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治療計画用CT
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治療計画用CT(ちりょうけいかくようシーティー、英: planning CT)は、放射線治療の線量計算と照射設計に用いる撮影専用CTである。診断CTと異なり、幾何学的正確性と体位再現性、DICOM-RTを介したワークフロー連携を重視する。大口径ガントリや平坦天板、位置決めレーザー、4DCTなどを備え、輪郭描出・画像登録・線量評価の基盤データを提供する。適切な患者固定や呼吸管理と組み合わせることで、放射線治療の品質と安全性を高める。
定義
治療計画用CTは、放射線治療計画に必要な体位・幾何情報を高精度かつ再現良く取得することを目的とする撮影専用CTであり、輪郭描出と計画立案の出発点となる基盤データを提供する[1]。診断CTと比べ、画像の幾何学的正確性や位置再現性、治療計画システム(TPS)との相互運用性が重視され、取得画像とともにRT Structure Set(RTSTRUCT)/RT Plan(RTPLAN)/RT Dose(RTDOSE)などのDICOM-RTオブジェクトを介して計画ワークフローに連携する[2][3][4][5]。また、施設の標準化や専門職の責務を定める実務指針により、CTシミュレーションの適切な運用と品質維持が求められる[6]。必要に応じて他モダリティ画像との登録・統合が用いられるが、これは画像融合の手順・精度管理の枠組みの中で扱われる[7]。
装置構成
治療計画用CTは、幾何学的精度と体位再現性を最優先に設計される。典型的には大口径ガントリ(患者固定具や体幹フレームに対応)と、治療寝台に近似した平坦天板を備え、天板のインデキシングにより位置合わせの再現性を高める[1]。室内の三次元位置決めレーザーはアイソセンタ基準で整合され、照射室でのセットアップと一貫性を持たせる[1]。広視野(ワイドFOV)、薄スライス撮影などの画像特性は輪郭描出の信頼性向上に寄与し、装置・システム全体のQA枠組みの中で管理される[8][1]。呼吸性移動を扱うための4DCT取得や呼吸ゲーティング支援機能は胸腹部で重要である[8]。画像登録や位置合わせワークフローはTPSやIGRTと整合しており、装置側の幾何学校正・スケール精度・回転中心精度を確保することが前提となる[1][7]。施設運用面では、画像誘導放射線治療(IGRT)実施基準と整合する天板・固定具の互換性、照合用マーカーやサーフェスガイド放射線治療(SGRT)との連携が推奨される[9][10]。これらの構成要件は、計画CTの撮影段階から治療室での再現性を確保し、誤差伝播を最小化するための基盤である[1][8]。
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CT値–電子密度変換と校正
治療計画では、CTのハウンスフィールド単位(HU)を相対電子密度に写像する校正が必須であり、元素組成と質量密度を用いて理論的HUを再現するストイキオメトリ法(stoichiometric method)が広く採用される[11]。実務では、組成既知のファントムを用いて装置・管電圧ごとにHU–電子密度テーブルを作成し、経時変動を含む許容範囲を管理する。線量計算誤差を抑えるため、表の許容偏差や再校正の基準値を設け、定期点検で検証することが推奨される[12]。粒子線領域では、阻止能比への変換に特化した校正法が整備され、組成推定と管電圧依存性の評価を体系化している[13]。また、低Z・高Z材料の混合や金属近傍ではHUの系統誤差が拡大し得るため、撮影条件最適化や補正の適用可否を含めて校正の不確かさを評価する[14]。これらのプロセスは、TPSのコミッショニングおよびQAの枠組みの中で、独立確認と定期的再評価を含めて実施される[15]。
線量計算と治療計画への連携
治療計画は、計画CT上での標的体積(腫瘍体積GTV/臨床標的体積CTV/計画標的体積PTV)とリスク臓器(OAR)の輪郭描出に始まり、DICOM-RTの構造セット(RTSTRUCT)として保存・共有される[3][2]。画像間の位置合わせは剛体登録・変形登録を適切に用い、輪郭や線量情報の伝達誤差を抑える[7]。ビーム幾何学、ウェッジ、多分割コリメータ(MLC)、最適化条件などの計画情報はRT Plan(RTPLAN)として定義され[4]、線量計算は不均質補正を含むアルゴリズム(ペンシルビーム法、コンボリューション/スーパーポジション法、モンテカルロ法)で実施される[16][17]。得られた三次元線量分布はRT Dose(RTDOSE)として出力され、線量体積ヒストグラム(DVH)や線量制約に基づく評価・改良を経て、照射可能な最終計画へと確定する[5][2]。
患者固定と位置決め
放射線治療における患者固定と位置決めは、治療計画時の体位を治療実施時に再現し、幾何学的誤差を最小化するための基盤である[18]。部位別には、頭頸部で熱可塑性マスクやバイトブロック、肩牽引具の組合せ、体幹で真空クッションやボディフレーム、四肢でモールド固定具などを用い、再現性を高める[10][18]。固定具は平坦天板にインデキシングし、基準点や体表マークの取り扱いを標準化して記録することが推奨される[10][9]。呼吸性移動が大きい部位では、体位の再現に加えて深吸気息止め(DIBH)、呼吸ゲーティング、腹部圧迫などの運用を適切に選択し、4DCTによる運動評価と併用する[19]。近年はサーフェスガイド放射線治療(SGRT)により、体表の三次元情報を用いたセットアップと治療中監視が可能となり、マーカー依存を低減しつつ精度を確保できる[20]。位置確認の頻度・閾値、記録とレビュー、チーム教育などの体制整備は実装の前提であり、学会の実践指針に従い施設内手順を整える[9][10]。
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脚注
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