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腎細胞癌

腎臓に発生する悪性腫瘍の一つ ウィキペディアから

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腎細胞癌(じんさいぼうがん、: Renal cell carcinoma)は、腎臓に発生する悪性腫瘍のひとつであり、尿細管上皮細胞ががん化したものである。

別名グラヴィッツ腫瘍(Grawitz's tumor)。

分類

  • 淡明細胞型 (clear cell)
    最も一般的で、腎細胞癌の70%を占める。その名の通り光学顕微鏡で細胞質が明るい腫瘍細胞として見える。近位尿細管から生じる。染色体3pの欠損、VHL遺伝子の欠損がしばしば認められる。
  • 多房嚢胞性
  • 乳頭状 (papillary)腎癌の10~15%。遠位尿細管から生じる。
  • 嫌色素性 (chromophobe)腎癌の4%。集合管の間在細胞由来と考えられている。
  • 集合管癌集合管上皮細胞から生じる。
  • 腎髄質癌
  • Xp11.2/TFE3転座型腎細胞癌
  • 神経芽腫関連腎癌
  • 粘液管状紡錘細胞癌
  • 紡錘細胞癌本来は上記いずれかの組織型であったものが、あまりにも脱分化が進んで元々の組織型が判らなくなったものである。

疫学

腎細胞癌は男性5.6/100,000人、女性4.1/100,000人の確率で見られる。20歳までに見られることは稀で、小児科腎腫瘍では2%を占めるのみである。40歳以降、特に60代から70代にかけて好発する。von Hippel-Lindau病などの遺伝病との関係も示唆されているが定かではない。

喫煙は本症の主要な危険因子であり,30%増大させる。その他に肥満(特に女性)、カドミウム、一部の解熱鎮痛薬の長期使用(アセトアミノフェンフェナセチン)なども本症の危険因子である。

症状

  • 血尿
  • 側腹部腫瘤
  • 疼痛
  • 体重減少
  • 腹痛
  • 食欲不振
  • 低色素性貧血
  • 肝機能障害

合併症

腫瘍随伴性症候群

本症は転移が多いことで有名な悪性腫瘍であり、特に肺転移、骨転移、肝転移を起こしやすい。なかでも肺転移が最も多い。[1]

検査

血液検査
腹部CT
腹部MRI
腎エコー(超音波検査)

現在、腎癌のスクリーニング検査として効率的で、早期発見を可能とする特異的腫瘍マーカーは存在しない。腎癌のスクリーニングには腹部超音波検査が汎用されており、腎腫瘤病変が疑われた場合、確定診断にダイナミック造影CT検査が有用である。

治療

要約
視点

外科治療

  • (根治的)腎摘除術
  • 腎部分切除術

【腎摘除術と腎部分切除術の選択】

 T1a(腫瘍径が4cm以下のもの)では両術式の制癌性は同等[2]で 、腎摘除術では腎機能低下など合併症のために全生存率が低下する[3]。これらをはじめとした複数の研究報告を踏まえ、以下の治療指針が原則になっている(腎癌診療ガイドライン2017年版 2019年改訂版)。

  • T1aにはできる限り腎部分切除術を行う。
  • T1b(腫瘍径が4cmを超えるが7cm以下のもの)に対しても、可能であれば腎部分切除術を選択する。
  • T2以上(腫瘍径が7cmを超えるもの)では腎摘除術を行う。

また、単腎であったり、両腎に腫瘍が存在していたりする場合は、腎機能温存のために部分切除術を考慮する必要がある。

【転移を有する患者における原発巣摘除の意義】

 CARMENA試験において、スニチニブ単独での全生存期間は腎摘除後にスニチニブを行った場合に劣らないことが示された[4]。SURTIME試験では、腎摘除後にスニチニブを投与する群とスニチニブ3サイクル実施後に腎摘除を行いスニチニブを継続する群が比較され、主要評価項目の無増悪生存期間では両群間に差はなかったが、副次評価項目の全生存期間はスニチニブ3サイクル実施後腎摘除群が優れていた[5]。ただし本試験は症例登録に難航し、途中で登録を打ち切ったことに注意が必要である。一方、免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合の原発巣摘除の意義については、現時点ではエビデンスはない。腎癌診療ガイドラインでは、Poor risk患者やPerformance Status(PS)不良などの予後不良例では即時腎摘除術は慎重に判断すべきであり、PS良好や転移巣が小さいなどの予後良好例においては、十分な検討の上原発巣摘除を考慮すべきとされている。

【転移を有する患者における転移巣摘除の意義】

 後ろ向き研究では、転移巣切除による全生存期間の延長を示唆する結果が示されているが、バイアスに注意が必要である。不完全切除や脳転移、CRP高値、high grade腫瘍などが予後不良因子とされ[6]、このような患者に対しては、転移巣切除の意義は乏しい。腎癌診療ガイドラインでは、PS良好で、無病期間が長く、完全切除が可能な場合など、注意深く選択された患者において生存率の向上が期待されるとしている。


薬物療法

【転移性腎癌のリスク分類】 様々なリスク分類が存在するが、薬物療法を施行する上で重要なのは、Memorial Sloan Kettering Cancer Center (MSKCC)分類[7]とInternational Metastatic Renal Cell Carcinoma Database Consortium (IMDC)分類[8]である。MSKCC分類はサイトカイン療法を受けた転移性腎癌患者の予後因子を、IMDC分類はVEGF (Vascular Endothelial Growth Factor)標的療法を受けた転移性腎癌患者の予後因子をもとに考案された。現在は免疫チェックポイント阻害薬を中心とした一次治療体系になっているが(後述)、これらの臨床試験で用いられたIMDC分類を用いて評価し、リスクに応じて薬剤を選択することがガイドラインで推奨されている[9]

さらに見る 初診時から治療開始まで1年以内, Karnofsky Performance Status <80% ...

ULN, upper limit of normal(正常上限); LLN, lower limit of normal(正常下限)

いずれの分類においても、当てはまる予後不良因子が0項目を低リスク、1または2項目を中リスク、3項目以上を高リスクと評価する。


日本において推奨されている薬物療法(腎癌診療ガイドライン2017年版 2020年改訂版[10]

さらに見る 分類, 推奨治療薬 ...


さらに見る 分類, 推奨治療薬 ...


さらに見る 分類, 推奨治療薬 ...


海外(主に米国)において推奨されている薬物療法[11]

さらに見る 分類, 推奨レジメン ...

¶本邦未承認薬


さらに見る 分類, 推奨レジメン ...

¶本邦未承認薬


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参考文献

脚注

外部リンク

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