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魔女の家の夢

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魔女の家の夢』(まじょのいえのゆめ、: The Dreams in the Witch House)は、アメリカの作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトのホラー小説で、クトゥルフ神話の一つ。

概要 "魔女の家の夢", 著者 ...

1932年の1月から2月末にかけて執筆され、『ウィアード・テイルズ』の1933年7月号に発表された[1]

ナイアーラトテップが「暗黒の男」の化身体(サバトの悪魔のこと)で登場する[2]。クトゥルフ神話内においては「妖術師物語」の1つである[3][4]オーガスト・ダーレスヘンリー・カットナーも類似の妖術師物語を執筆している。

あらすじ

要約
視点
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ブラウン・ジェンキン
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暗黒の男ことナイアーラトテップ
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未知の小像
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アザトース

ミスカトニック大学数学民俗学を専攻しているウォルター・ギルマンは、呪われているという噂があるマサチューセッツ州アーカムにある「魔女の家」と噂される屋根裏部屋を借りる。その家はかつて、セイラム魔女裁判魔女の告発を受け、セイラム の牢獄から忽然と姿を消したキザイア・メイスンの隠れ家だった。

ある日、彼は板で打ち付けられた開口部の痕跡を見つけるが、家主の許可を得ることはできなかった。2月に入ると、部屋の中にある奇妙な角度の影響によって、ウォルターは熱にうなされるようになり、勉強にも支障が出ていた。中間試験が近づく中、幻聴も現れるようになったことに加え、壁の向こうから鼠が立てる物音にも悩まされるようになった。さらに、彼の夢には謎めいた領域や、キザイアの使い魔ブラウン・ジェンキンが現れるようになり、彼は自分の勉強の内容が影響したのではないかと感じていた。とはいえ、彼は学期末テストで一部の科目を落としていたため、医者にかかろうとは思っていなかった。

3月になると、現実で出会ったことのある老婆と似た人物が夢の中にも現れるようになり、やがて彼は老婆と使い魔が自分を高位の存在に引き合わせようとしていたと考えるようになる。

4月になってもウォルターの熱は引かず、夢遊病の症状がでたことを認めざるを得なくなる。また、ウォルターがキザイアやブラウン・ジェンキンの話ばかりするので、彼のいる下宿の1階に住む織機修理人ジョー・マズレヴィッチは、聖スタニスラウス教会のイヴァニツキ神父から貰った銀の十字架をウォルターにあげた。さらにジョーはヴァルプルギスの夜のあたりに開かれるサバトが近いということで、夜な夜な祈りの声をあげるようになり、ウォルターの神経にさわっていた。

その後、ウォルターは医師の診察を受けるが、体温がそこまで高くなかったことを知らされるも、神経科の専門医に診てもらうよう助言を受ける。この時点で彼は既知の宇宙と四次元の境目に近づけるかもしれないと考えていた一方、悪夢はどんどんひどくなっていた。夢の中で、老婆から「『暗黒の男』に会い、アザトースの玉座へ行って、己の血で『アザトースの書』に署名し、新たな秘密の名を得よ」と言われていた。

愛国者の日、彼はミスカトニック河にある無人島にあの老女がいるのに気づく。その夜、彼は外に出たところ、海蛇座とアルゴ座の間の空間に引き寄せられる感覚を味わう。そのころ、ウォルターの部屋が紫色に輝く。アーカムの住民たちはこの光がキザイアのものだということを知っており、大家のドンブロフスキや下宿人たちは彼女がウォルターに憑りつこうとしていると考え、戻ってきたウォルターの元へジョーが警告しに行った。

その後、ウォルターは謎めいた巨大都市にかかった橋の欄干についた小さな像をもぎ取ってしまう。夢だと思っていたが、後日自宅にそれがあるのを見て慄然とし、それを持ったままドンブロフスキの部屋へと向かう。ドンブロフスキは快く迎えてくれたものの、その場に居合わせた彼の妻も含め、なんだかよくわからない様子だった。ウォルターは自分の夢遊病が悪化して窃盗を働居居ているのかと不安になり、明日は神経の専門医に診てもらい、注意深く調査しようと決心した。

まず、彼はドンブロフスキから拝借した小麦粉を廊下にまいた後、くだんの像をテーブルの上に置き、自分は横になった。夢の中で、彼はキザイアによってベッドから出される。さらにテーブルの奥には黒い男が姿を現す。男はテーブルの上に巨大な本を広げ、キザイアはウォルターの右手に羽ペンを押し込む。さらに、使い魔がウォルターの左手を噛む。目を覚ました後、左手首には出血や傷があったものの、小麦粉はそのままだった。

ウォルターはエルウッドに相談し、くだんの像を教授陣に見せて相談した。また、ドンブロフスキも殺鼠剤を撒くなど協力してくれた。とはいえ、くだんの像の正体はわからずじまいだった。ある日、彼は昼食をとっていたところ子どもの誘拐事件の記事を目にする。さらに彼は通行人の会話から、自分が黒い男と老婆とともに暗い路地に入る様子を見られたことを知る。

4月30日、ウォルターとエルウッドは講義を休んだ。その夜、ウォルターは夢の中でキザイアと使い魔に襲われるが、ジョーから貰った十字架でキザイアを撃退する。その後、ウォルターとエルウッドはこのの下宿を引き払うことを考えた。

深夜、ウォルターが何者かに襲われる。エルウッドは毛布の中を確かめる勇気はなかったものの、ドンブロフスキや下宿人たちが駆け付ける。そして、彼らの前で巨大なネズミのような生き物が毛布から逃げ出す。ドンブロフスキの妻が呼んだ開業医マルコフスキが到着し、毛布を取り除いてウォルターの死を確認する。

この事件はウォルターの周囲の者たちに衝撃を与え、ドンブロフスキは他の下宿人たちとともに別の場所へと引っ越した。その後、この家から悪臭が漂うようになり、人が住めるような場所ではなくなってしまった。

1931年3月、嵐によりこの家が崩落する。その年の12月、撤去作業が進められる中で、幼児や老婆、さらには何かにかじられた鼠の骨などがみつかった。黒魔術の本に加え、破損した怪物の像も見つかる。怪物像はウォルターが大学博物館に寄贈したものと似ていたが、異なる点もあった。

そして奇妙な生き物の骨を見つけた作業員たちは恐怖におののくものの、もう二度と怖い目に遭わないという想いから、聖スタニスラウス教会で感謝のろうそくを上げた。

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登場人物

  • ウォルター・ギルマン - 主人公。
  • キザイア・メイスン - 魔女。
  • ブラウン・ジェンキン - キザイアの使い魔。
  • ナイアーラトテップ
  • フランク・エルウッド - ウォルターの同居人。
  • アパム教授 - 数学者。
  • ジョー・マズレヴィッチ - ウォルターのいる下宿の1階に住む織機修理人で、迷信深い性格をしている。
  • ドンブロフスキ - ウォルターの下宿の大家。

日本語訳

作品背景

S・T・ヨシの『H・P・ラヴクラフト大事典英語版』によると、本作はナサニエル・ホーソーンの未完の小説『セプティミウス・フェルトン』から強く影響を受けているとされている[5]:107

また、『ラヴクラフト全集5』の翻訳者である大瀧啓裕によると、本作の舞台となる屋敷は、セイレム魔女裁判にかかわった判事ジョナサン・コーウィン英語版の屋敷がモデルとされており、実際ラヴクラフト自身も妻ソーニャとともに1923年に来訪している[1]。一方、ラヴクラフト自身はナタリー・H・ウーリイとの手紙(1933年12月4日付)の中で、些か散漫であるという理由から本作を気に入っておらず、発表する気もなかったが、オーガスト・ダーレスの尽力により『ウィアード・テイルズ』への掲載に至り、400ドルの原稿料が支払われた[2]

受容

『ラヴクラフト全集5』の翻訳者である大瀧啓裕は、ホーソーンやコットン・マザーといった人物を言及することで、虚構を事実で裏付けするラヴクラフトの手法が興味深いとした一方、魔女が十字架にひるむ描写についてはラヴクラフト作品にしては陳腐だと指摘している[2]

映像化

本作は映像化や翻案が何度かなされている。

脚注

外部リンク

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