唆を受けた論文を参照する」という「儀礼的・紳士的関心」に基づくことになっているが、実情としてはその中に「儀礼的・紳士的関心」と「儀式的関心」の2つが混在した状態になっているのだという。
論文の「被引用回数」のシステムは、論文に記載されている「内容」ではなく、それをどれだけの他の論文が参照しているかという「形式」的な事実に基づいて評価を行うことになるが、検索エンジンGoogleのシステムである「ページランク」(より多くのWebサイトからハイパーリンクされているほど高く評価する)は、これと類似した発想であるといえる[14]。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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