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漸近展開
与えられた関数をより簡単な形をした関数列の級数として近似すること ウィキペディアから
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漸近展開(ぜんきんてんかい、英: Asymptotic expansion)とは、与えられた関数を、より簡単な形をした関数列の級数として近似することをいう。テイラー展開は漸近展開の特別な場合であるが、漸近展開で得られた級数の値は、必ずしも元の関数の値に収束するとは言えない。しかし、関数の性質を調べる際、元の関数の形では扱いが難しい場合、漸近展開によって元の関数を級数の形で近似することにより、関数の性質が得られることがある。漸近展開は解析学 (例えば複素解析[1]や特殊関数に対する数値解析[2]など) では重要な手法の一つであり、確率論の基礎として用いることがある[3]。
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漸近級数
要約
視点
関数 を定義域が実数の領域で定義された関数とし[注釈 1]、 を の定義域内の点とする。
関数列 が次の条件を満たすとき、漸近関数列という。
実数列 が存在して、任意の正整数 n に対し
が成立するとき、
を の漸近級数といい、
と表す。
さらに、漸近級数が次の条件を満たすとき、ポアンカレの意味での漸近級数または狭義の漸近級数という[4]。
- 任意の正整数 n、 の定義域内の x に対して
- が成立する。
漸近関数列が または の形の漸近級数を、漸近冪級数という。
与えられた漸近関数列を用いて、 の漸近級数を得ることを漸近展開といい、 の漸近級数 が存在する場合、 は漸近展開
を持つという。
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性質
要約
視点
一意性
任意の関数 に対して、 に対する漸近級数は存在しても唯一とは限らない。例えば
しかし、与えられた漸近関数列に対する漸近級数は存在しても唯1つしか存在しない。従って、ある点でテイラー展開された冪級数は、その点での唯一の漸近冪級数である。
さらに、漸近級数の各係数は
で与えられる。
和と積
点 の近傍で定義された関数 は、漸近関数列 に対する漸近展開
を持つとする。このとき、任意の α、β に対して
が成立する。
さらに、漸近関数列が である場合、
が成立する。
項別微分
一般に、関数を無限級数で表したとき、項別微分した関数が元の関数を微分したものと一致しない様に、漸近級数も項別微分した級数は、元の関数を微分した関数の漸近展開になるとは限らない。 項別微分した関数が漸近展開したものにあるかは、元の関数や漸近関数列によって決まる。
漸近関数列 は各 n に対して、 の近傍で微分可能であり、関数列 が漸近関数列である場合、以下のことが成立する。
は、 の近傍で微分可能であり、
となる漸近展開を持ち、 が漸近関数列 を用いて漸近展開することができるのであれば
が成立する。
項別積分
とし、 の漸近展開を
とする。定積分
が各 n に対して存在するならば、
が存在して、
が成立する。
のときは、漸近関数列によっては上式のままではうまくいかない。 例えば、漸近級数が漸近冪級数
を持つ場合、
とする必要がある。
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例
要約
視点
スターリングの公式の一般化
という漸近展開を持つ。特に、x が正整数のときは階乗の漸近展開を与え、スターリングの公式よりも精密な近似級数になっている[5]。
合流型超幾何関数
合流型超幾何関数 (en:confluent hypergeometric function):
補誤差関数
補誤差関数
は、以下の様な漸近展開を持つ[10]。
指数積分
の漸近展開は、
で与えられる。
ラプラス変換
を何回でも微分可能な関数としたとき、 のラプラス変換
の漸近展開は、
で与えられる。
微分方程式の解
の解は
で与えられ、
。
という漸近展開を持つ。しかし、上式の右辺は任意の で収束しないが[注釈 2]、右辺の級数は上記の微分方程式を満たす。
求積法等で厳密解を求めることが出来ない微分方程式に関しても、漸近展開によって近似解を得られる場合があり、これにより解の挙動を調べることができる。
調和級数
調和級数は
という漸近展開を持つ[11]。ここで、はオイラー・マスケローニ定数、はベルヌーイ数である。
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脚注
学習用図書
関連項目
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