トップQs
タイムライン
チャット
視点

離散要素法の非日本人研究者一覧

ウィキペディアから

Remove ads

離散要素法の非日本人研究者一覧 (りさんようそほうのひにほんじんけんきゅうしゃいちらん、英: List of non-Japanese researchers in the discrete element method)は、 離散要素法(Discrete Element Method, DEM)の開発および応用に顕著な貢献を行った日本人以外の研究者を概説する一覧である。

本項目では、理論・数値手法の構築、顆粒体・粉体工学や岩盤力学への応用、大規模数値シミュレーションやマルチスケール解析など、 DEM の発展史の中で国際的にしばしば引用される研究者を中心に取り上げる。日本人研究者(辻裕ほか)は本項目の対象外とし、 別項目で扱うことを想定している。

Remove ads

概要

離散要素法(DEM)は、多数の粒子・ブロックなどから構成される系について、個々の要素に対して運動方程式を解くことで 全体の力学挙動を解析する数値計算手法である。粒子間の接触力・摩擦・粘性・粘着などをモデル化し、時間積分によって 粒子位置と速度を更新する陽解法が一般的である。

DEM は 1970 年代初頭にピーター・A・カンダル(Peter A. Cundall)により岩盤力学の問題に対して導入され、 1979 年のカンダルとオットー・D・L・ストラック(Otto D. L. Strack)による論文 「A discrete numerical model for granular assemblies」によって、「ディスティンクト/ディスクリート・エレメント法」としての 枠組みが広く知られるようになったとされる。その後、理論的な一般化(Theoretical Basis of DEM 等)や、 有限要素法との連成を扱う「有限–離散要素法(Finite–Discrete Element Method, FDEM)」、 流体との連成解析、熱・化学反応・マルチスケール解析など、多数のバリエーションが提案されている。

応用分野としては、粉体・顆粒体のハンドリングや化学プロセス、製剤工学、鉱業・資源工学、農業工学、 土質・岩盤力学、氷・雪・氷河の力学、さらには環境流体・地球科学における土石流・地すべり等の解析まで、 固体粒子群の運動を扱う幅広い領域が含まれる。

Remove ads

研究者一覧(日本人以外)

本節では、日本国籍を持たない代表的な DEM 研究者を分野・貢献内容ごとに整理する。 年代順・重要度順ではなく、主な活動領域に基づく分類である。

理論・数値手法の基礎を築いた研究者

ピーター・A・カンダル(Peter A. Cundall)

ピーター・アラン・カンダル(Peter Alan Cundall)は、イギリス出身の岩盤力学・数値解析の研究者であり、 Itasca Consulting Group の共同創設者として知られる。ロンドン大学インペリアル・カレッジで 岩盤力学に関する博士号を取得後、岩盤の変形と破壊の解析に粒子ベースの数値手法を導入した。

1979 年にオットー・D・L・ストラックと共著した 「A discrete numerical model for granular assemblies」は、粒子集合に対する離散要素法の基本的な 計算枠組みを示した古典的論文であり、Géotechnique 誌における最多引用論文の一つとされる。 同論文と関連する一連の研究は、土木・鉱山・岩盤工学における連続体解析から離散体解析への パラダイムシフトを促したと評価されている。

カンダルは、個別要素法コード UDEC・3DEC などの開発を通じて、岩盤の不連続変形解析や 落石・坑道安定性解析などに DEM を適用し、その工学的実用化を牽引した。

オットー・D・L・ストラック(Otto D. L. Strack)

オットー・ディーデリク・ルイス・ストラック(Otto Diederik Louis Strack)は、 オランダ生まれの土木工学者で、アメリカ・ミネソタ大学の教授として長年勤務した。 地下水解析における解析要素法(Analytic Element Method)で知られる一方、 カンダルとの共著により 1979 年の DEM の古典的論文を発表している。

ストラックは、岩盤・地盤中の不連続体挙動だけでなく、地下水流動や土–水連成問題に 粒子・要素ベースの数値モデルを用いることで、連続体モデルでは表現が難しい き裂ネットワークや不連続面を考慮した解析枠組みの構築に貢献した。

J・R・ウィリアムズ(J. R. Williams)

ジョン・R・ウィリアムズ(John R. Williams)は、離散要素法の理論的基礎と接触問題の数値解法に関する研究で知られる。 1980 年代から 1990 年代にかけて、DEM の理論基盤をまとめた著作 「The Theoretical Basis of the Discrete Element Method」や、接触検出と接触力計算を扱う論文 「Discrete element simulation and the contact problem」などを発表し、DEM の数学的定式化と 効率的な接触アルゴリズムに大きく寄与した。

同氏の研究は、剛体・変形体を問わず複雑形状粒子を含む DEM シミュレーションにおいて、 接触判定と接触力モデルをどのように設計するかという問題に対して、多くの後続研究の基盤を提供している。

ネナド(ニナド)・ビチャニッチ(Nenad / Ninad Bicanic)

ネナド(ニナド)・ビチャニッチ(Nenad Bicanic)は、クロアチア出身で英国で活動する構造工学・計算力学の研究者であり、 「Discrete Element Methods」と題した総説や、有限要素法との関係を整理した章を 計算力学の代表的なハンドブックに寄稿している。

ビチャニッチは、DEM を連続体力学や有限要素法の枠組みと比較しつつ、静的・動的な土・岩・構造物の挙動を どのようにモデル化すべきかを体系的に整理し、「計算力学における離散要素法」という位置づけを明確にした。

アンテ・ムンジザ(Ante Munjiza)

アンテ・ムンジザ(Ante Munjiza)は、有限–離散要素法(Combined Finite–Discrete Element Method, FDEM)の 体系化で広く知られる研究者である。著書『The Combined Finite–Discrete Element Method』では、 連続体として有限要素で表現される領域と、破壊・分離後に個別要素として運動するブロックを同時に扱う 数値手法を体系的に説明している。

ムンジザの手法は、破砕・崩壊・街路構造物の衝撃破壊など、連続体モデルだけでは扱いにくい 大変形・破壊問題において、DEM と FEM の利点を統合した枠組みとして、 岩盤工学・地盤工学・土木構造物の解析などに応用されている。

顆粒体・粉体工学への応用に貢献した研究者

コリン・ソーントン(Colin Thornton)

コリン・ソーントン(Colin Thornton)は、イギリスのバーミンガム大学・化学工学科などで活動した粉体工学の研究者で、 DEM を粉体・顆粒体の力学に適用した先駆者の一人である。

ソーントンは、粒子–粒子接触モデル、凝集性粉体の液架橋力、粒子破砕・凝集体の破壊、 DEM と数値流体解析(CFD)を連成した流動層・撹拌槽のシミュレーションなど、多岐にわたるテーマに取り組んだ。 著書『Granular Dynamics, Contact Mechanics and Particle System Simulations』は、 粒状体の微視的接触力学からマクロな連続体挙動までを DEM を通して体系化した専門書として知られる。

同氏に敬意を表して開催された国際シンポジウムを基に編集された 『Discrete Element Modelling of Particulate Media』などの書籍は、 粉体・粒状体分野における DEM 応用研究の広がりを示す代表的な出版物となっている。

ファルハング・ラジャイ(Farhang Radjaï)

ファルハング・ラジャイ(Farhang Radjaï)は、フランス国立科学研究センター(CNRS)の研究ディレクターであり、 モンペリエ大学を拠点に顆粒物質の物理と DEM 解析に関する研究を展開している。

ラジャイは、力学的に不均一な「フォースチェーン(力の鎖)」構造の解析や、 高密度粒状体のせん断変形とレオロジー、粒子形状の影響などを DEM により詳細に検討し、 顆粒体物理の分野で多くの引用を持つ。Frédéric Dubois と共著した 『Discrete-element Modeling of Granular Materials』は、顆粒体の DEM モデルとその物理的解釈を 総合的に解説した専門書で、粉体工学・地球科学・土木工学など幅広い分野で参照されている。

トルステン・ペッシェル(Thorsten Pöschel)

トルステン・ペッシェル(Thorsten Pöschel)は、ドイツ・エアランゲン=ニュルンベルク大学の マルチスケールシミュレーション研究所を率いる教授であり、計算顆粒力学の第一人者の一人である。

ペッシェルは、乾燥粒子系だけでなく、湿潤粒状体におけるキャピラリーブリッジ力を考慮した DEM 解析、 砂丘形成、顆粒ダンパー、自己組織化構造など、多彩なテーマを扱っている。 また、オープンソースコード MercuryDPM などの開発に関与し、大規模な DEM シミュレーション環境の整備にも貢献している。 著書『Computational Granular Dynamics』は、アルゴリズム・モデル化・応用例を網羅した教科書的な位置づけにある。

ステファン・ルーディング(Stefan Luding)

ステファン・ルーディング(Stefan Luding)は、オランダ・トウェンテ大学のマルチスケール力学教授であり、 接触力モデルとマイクロ–マクロ遷移に関する研究で広く引用されている。

代表的な論文「Introduction to Discrete Element Methods: Basics of Contact Force Models」では、 粒子間接触力モデル(弾性・粘性・摩擦・転がり抵抗など)の整理と、 DEM のミクロな情報から応力・ひずみなどのマクロ量を評価する手法を体系的に解説している。 そのため、DEM を用いた連続体近似や構成則の導出を試みる研究において、頻繁に参考文献として挙げられる。

大規模シミュレーション・産業応用の研究者

ポール・W・クリアリー(Paul W. Cleary)

ポール・W・クリアリー(Paul W. Cleary)は、オーストラリアの CSIRO で活動する数値シミュレーション研究者であり、 DEM とスムーズド粒子流体力学(SPH)の連成解析や、産業スケールの粒子流動解析で知られる。

クリアリーは、鉱物処理プロセス、スクリューコンベヤ、ミル・粉砕機、流動層、スラリー輸送などの 工業プロセスに DEM を適用し、プロセス設計やスケールアップに役立つ数値予測手法を提示してきた。 さらに、土石流・洪水などの環境流体・地球科学上の現象に対しても DEM/SPH を導入し、 複雑な固液混相流のシミュレーションの可能性を示している。

その他の代表的な研究者

  • C. Y. Wu – 粉体工学・ガス–固体流動における DEM 応用と、Thornton らとの共著による
 粒子破砕・流動層解析に貢献している。
  • Emilien Azéma, Vincent Richefeu など(フランス) – Radjaï とともに、多角形・多面体粒子モデルや
 高密度顆粒体のせん断レオロジー、粒子形状の影響に関する DEM 研究を行っている。
  • 他地域の研究グループ – カナダ・ドイツ・中国など各国で、粉体・鉱山・農業工学や、氷・雪・海氷などの
 応用を対象とした DEM 研究グループが多数活動しており、粒子形状、接触モデル、粗視化手法、GPU/並列計算などに関する
 研究成果が報告されている。
Remove ads

位置づけと留意点

本一覧は、離散要素法に関する文献・総説・教科書・国際会議論文集等に頻繁に現れる研究者のうち、 日本人以外を中心に代表的事例としてまとめたものである。DEM の研究コミュニティは多国籍かつ分野横断的であり、 ここに挙げた研究者以外にも、多くの研究者・技術者がソフトウェア開発・モデル化・応用研究に貢献している。

また、DEM の「発明者」あるいは「最初の応用者」を厳密に特定することは難しく、 粒子法全般(分子動力学、セルオートマトン、ラティスボルツマン法など)との関係をどう捉えるかによって評価は変わり得る。 本項目は、主として土木・鉱山・粉体工学・顆粒体物理分野での文献に基づく整理であり、 他分野での DEM 的手法の黎明期の研究者を網羅するものではない。

関連項目

外部リンク

Remove ads

脚注

参考文献

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.

Remove ads