重力モデル

重力モデル（じゅうりょくモデル、英語: Gravity model）は、都市間・地域間での流動を説明するときに利用できるモデルで、物理学における万有引力の法則と類比される^[1]。社会科学において、流動（貿易量、人口移動、資金循環など）の分析を行う上で利用されている^[2]。

2地点${\displaystyle i}$, ${\displaystyle j}$における重力モデルは、以下の式で表される^[3]。

${\displaystyle I_{ij}=G{\frac {P_{i}P_{j}}{{d_{ij}}^{b}}}}$

ただし、${\displaystyle I_{ij}}$は空間的相互作用、${\displaystyle P_{i}}$は地点${\displaystyle i}$の人口、${\displaystyle P_{j}}$は地点${\displaystyle j}$の人口、${\displaystyle d_{ij}}$は2地点間距離、${\displaystyle G}$は定数、${\displaystyle b}$は距離パラメータである^[1]。なお、常に${\displaystyle b=2}$である必要はない^[3]。

人文地理学では、交通流動の研究で重力モデルが用いられてきた^[4]。このほか、商業地理学において商圏を求めるときに重力モデルを応用することができる^[5]。

事例

貿易における重力モデル

→詳細は「貿易における重力モデル」を参照

例えば、貿易における重力モデルは、次のように表すことができる^[6][7]。

${\displaystyle F_{ij}=G{\frac {M_{i}M_{j}}{D_{ij}}}}$

ここで、 F_ij は2国間の貿易量、 M_i , M_j はそれぞれの国の経済規模、 D_ij は距離、 G は定数、という具合になる。なお、この式はニュートンの式と異なり距離が2乗になっていないが、冪乗の指数や係数などは扱う分野・事例ごとに異なっている。

小売引力モデル

→詳細は「en:Reilly's law of retail gravitation」を参照

小売引力モデル（こうりいんりょくモデル）は、ウィリアム・J・ライリーにより提唱されたモデルである^[8]。

都市A、都市Bの中間にある都市Cを考え、都市Cの住民による都市A・Bでの小売売上高を${\displaystyle B_{a}}$・${\displaystyle B_{b}}$で表す^[8]。重力モデルを踏まえると、以下の式が成立する^[8]。

${\displaystyle {\frac {B_{a}}{B_{b}}}={\frac {\frac {P_{a}P_{c}}{d_{ac}^{b}}}{\frac {P_{b}P_{c}}{d_{bc}^{b}}}}={\frac {P_{a}}{P_{b}}}{\left({\frac {d_{bc}}{d_{ac}}}\right)}^{b}}$

この式は、ライリーの小売引力の法則（Reilly's law of retail gravitation）とよばれる^[9]。

もし、${\displaystyle {\frac {B_{a}}{B_{b}}}=1}$が成立する場合、${\displaystyle B_{a}=B_{b}}$が成り立つ^[8]。すなわち、都市Cは2都市A・Bの商圏の境界上に位置することとなる^[10]。

問題点

重力モデルには複数の問題点が存在し、特に、現実の流動に対して重力モデルの精度が低いことが大きな問題である^[11]。これらの欠点を解消するモデルとして、アラン・G・ウィルソン（英語版）により、エントロピー最大化モデル（Entropy Maximising Models）が考案された^[11]。