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李克用
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李 克用(り こくよう、大中10年9月22日(856年10月24日) - 天祐5年1月20日(908年2月24日))は、中国の唐末の軍閥指導者。突厥沙陀部出身。後唐の太祖武帝と追号された。荘宗李存勗の父で、明宗李嗣源の仮父。唐末期に鴉軍と呼ばれる精鋭兵を率いて黄巣の乱鎮定に功績を挙げ、朱全忠と激しい権力争いを繰り広げたが、中途で病死した。独眼龍の異名を持つ猛将であり、その功績や超人的な武勇からなかば神格化されていた。[1]モンゴルのオングト族が末裔を称して祭祀を行い、[2]日本の仙台藩主である伊達政宗が彼を見習う[3]など、中国のみならずモンゴルや日本など、後世にも大きな影響を与えた人物である。ただし記録は散逸しており、神格化により実像がわかりにくくなったこともあり、研究は発展途上にある。[4]

生涯
要約
視点
独眼竜と呼ばれ怖れられる
李克用の本姓は突厥風の朱邪であり、父の朱邪赤心は朔州刺史を勤め、龐勛の乱鎮定にて龐勛を討ち取るなどの功績を挙げ、唐の国姓を賜り、李国昌と名乗るようになった。後に子の李存勗により、文帝の諡と献祖の廟号が贈られた。
李克用は李国昌の三男であり、母は秦氏である。正史『新五代史』には独眼竜の異名の由来について以下のように記す。
克用は少くして驍勇、軍中号して「李鴉児」という。其の一目は眇なれば、其の貴きに及ぶや、又た号して「独眼竜」といい、其の威名は代北を蓋う。(現代語訳)李克用は幼い頃から勇猛果敢で、軍人たちから「李鴉児」と呼ばれていたが、片目が眇(すがめ)であったから、出世してからは「独眼竜」と呼ばれるようになり、その名前は内モンゴルに轟いていた。 — 欧陽脩、『新五代史』巻四・唐本紀第四
眇の意味は片方の目が異常だったということであるが、史書の記載も分かれており具体的には後述のように斜視・失明・虹彩異色症のいずれかと思われる。 乾符5年(878年)に李克用は父と共に唐軍の将の段文楚を殺害したため、唐に対して反乱を起こしたが、敗れて韃靼族の部落に逃亡した。李克用は内モンゴルの有力豪族の狩りの会の時、百歩の距離から、地面に建てた馬の鞭や、糸に吊るした針といった小さなものを矢で射て百発百中の腕前を見せつけた。「あなたは神だ」と豪族たちは震え上がったという。[5]
黄巣の乱
中和2年(882年)、唐に復帰した李克用は雁門節度使に任命され、黄巣討伐を命じられた[6]。李克用は4万の兵を率いて黄巣軍を討伐し、中和3年(883年)1月に京師東北面行営都統に任命され、2月に黄巣軍を完膚なきまで叩き潰したため、黄巣は李克用を恐れて4月に長安を放棄して東に逃走し、朱全忠の本拠地であった陳州を包囲し攻撃した[7][6]。朱全忠は李克用に援軍を求め、李克用は要請に応じて黄巣軍を再び破って陳州を救援し、さらに黄巣軍を追撃してほぼ壊滅状態にして開封に追い散らした[6]。
中和4年(884年)6月、李克用は山東で黄巣軍を完全に壊滅させ、黄巣を自殺に追い込んだ[7]。李克用は反乱軍討伐の功績により河東節度使(晋陽を中心とした一帯)に昇格し、黄巣討伐の殊勲者となった。乾寧2年(895年)には晋王に封ぜられ、山西一帯を制圧する大軍閥となった。
朱全忠との対立
黄巣の乱により実質的に唐王朝は滅び、李克用ら実力者らが唐政府の権威を利用して覇権を争い合う時代となった。李克用の最大の敵となったのが元黄巣軍の幹部であり、後に黄巣を裏切って唐側に付いて功績を挙げた朱全忠であった。
朱全忠との対立は李克用が陳州を援軍した時から既に始まっていた。それには次のような経緯がある。朱全忠は援軍してくれた李克用に礼を尽くし、李克用に救われた恩義があったため、朱全忠は李克用のために盛大な宴を開いてへりくだって応待した[6]。しかし一本気な李克用は朱全忠の存在が頭から気に食わず、この丁重な応対もかえっていやらしく見えたという[6]。朱全忠が救援してくれたことに丁重な礼を述べても、李克用は「朝廷のために賊を討っただけであり、貴殿に礼を言われる覚えはない。それに黄巣は貴殿の元の君主。さぞや戦いにくいでしょうな」と憎まれ口を叩いたという[8]。だが朱全忠は怒りを抑えて作り笑いを浮かべながら李克用を手厚くもてなした[8]。そして李克用と部下らが酩酊したのを見計らって自軍の兵を率いて李克用を襲撃した[8]。酩酊していた李克用は部下に水をかけられて目を覚ますと直ちに応戦し[8]、折からの大雷雨も幸いして朱全忠軍の包囲を破って城外に逃げ延び、ここに朱全忠と李克用は不倶戴天の仇敵同士として争うことになった[9]。
李克用は戦争には強いが、政略では朱全忠に劣り、また配下の鴉軍もその勇猛さが時に粗暴に変じたために政府中央の評判は芳しくなかった。朱全忠とは何度も激しい争いを繰り広げるが、天復元年(901年)に朱全忠に河中を抑えられたことで中央への進出が難しくなり、太原に閉じ込められた格好となる。
天祐4年(907年)、朱全忠によって唐が滅亡する禅譲劇が行われ、後梁が建てられた。だが、李克用は当然これを認めようとはしなかった。
最期
天祐4年(907年)、契丹の耶律阿保機が30万の大軍を率いて雲州に侵入した[10]。李克用は後梁の朱全忠と対峙している今は契丹とまで交戦することは得策ではないと考えて兄弟の誓いを立てて親睦を結び、共に朱全忠を討つことを誓い合った[10]。
天祐5年(908年)1月、朱全忠打倒を子の李存勗に託して死去した[11]。享年53。
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人物
李克用の軍は全て黒い衣装で統一していたことから鴉軍(あぐん)との異名があり、周りからその勇猛さを恐れられていた[6]。鴉軍来たるの報告を聞いただけで黄巣軍は崩れ立つほどその軍は精強だったと伝わる[6]。
『旧五代史』には李克用に関する伝説が書かれており、
- 「母の胎内に十三ヶ月いた。異常な出産で、危ないお産であったが、神が現れてお告げのとおりに武士たちが三回城の周りを回った所安産した」[12]
- 「生まれたときは虹の光が部屋を照らし,白い気が庭に充ち、井戸が溢れた」[13]
- 「毘沙門天を祀った祠の前で李克用が尊王済民を祈願して酒を供えた所、金のよろいをまとった神人が現れた。周囲の人は怖れて逃げ出したが李克用は平然としていた」[14]
と、李克用の周りでは数々の超常現象が起きたとも伝えられる。杉山正明は李克用は神格化されたために真の人物像がわからなくなっていると嘆いており、こらの逸話も李克用の神格化に伴って生じたものであるらしい。[15]
李克用は気前が良く豪傑気取りの人物であったために[16]生前から大変な人気があり、唐の人々は「子たるの道、臣たるの道は、すべて晋王(李克用)を手本としよう」と言っていたという。[17]また、後世の演義小説『残唐五代史演義伝』第六回では、唐の人々の間では「天下泰平で戦争をなくせるのは、陰山の碧眼鶘(へきがんこ)だけだ」という童謡が歌われていたといい、家臣がその童謡を唐の僖宗皇帝に伝えた所、「朕は碧眼鶘を知らぬが誰のことか?」と言われ、家臣は「これは李克用のことです。彼は片目が小さく緑色ですから、碧眼鶘と自称しているのです」と答え、李克用がいかに素晴らしい人物かを力説したという。
このように人気者で軍略には非常に秀でていた李克用であるが、政略や謀略では常に朱全忠や他の群雄に遅れをとった。耶律阿保機と和約を結んだ際も、家臣が耶律阿保機を虜にしてしまいましょうと進言するのを退けたばかりに、耶律阿保機は契丹に帰国すると心変わりして朱全忠に誼を通じて李克用を討とうとしたため、李克用は耶律阿保機を捕縛しなかったことを深く後悔し、恨んだと伝わる[10]。
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後世への影響
李克用は後世でも非常に人気があり、元の時代に李克用の旧領を支配したモンゴルのオングト族が末裔を称して祭祀を行っていたという。[18] また、日本の伊達政宗は、幼少時に天然痘で片目を失明し、それを恥じていたが、師の禅僧虎哉宗乙から李克用の故事を聞いて発奮し、大成したのではないかという説がある。このことから政宗は後世「独眼竜」と呼ばれたが、政宗は生前から李克用を意識して部下の鎧を黒で統一し、自らも黒い鎧を着て、印判にも竜を用いるなどしていたのではないかと歴史学者の佐藤貴浩は考察している。[19]
眇の意味を巡っての議論
前述の通り、李克用は片目が「眇(すがめ)」だったとある。この漢字は日本語の「すがめ」同様、片目が小さくやぶにらみ(斜視)であったという意味と、視力が失われていたという意味があり、どちらだったかは結論がない。史書の記載も分かれており、創作物まで含めると虹彩異色症(オッドアイ)説まで存在している。
- 正史『旧五代史』巻26武皇本紀下に載っている逸話では、片目が見えなかったようである。
- 旧五代史の後に編纂された正史『新五代史』では単に「其一目眇」とのみある。
- 『資治通鑑』の胡三省の注では「眇,彌沼翻,一目小也。」とあり、目が小さいのだとしている。
なお、小説では別の話がある。
- 羅貫中『残唐五代史演義伝』第六回では「此人は生得、左眼が大にして右眼が小さく黃睛綠珠たり、人は皆な称して獨眼龍となし、自ら号して碧眼鶘という」としており、片目が小さくオッドアイであったとする。
宗室
后妃
- 秦国夫人劉氏(正妻、李克用の死後に皇太妃)
- 次妃曹氏(貞簡皇后)
- 魏国夫人陳氏
- 夫人張氏(李匡籌の妻)
兄弟
- 弟:李克譲、李克恭、李克寧
- 従弟:李克脩
男子
女子
仮子
脚注
参考文献
関連項目
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