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逆転電位
細胞膜を流れる電流が逆になる膜電位 ウィキペディアから
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逆転電位[1](ぎゃくてんでんい、英語: reversal potential)または反転電位[2](はんてんでんい)は、イオンによる電流の流れが逆向きになる膜電位のことである。逆転電位においては、膜の一方からもう一方へと流れる正味の電流が0となる。1種類のイオンのみが通過可能なチャネルでは、逆転電位は平衡電位(へいこうでんい、英語: equilibrium potential)に等しい[3][4][5]。
平衡電位
要約
視点
平衡電位はイオンの正味の動きが見かけ上なくなる膜電位である[3][4][5]。ナトリウムイオンNa+やカリウムイオンK+のような無機イオンは通常の生体膜をそのまま通過することはできないためイオンの電気化学的勾配に従ってイオンチャネルを通過する[3][4][5][6]。この勾配には2種類あり、膜の内外におけるイオン濃度差による濃度勾配と、膜内外での電気的な差による電気的勾配がある[6]。これらの2つの勾配が平衡に達すると、イオンの電気化学的勾配は0となり、イオンチャネルを通るイオンの正味の流れが0となる。これはつまり、チャネルを通るイオンが1種類である限り膜を横切る電流は0ということである[3][4][5][6][7]。平衡に達したときの電気的勾配によって生じた膜電位が平衡電位であり、ネルンストの式から理論上の値を計算することができる[3][4][5][6]。
駆動力の数理モデル
K+のような陽イオンが膜電位が負に帯電した状態の細胞膜を通る、という生物にとって通常の状況を考える[6][7]。膜電位は細胞外に対する細胞内の電位を示しているので、細胞内側が負であるということであり、膜電位の存在はK+の細胞外流出を抑制する。そのため、K+のような陽イオンが細胞外に出るためにはそのエネルギー障壁を乗り越えられるような十分な熱エネルギーを必要とする[7]。しかし、内部のその陽イオンの濃度を高めて電気的勾配とは反対向きに濃度勾配を十分に加えてやればエネルギー障壁を乗り越えられるようになる[7]。
平衡電位に関連する重要な概念に駆動力(英語: driving force)がある。駆動力は実際の膜電位とあるイオンの平衡電位の差で定義される[7]。あるイオンによる電流を、コンダクタンスをとすると、
となる[7]。ただし、該当イオンが膜を通過できない場合や既に電位が平衡電位に等しい場合はイオン電流は0となり、駆動力を求められない点に注意する[7]。
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研究での応用
膜電位が興奮性シナプス後電位(EPSP)において逆転電位にあるとき、様々なイオンの平衡電位を調べることでEPSP発生の元となるイオンを特定することができる。例えば、グルタミン酸受容体、ニコチン性アセチルコリン受容体、5-HT3セロトニン受容体のようなイオン通過が可能なイオンチャネル内蔵型受容体はいずれもNa+やK+などの陽イオンを非選択的に通すイオンチャネルであり、それぞれのイオンごとに加重平均すると逆転電位がほぼ0になる。抑制性シナプス後電位(IPSP)でも同様に求めることができる。IPSPを担当するのはGABAA受容体やグリシン受容体のようなCl-を通過させるイオンチャネル内蔵型受容体であり、逆転電位はCl-の平衡電位程度の約-70mVとなる[4]。
この一連の推論は竹内昭・宣子夫妻の1960年に発表されたアセチルコリン作動性のイオンチャネルがNa+もK+もほぼ等しく通すという実験[8]の発達につながった。この実験は細胞外Na+濃度を下げ、逆転電位を負にシフトさせることで行われた。逆に、細胞外K+濃度を高めると逆転電位は正にシフトした[4]。これによりシナプスにおける逆転電位の一般式を求めることができた[9]。
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関連項目
- 電気化学ポテンシャル
- 膜電位
- ゴールドマン・ホジキン・カッツの式
出典
外部リンク
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