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第XII因子

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第XII因子
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第XII因子(だい12いんし、: factor XII)またはハーゲマン因子(Hageman factor)は、血漿タンパク質である。セリンプロテアーゼ(またはセリンエンドペプチダーゼ)に分類される酵素第XIIa因子酵素前駆体である。ヒトでは、第XII因子はF12遺伝子にコードされる[5]

概要 F12, PDBに登録されている構造 ...
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構造

ヒトの第XII因子は596アミノ酸長で、重鎖(353残基)と軽鎖(243残基)という2本の鎖がジスルフィド結合で連結された構造をしており、約80kDaである。重鎖は2つのフィブロネクチン型ドメイン(I型II型)、2つのEGF様ドメインクリングルドメイン英語版プロリンリッチ領域を含んでおり、軽鎖はプロテアーゼドメインを含んでいる。近年、重鎖のフィブロネクチンI型ドメイン-EGF様ドメインの構造がX線結晶構造解析によって解かれた[6][7]。第XII因子の軽鎖の構造は、不活性状態と、阻害剤に結合した活性化状態が決定されている[8][9][10]

機能

第XII因子は肝臓で産生される[11]

第XII因子は血液凝固カスケードの一部をなし、in vitroでは第XI因子プレカリクレイン英語版を活性化する。第XII因子自身はガラスなどの負に帯電した表面によって第XIIa因子へと活性化され、これが内因性経路の開始点となる[要出典]。第XII因子は実験室での研究で血液凝固カスケードを開始させるためにも利用される[12]

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血液凝固カスケード

In vivoでは、第XII因子はポリアニオンとの接触によって活性化される。活性化された血小板ポリリン酸などの無機ポリマーを分泌する。ポリリン酸との接触は第XII因子を活性化し、血栓形成に重要な内因性経路を介してフィブリンの形成を開始する。ホスファターゼによるポリリン酸の標的化によって、マウスでは活性化された血小板の凝固促進活性の干渉がみられ、血小板によって誘導される血栓形成が阻害された。ヘルマンスキー・パドラック症候群英語版の患者でみられる血漿凝固の欠陥はポリリン酸の付加によって回復し、このことはこの無機ポリマーがin vivoでの内在性第XII因子の活性化因子であることを示している。血小板のポリリン酸にって駆動される第XII因子の活性化は、一次止血(血小板血栓英語版の形成)から二次止血(フィブリンメッシュの形成)への接続を担う[13]

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遺伝子

第XII因子の遺伝子は、5番染色体の長腕の先端(5q33-qter)に位置している[5]

疾患における役割

第XII因子欠乏症は、常染色体劣性遺伝する希少疾患である[14]。他の凝固因子欠乏症とは異なり、第XII因子欠乏症は完全に無症候性で、過剰な出血を引き起こすことはない[14]。しかし、第XII因子の遺伝子を欠失したマウスは血栓形成に対する感受性が低い。このタンパク質は、血管壁損傷の最初の閉塞よりも血栓形成の後期の段階に関与しているようである[15]

第XII因子はin vitroでの活性化部分トロンボプラスチン時間の測定における血栓形成に重要な役割を果たす。第XII因子欠乏症患者では活性化部分トロンボプラスチン時間の顕著な延長がみられ、通常血友病A血友病B第XI因子欠乏症で見られる以上に延長される[14]。そのため、第XII因子欠乏症に関する主要な懸念は、不要な検査、ケアの遅れ、不安などであり、通常ではない実験室での結果によっても促される[14]。これらはすべて、その遺伝形式も含めて、他の内因系の因子、プレカリクレイン英語版(フレッチャー因子)と高分子キニノゲン英語版にもあてはまる[14]。第XII因子はプラスミノゲンを活性型で線維素溶解性のプラスミンへ転換する触媒の1つであるため、静脈血栓塞栓症のリスクを高める素因となる可能性がある[16]

第XII因子はエンドトキシン、特にリピドAによっても活性化される。

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歴史

37歳の鉄道制動手ジョン・ハーゲマン(John Hageman, 1918)は出血症状がないにもかかわらず、彼のルーチンの術前血液試料が試験管内で凝血時間の延長を示した。このことから1955年に第XII因子(ハーゲマン因子)が発見された。その後、ハーゲマンは血液学者Oscar Ratnoffによる検査が行われ、ハーゲマンはこれまでに同定されていない凝固因子を欠損していることが判明した[17]。Ratnoffはハーゲマン因子欠乏症を有する関係者を調査した後、それが常染色体劣性遺伝する異常であることを発見した。逆説的なことに、ハーゲマンは1968年に業務上の事故の後に肺血栓塞栓症のために死去した。その後の症例研究と臨床研究によって、第XII因子欠乏症と血栓症との関係が示された。

出典

関連文献

外部リンク

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