2020年代の批判的人種理論をめぐる論争

2020年以降、保守派やその他の集団などにより、アメリカ合衆国の学校で批判的人種理論（CRT）が教えられていると主張して批判する活動が行われている。2020年のアーマウド・アーベリー（英語版）とジョージ・フロイドの殺害事件、ブリオナ・テイラー（英語版）の殺害事件に対する抗議活動の後、学区は「人種、経済、障害、その他の要因に起因する格差」に対処するための追加のカリキュラムを導入し、多様性・公平性・包括性（DEI）に関する役職を設けるようになった^[1]。こうした措置は、保守派、特に共和党の保守派から批判を受けた。ジョージ・メイソン大学の政治科学者のジェニファー・ビクターは、これを人種の平等と公平性の進展に対するバックラッシュのサイクルのー部であると説明している^[2]。

2022年7月時点のアメリカ合衆国における人種に関する教育を制限する州法

  教室または州の機関における人種に関する教育を制限している州

  教室または州の機関における人種に関する教育を制限する法案や政策を検討している州

  この種の州法が提出されたが、成立に失敗した州

  このトピックに関する法律が提案されていない州

アラマンス・バーリントン学区（英語版）の教育委員会のミーティングで批判的人種理論に反対する抗議者、2021年。

批判的人種理論を露骨に批判する人物には、ドナルド・トランプアメリカ合衆国大統領、保守系活動家のクリストファー・ルフォ（英語版）、さまざまな共和党関係者、FOXニュースや右派系トークラジオ番組の保守系コメンテーターなどがいる^[3]。この論争から生まれた運動もあり、特に「No Left Turn in Education」運動は、批判的人種理論に関して学校の委員会を標的とする最大のグループの1つとして説明されている。公立学校では批判的人種理論が教えられているという主張への対応として、数十の州で人種、アメリカ史、政治、ジェンダーに関して学校が教えることができる内容を制限する法案が提出されてきている^[4]。

背景

批判的人種理論（CRT）とは、アメリカ合衆国における人種・社会に関する法制度について再検討し、人種的正義に対するアメリカで従来のリベラルな人種問題へのアプローチを批判する、民権学者や活動家による学際的かつ社会的な運動である。保守派系活動家による活動とカリキュラムの検閲^{[注釈 1]}によって、アメリカ合衆国の多くの州でCRTの教育を禁じる法律の導入を招いた^[5]。

アメリカ合衆国

2020年アメリカ合衆国大統領選挙の前後において、CRTへの反対は、ドナルド・トランプ大統領やFOXニュースの保守的なコメンテーター、右派のトークラジオ番組によって選挙の重要なテーマとして取り上げられた^[6]。2020年9月、FOXニュースのインタビューにおいて、保守派活動家クリストファー・ルフォ（英語版）はCRTを強く非難した^[7]。FOXニュースの番組に出演した後、ルフォはトランプに会議への出席を求められた^[8]。トランプはその後、2020年9月17日の演説でCRTを公に非難し、「愛国的教育」を促進するために1776委員会（英語版）の設立を発表した^[8]。トランプはまた、アメリカ合衆国連邦政府の各機関に対して、「白人特権」や「CRT」に言及するプログラムへの資金提供を中止するよう指示する大統領令を出した。これらの大統領令は「（CRTなどは）社会の分断をうみ、非アメリカ的なプロパガンダであり、人種差別的である」との理由に基づいていた^[9][10]。CRTを公に批判している人物には、トランプ、ルフォ、そして共和党幹部などが含まれている^[11][誰?]。『ワシントン・ポスト』紙によると、CRTはアメリカ合衆国の文化戦争における「火種」となり、保守派議員や活動家によって「制度的な人種差別のほぼすべての調査に対する総称的な言葉」として使われている^[12]。

参考サイト

関連項目

• 反偏見カリキュラム（英語版）
• アメリカ合衆国の人種に関する司法の側面（英語版）
• アメリカ合衆国における人種差別