直感
真の因果関係が次の式で与えられると仮定する。

ここで、
はパラメータ、
は従属変数、
は独立変数、
は誤差項であり、
が
に与える影響(
の推定値)を検討する。
除外変数バイアスが線形回帰に存在するには、2つの条件が当てはまる必要がある。
- 除外変数は、従属変数の決定要因である、すなわち真の回帰係数が非ゼロ
- 除外変数は、独立変数と相関している、すなわち
が非ゼロ)
回帰から
を省略し、
と
の関係が次のようになるとする。

ここで、
はパラメータ、
は誤差項である。
2番目の方程式を最初の方程式に代入すると、

を
のみで回帰する場合、この最後の方程式が推定され、
の回帰係数は実際には
の推定値ということになる。
の
への直接効果
ではなく、間接効果(
の
への効果
と
の
への効果
との積)との和になる。したがって、回帰から変数
を省略することにより、 偏微分ではなく全微分を推定したことになる。
も
も非ゼロであれば、両者は異なる。
バイアスの向きは
の正負、バイアスの大きさは
の絶対値によって求められる。
詳細な分析
例として、次の形式の線形モデルを考える。

ここで、
- 列ベクトル
は時刻
ないし被験者
で観測された
個の独立変数の値
- 列ベクトル
は推定すべき観測不可能な
個のパラメータ(
の各独立変数の応答係数)
- スカラー
は時刻
ないし被験者
で観測されたもう一つの独立変数の値
- スカラー
は推定すべき観測不可能なパラメータ(
の応答係数)
は時刻
ないし被験者
に対応する観測不能である誤差項であり、
および
を条件として期待値 0 の確率変数の観測不可能な実現値。
は時刻
ないし被験者
で観測された従属変数
と添え字のついた全ての変数の観測値を集め、それらを積み重ねて、行列 X とベクトル y、z、u を得る。
![{\displaystyle \mathbf {X} =\left[{\begin{array}{c}\mathbf {x} _{1}^{\top }\\\vdots \\\mathbf {x} _{n}^{\top }\end{array}}\right]\in \mathbb {R} ^{n\times p}}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/7e3904d6999f42485c202bfb9b1078c9b0daf1a5)
と
![{\displaystyle \mathbf {y} =\left[{\begin{array}{c}y_{1}\\\vdots \\y_{n}\end{array}}\right],\quad \mathbf {z} =\left[{\begin{array}{c}z_{1}\\\vdots \\z_{n}\end{array}}\right],\quad \mathbf {u} =\left[{\begin{array}{c}u_{1}\\\vdots \\u_{n}\end{array}}\right]\in \mathbb {R} ^{n\times 1}}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/8165e84aabab3b2252c1c39feac90e9719f5d1c4)
独立変数 z が回帰から省略されている場合、他の独立変数の応答係数の推定値は、通常の最小二乗計算によって与えられる。

ここで、
記号は行列の転置を意味し、-1の上付き文字は逆行列を表す。
仮定された線形モデルに基づいて y を代入すると、

は
とは相関しないので、期待最終項は期待値には影響しない。残りの項を整理すると

右辺第2項が除外変数バイアスであり、除外変数 z が行列 X に含まれる変数のいずれかと相関している場合(
の場合)非ゼロである。