トップQs
タイムライン
チャット
視点
脳由来神経栄養因子
ウィキペディアから
Remove ads
脳由来神経栄養因子(のうゆらいしんけいえいよういんし、BDNF; 英: Brain-derived neurotrophic factor[1])は、標的細胞表面にある特異的受容体TrkBに結合し、神経細胞の生存、成長、シナプス機能の強化などを調節する、神経細胞の成長に不可欠な神経系の液性蛋白質である。
BDNFは、神経栄養因子の一種であり、標準的な神経成長因子と関連している。神経栄養因子は脳や末梢神経系で発現し、BDNFタンパク質の合成は神経細胞およびグリア細胞の細胞体で行われる。BDNFの分泌は活動依存的で、シナプス前およびシナプス後端から分泌されることがある。[2]
BDNFは、ヒトでは、BDNF遺伝子から生成される蛋白質である[3][4][5]。ヒトでは、BDNF遺伝子は染色体11の短腕(p)14.1の位置、すなわち11p14.1に位置しており、この遺伝子は複数の転写物を生成し、さまざまな組織で発現しているが、特に中枢神経系(CNS)で高いレベルで発現している。[2] この遺伝子は、発展、形態学、シナプス可塑性、長期増強(LTP)、および脳機能に影響を与えることが示されている。[2]
BDNFは、興奮性シナプス活動、ホルモン、神経ペプチドなど、さまざまな刺激に反応して分泌され、そのダイナミックな調節と環境への応答性が強調されている。BDNFは、ドパミン作動性、セロトニン作動性、GABA作動性、コリン作動性神経細胞の形成および維持に重要な役割を果たし、シナプス内で効率的な刺激伝達を促進する。[2]
BDNFの発現は、BDNF遺伝子の反対鎖から転写されるBDNF反義(BDNF-ASまたはBDNFOS)という長鎖非コードRNA遺伝子によって調節される。BDNF mRNAとBDNF-ASは共通の重複領域を共有し、二本鎖構造を形成しており、相互作用の可能性を示唆している。[2]
Remove ads
BDNFの機能
BDNFは、中枢神経系や末梢神経系の一部のニューロン(神経単位)に作用し、今あるニューロンが維持されるようにサポートし、ニューロンの成長を促し、新しいニューロンやシナプスに分化することを促す[6][7]。脳の中では、BDNFは、海馬、大脳皮質、大脳基底核で活性化されている。それらの部位は、学習、記憶、高度な思考に必須の領域である[8]。BDNFは、網膜、運動ニューロン、腎臓、唾液腺、前立腺にも作用する[9]。
BDNFそれ自体は、長期記憶に重要である[10]。哺乳類の脳にある大多数のニューロンは、胎児期に形成されるのであるが、成人の脳の一部分では、神経幹細胞から、神経発生(neurogenesis)として知られるプロセスにより、新しいニューロンを成長させる能力を維持している。神経栄養因子は、神経発生(ニューロジェネシス)を刺激し、コントロールする化学物質である。BDNFは、最も活性のある神経栄養因子の一つである[11][12][13]。生まれつきBDNFを作ることができないネズミは、脳や感覚神経の発達障害を起こし、通常は出生して間もなく死亡する。このことは、BDNFが正常の神経発達に重要な役割を果たしていることを示唆している[14]。BDNFに構造的に関係している他の重要な神経栄養因子には、NT-3、NT-4、NGFがある。
BDNFノックアウト・マウスの表現型は重篤であり、出生後早期に死亡する。BDNFノックアウト・マウスでは、感覚神経が消失し、協調運動、バランス運動、音の聴取、味覚、呼吸運動を行うことができない。BDNFノックアウトマウスは、小脳に異常があり、交感神経のニューロンの数が増加している[15]。
ある種の身体的運動は、ヒトの脳において、BDNFの合成を3倍程度にまで増加させる。この現象は、運動による神経発生や、運動による認知機能改善の仕組みの一つである[16][17][18][19]。ナイアシン(ビタミンB3)は、BDNFと受容体TrkBを上方制御する[20]。
Remove ads
疾患とBDNF
アルツハイマー病のある人では、脳の組織中のBDNFは低下している。研究によれば、神経栄養因子は、アルツハイマー病のβアミロイド蛋白の毒性に対して、抑制的に働く。
現在、BDNFに関しては自閉症や痛風との関係等、神経疾患治療に応用可能な蛋白質として着目されている。
また、広島大学の栗原英見教授らによってBDNFが歯の関連細胞や血管の増殖、分化を促進することが発見され、歯周再生への関与が見いだされた[21]。すでに動物実験において、BDNFの投与した歯周病モデル動物が健常動物と同様の歯周の状態に回復させることに成功している。一般開業医でも可能な簡単な手術により、歯周病でダメージを受けた歯周を再生できる治療を目指し開発が進行中であり、国際特許を出願をしている。
文献
外部サイト
Wikiwand - on
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Remove ads