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蕎麦の殿様

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蕎麦の殿様』(そばのとのさま)は、古典落語の演目。 別題『そば殿』(そばとの)『お蕎麦の殿様』(おそばのとのさま)[1]

蕎麦打ちに凝った殿さまが、出来のわるい蕎麦をむりやり家来に食わせ、のきなみ病人にしてしまう、という内容。

あらすじ

時は江戸時代。ある藩に、若い殿様がいた。殿さまはある日、ご親戚筋に呼ばれた饗応の席で、アトラクションに演じられた蕎麦打ちの実演に感心し、自分もやってみたくなった。

殿さまはお城に帰ると、さっそく家来一同を集め、自ら打った蕎麦の試食会を開催する。しかしそもそも普段から料理の経験なんかない殿様が、見よう見まねで料理のうちでも難しい蕎麦打ちをして、上手くいくわけがない。できあがった蕎麦はぐっちゃりした、まるでヘドロのような物体であった。見ていた家来一同、食べる前から生きた心地がしない。いざ食してみると案の定、仕上がりは最悪だった。殿さまの前でまずいとも言えず無理やり腹につめこんだご家来衆はその晩のきなみ腹をこわし、ひと晩中トイレに通ったあげく、翌日青い顔をして出勤してきた。 さてお城に出てみると、殿さまは今日も蕎麦をお打ちになり、家来一同にお振る舞いくださるという。

「昨日の不出来よりご経験になり、本日のは幾分なりとも上首尾な出来にございましょうや」と聞いたところ、殿は答えた。「うむ、いかなるわけか、昨日より不出来じゃ。しかしせっかくそれがしがそなたら家臣一同のため、じきじき打った蕎麦、我慢して食せ」

嫌とは言えないのが勤めの身。一同は「はっ、ありがたき幸せに存じまする」と泣きながら食べ始めたが、とうとうたまりかねた一人が訴えた。

「これ以上、上様のそばを下されるなら、ひと思いに切腹をお申しつけ願いまする!」

「なに食えないと? そのような不届きものは、手打ちに致す!!」

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バリエーション

東大落語会『落語事典 増補』所収のあらすじでは、殿様が蕎麦に凝る前にに凝るという下りがあり、最後は家臣の申し出で蕎麦打ちはやめたが、その代わりに精進料理を作り始めるという形で、落ち(サゲ)がないとしている[1]6代目三遊亭圓生の『円生全集』所収の口演がこのラストを使用する一方、噺の前半では世情に通じない殿様のエピソードをいくつかつなげるという内容になっている[2]。同書所収の圓生と飯島友治の対談で、圓生も「サゲが無いんです」と述べている(圓生はこの演目を師匠の4代目橘家圓蔵から直に教えられたという)[3]

『落語事典 増補』は、「小さんの速記」では筆頭が上記の切腹願いを申し出るというラストであることを引用して「ここで切ればサゲにならないこともない」と記している[1][注釈 1]

『名人名演落語全集 第4巻 (明治篇 4)』(1982年)所収の2代目三遊亭小圓朝の口演速記では、家臣から苦情を聞いた上席家老(療養のためしばらく登城していなかった)が、殿様に蕎麦打ちをやめさせるため「家来が主人に蕎麦を作らせて食べるのはもってのほかだが、そうなっているのは家来が蕎麦を喜んで出仕するからだ。だから蕎麦打ちをやめると言って失望させればよい」と進言し、実際にそのようにことを進めたものの、聞いた家来は(嬉しさのため)涙をこぼしたりしたため、殿様が「落涙したくなるほど蕎麦が食べたいか」と尋ね、家来が(家老から「決して蕎麦を嫌がるそぶりを見せてはならない」と言われていたため)その通りと答えると、殿様は「ではすぐに蕎麦を打ってつかわす」と述べて「いえ、それだけはおとどまりを願います」という反応で落ちとなっている[5]

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脚注

参考文献

関連項目

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