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非相同末端結合

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非相同末端結合(ひそうどうまったんけつごう、non-homologous end joining (NHEJ)) とは、DNA二重鎖切断DNA修復メカニズムの一つである。DNA末端を直接繋ぎ合わせるため、相同組換えと異なり姉妹染色分体を必要とせず、すべての細胞周期内において機能する一方、DNA末端の接合部において変異が起こりやすい[1]。DNA破損で生じた二重鎖切断の修復のほか、抗体遺伝子の組換えシステムであるV(D)J組換え、クラススイッチ組換えで生じるDNA二重鎖切断の結合も行う[1]。NHEJは典型的なものと(classical NHEJ(C-NHEJ)と、DNA末端のマイクロホモロジーを利用する代替的なもの(alternative end joining (AEJ)、backup NHEJ (B-NHEJ)もしくはmicrohomology-mediated end joining (MMEJ))に分割され、二つの経路において関係するタンパク質が異なる[1]

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ヒトにおけるNHEJ

要約
視点

ヒトにおけるNHEJは真核生物全体で共通したメカニズムを持つが、 例えば酵母においては主要なタンパク質の一つであるDNA-dependent protein kinase catalytic subunit (DNA-PKcs)が存在しないという意味で多少異なる[2]。NHEJは三つのステップに分割でき、対合(synapsisもしくはend bridging)、末端処理(end processing)、末端結合(end joiningもしくはライゲーション)となっている。ヒトのNHEJにおいて主なタンパク質は、Ku70とKu80からなるKu異性二量体(Ku)、DNA-PKcs、Artemis、DNA polymerase μ(pol μ)、DNA polymerase λ(pol λ)、XRCC4、DNA ligase IV(LigIV)、XLF/Cernunnos(XLF)、Paralog of XRCC4 and XLF(PAXX)[1][3]だが、他にもMRN複合体[4]、53BP1[5][6]、PNKP、Aprataxin、APLF、TdT, WRNなどのタンパク質も関係していることが知られている[1]。以下に述べるNHEJのステップは典型的なものであり、時系列的にどのタンパク質がいつ招集されるか、KuがDNAに結合することがNHEJを開始する引き金であること以外未だはっきりとしてない。

対合

DNA二重鎖切断によって生じたDNA末端にKuが結合し、DNA-PKcsがKu80のC末端にある12残基からなるペプチドを通してDNA末端に招集され、DNA、Ku、DNA-PKcsで構成されるDNA-PK複合体(DNA-PK)を形成する[7][8]。DNA-PK同士が相互作用することでDNA末端が対合され、また対合したDNA-PKは自己リン酸化することでDNA末端を次のステップである末端処理と末端結合のためにアクセス可能とする[9]。なおDNA-PK以外にもXRCC4とXLFの複合体で構成されるタンパク質フィラメントも対合に関係しているとも報告されている[10]。さらにXRCC4とXLFのパラログであるPAXXがKuと相互作用することで、NHEJタンパク質をDNA損傷部分に安定化させ、NHEJを促進することが知られている[3][11][12]

末端処理

DNA末端の構造は破損の状況によって異なり、場合によっては対合された二つのDNA末端がLigIVによって直接結合不可能なため、ヌクレアーゼやポリメラーゼなどによって処理される。ArtemisヌクレアーゼはDNA-PKcsと複合体を形成し、C末端のリン酸化を通して活性化され、ヘアピンDNAをオープンする機能を持つ[13]。またエンドヌクレアーゼ活性を持つことも知られている[1]。相補的DNAが欠損している部分は、pol μもしくはpol λによって修復される。これらのポリメラーゼはBRCTドメインを持ち、Kuおよび(または)LigIV/XRCC4と相互作用することによってDNA末端に招集される[14]。またearly lymphoid cellに置いては、同じポリメラーゼXファミリーに属するTdTもBRCTドメインを通してKuとLigIV/XRCC4複合体と相互作用し、V(D)J組換えの末端処理ステップにおいて機能する[15]。他にもKu自身リアーゼとして機能し[16]、PNKP、Aprataxin、APLFもFHAドメインを通してCK2によってリン酸化されたXRCC4と相互作用しDNA末端の処理を行う[1]

末端結合

DNA末端の結合はLigIV、XRCC4、XLFで構成されるリガーゼ複合体によって行われる。これらの複合体はそれぞれのタンパク質がDNA-PKと相互作用することでDNA末端に招集される。LigIV単体でDNAリガーゼとして機能するが、XRCC4無しではタンパク質レベルで不安定であり、in vivoにおいて常にLigIV/XRCC4複合体として存在していると考えられている[17]。またXLFはミスマッチDNAのライゲーション[18]やLigIVの再アデニル化の活性化[19][20]などの補佐的な役割持つことが知られている。

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NHEJタンパク質遺伝子の異常による遺伝病

これまでにDNA-PKcs[21]、LigIV[22]、Artemis[23]、XLF[24]、XRCC4[25][26]の遺伝子異常によって引き起こされる難病が知られている。

LIG4症候群

LIG4遺伝子の変異により機能が低下したLigIVが翻訳されることによって引き起こされる難病。特徴として小頭症、放射線感受性、発育遅延、血球減少、免疫不全などが見られる[23]。患者によっては重症複合型免疫不全(SCID)[27][28][29]白血病[30][31]悪性リンパ腫[32]も発症する。LIG4症候群の患者に共通して見られる症状は免疫不全というより、極端な成長阻害であることが知られている[33]

引用文献

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