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捜査線上の夕映え
有栖川有栖による日本の推理小説 ウィキペディアから
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『捜査線上の夕映え』(そうさせんじょうのゆうばえ)は有栖川有栖の推理小説。作家アリスシリーズの長編10作目。『別冊文藝春秋』2021年5月号から11月号で連載後、2022年1月に単行本が文藝春秋より出版された。
「このミステリーがすごい!」 2023年版第3位、「ミステリが読みたい」2023年版第5位、「本格ミステリ・ベスト10」2023年8位「週刊文春ミステリーベスト10」2022年版8位[1]。
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概要
本作は、2021年、日本列島全域に新型コロナウイルスが蔓延していた時期にあたる。これについて有栖川は、 「このシリーズの探偵役二人は、ずっと34歳で年を取りません。周りの社会は動いています。彼らが常に<現代>にいることを読者に受け取ってほしいので、世界にコロナ禍が広がった社会を物語にも反映させたく思いました。」と述べている[2]。
有栖川は本作を書こうと思ったきっかけについて、「両親の郷里が香川県なので、瀬戸内海はよく連絡船で渡っていました。ここにある心のふるさとみたいな島が出てくる小説を書いてみたいと、漠然と思っていました。」ということで、編集者と取材に行き、気になる島があったので一人で再訪したという[2]。そして「この島を出すにはどうしたらいいか、というところからじわじわと進んでいった感じです」と述べている[2]。
本作はアリバイ崩しがメインとなるが、有栖川は「トリックがわりとどうでもいい」と述べている[3]。批評家の佐々木敦は文庫本の巻末解説で「物語の後半、確かに二人は小旅行をするのだが、それは被疑者たちのアリバイとは関係がない。しかし、そこから先が実は本作のクライマックス(この言葉に反してそれはとても穏やかで牧歌的なシーンだが)なのである。」「それは本作において最も意外性を持っていると言っても過言ではない」と、「トリックがわりとどうでもいい」との発言の意図を補足している[4]。
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あらすじ
新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が解除されたというものの、社会の閉塞感がぬぐい切れない2021年8月28日、東大阪市内のマンションのクローゼットの中で、スーツケースに詰められた男性の撲殺死体が発見された。男性はその部屋にひとり暮らしの元ホストの奥本栄仁で、死体の第1発見者は奥本の恋人で投資家の歌島冴香であった。
凶器は部屋にあった御影石の龍の臥像で、スーツケースは奥本から借りていた歌島が24日16時頃に返しにきて玄関に置いて帰ったものであった。死亡推定時刻は24日から26日であったため、歌島が第1の被疑者として疑われる。ただし、歌島が奥本の部屋に滞在していた時間は監視カメラの映像から3分間と確認されており、その3分間で奥本を殺害し、死体をスーツケースに詰めたうえ、そのスーツケースをクローゼットにしまうのは不可能であることが確認されている。
第2の被疑者は、奥本のLINEの記録から浮上した元コンパニオンで歌島の友人の黛見浪で、歌島がスーツケースを返しにきた1時間前の24日15時前に奥本の部屋に滞在していたことが監視カメラの映像で確認されている。奥本は歌島と黛の二股を画策していたらしく、痴話げんかのもつれから犯行に及んだことが疑われた。しかし、25日に奥本から歌島にLINEで連絡があり、その携帯電話は奥本の部屋で発見されているため、監視カメラの映像で24日15時以降、マンションに出入りしていないことが確認されている黛にも犯行は不可能な状況であった。
第3の被疑者は、奥本から借金の返済を迫られていた不動産テックに勤める久馬大輝で、25日深夜にマンションの駐輪場とつながった裏口を出ていくサングラスにマスク姿の久馬に似た小太りの人影が監視カメラに謎の人物が映っていたが、久馬であるという確証は得られていない。しかも、久馬は25日の夜、福岡県に帰省していたことが確認されていることから、久馬にも犯行は不可能な状況で、捜査は暗礁に乗り上げる。
そのような経緯から、大阪府警船曳警部に捜査協力を要請された臨床犯罪学者・火村英生は、友人で推理作家の有栖川有栖(アリス)を伴って、フィールドワークの名目で捜査に加わる。
その後、黛のストーカーらしい、下半分がマスクで隠れている顔がK-POPアイドルに似た男が第4の被疑者として浮上し、コマチこと捜査一課の高柳刑事がその所在を突き止める。その男は黛の郷里・丸亀市の仲島中学校の1学年後輩の吉水蒼汰であった。しかし、監視カメラの映像に吉水が映っていないことから、犯行が不可能な状況には変わりはなかった。
状況を打破するために、火村とアリスは黛と吉水の郷里である仲島に向かう。
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登場人物
→「作家アリスシリーズ § 主人公」も参照
- 奥本栄仁(おくもと えいじん)
- 元ホスト。29歳。事件の被害者。
- 歌島冴香(うたじま さえか)
- 奥本の恋人。投資家。30歳。
- 久馬大輝(きゅうま だいき)
- 不動産テックの会社に勤務。奥本に借金をして返済を迫られている。
- 黛見浪(まゆずみ みろう)
- 元コンパニオン。歌島の友人。奥本との二股が疑われている。
- 吉水蒼汰(よしみず そうた)
- 通販会社の契約社員。黛とは香川県丸亀市仲島の同郷で、同じ中学校出身(吉水が1学年下)。黛のストーカーと疑われている。
- 宮武友也(みやたけ ともや)
- 仲島のゲストハウス「なぎのいえ」のオーナー。黛・吉水と同じ中学校出身で吉水とは同級生。
- 宮武郷土(みやたけ さとみ)
- 宮武の妻。黛・吉水と同じ中学校出身で吉水とは同級生。
- 船曳(ふなびき)
- 大阪府警の警部。
- 鮫山(さめやま)
- 大阪府警の警部補。
- 茅野(ちの)
- 大阪府警捜査一課の古参刑事。
- 森下恵一(もりした けいいち)
- 大阪府警捜査一課の刑事。身だしなみが良く、いつもアルマーニのスーツを身に着けている。
- 高柳真知子(たかやなぎ まちこ)
- 大阪府警捜査一課の刑事。通称・コマチ。
- 中貝家(なかがいけ)
- 布施警察署の署長。
- 繁岡(しげおか)
- 布施警察署の巡査部長。
書誌情報
- 2022年1月11日、『捜査線上の夕映え』文藝春秋、 ISBN 978-4-16-391484-8
- 2024年11月10日、『捜査線上の夕映え』文春文庫、ISBN 978-4-16-792293-1
脚注
関連項目
外部リンク
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